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【エッセイ】 赤紫色の宝石ジュース

夏といえば何を思い浮かべるだろう。

一般的なものでいえば、海や花火。
食べ物だと、スイカやアイスでしょうか。

もっとも、僕にとって夏とは紫蘇の季節。

素麺に添えればご馳走に。
醤油につけておけば立派なおかずにもなる。

そして、何といっても紫蘇ジュースである。
僕の実家では、常にと言っていいほど毎年夏になると冷蔵庫に手作り紫蘇ジュースが冷えている。

実家は福岡の田舎。
庭や近所で採った紫蘇でジュースを作る。

母が作った物もあれば、祖母が作った物もある。
元々は曾祖母が作り始めたのだと思う。
とにかくあの赤紫色の飲み物が、僕の夏にはずっと身近にあった。

18になり実家を出てからというもの、ここ数年夏からあの赤紫の色はスっとなくなっていた。

いやむしろ今振り返ると、小さい頃から特にそれを楽しみにしていた記憶はない。
特別になったのはココ最近の事だ。


今年の初夏、祖父が亡くなった。
実家は自営でその関係もあり、少し慌ただしくなっていた。

僕はその時期あまり予定がなかったので、それから1ヶ月ほどは定期的に実家に帰るようにした。

特に何の手伝いも出来ないが、祖母の話し相手や家事を手伝ったりした。

社会人になってからというもの、なかなか実家に帰れていなかった僕に

「帰っておいで。ゆっくりしていって。」

祖父がそう言ってくれているように思えた。

1ヶ月で計7日くらいは実家に居ただろうか。

実家に帰ると当たり前のように童心に戻る。
小腹が空くと食べ物探索へ棚に向かい、喉が渇くと冷蔵の扉をこじ開ける。

実家の冷蔵庫は不思議なくらいに沢山の物が詰まっている。
納豆、ヨーグルト、ハム、チーズ…

ふと目を右に向けると、あの夏が帰ってきた。

ただの水やお茶では物足りないからと、何となく飲んでいた紫蘇ジュース。
今ではその赤紫色が宝石のように輝いて見える。

飲むとその美味しさと懐かしさに感動した。
これが「おふくろの味」か。

僕にはおふくろの味というものが今までピンと来なかった。
これは母以外の手料理をほとんど食べたことがない、というのもあると思う。

とにかくその時はじめて「おふくろの味」というものを実感できた瞬間だった。


実家のドタバタも少し落ち着き始め、僕自身も暇があまりなくなったため、今は月に1,2日ほどの帰省になっている。

都会の夏はとても暑い。
人も多くて心が休まらない。

しかし、今年の夏はひと味違う。
うちの冷蔵庫にもあの赤紫色の宝石が眠っているのだ。


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