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挑戦しないリスク

最近、SNSやお店で、お客様から人生の先輩として(なんて、おこがましいのですが…!)ご相談をいただくことが増えました。

「新しい仕事に挑戦したいけど、今の安定を失うのが怖くて…」
「ずっと夢だったことがあるけれど、失敗したらって思うと一歩が踏み出せないんです」

そんな言葉をお聞きするたびに、私は決まって、大阪の小さなアパートにいた20代の頃の自分を思い出します。

当時、私は大阪の繁盛しているパン屋さんで働かせてもらっていました。
ありがたいことに、仕事は充実していて、お給料も安定していました。
気の合う仲間もいて、このままここでパンを焼き続けるんだろうな…なんて、ぼんやりと思っていました。

でも、心の奥の方で、小さな私がささやくんです。

「このままで、本当にいいの?」
「東京には、どんなパンがあるんだろう。もっと違う世界を見てみたいんじゃない?」

その声は日増しに大きくなって、気づけば私は、東京のパン屋さんの求人情報を探していました。
でも、いざ「上京」という二文字が現実味を帯びてくると、途端に足がすくんでしまうんです。

家族や友人からは、「なんでわざわざ苦労しにいくの?」「東京はそんなに甘くないよ」と心配されました。
その一つひとつの言葉が、私の不安を的確に突いてきます。
「もし、東京でうまくいかなかったら?」「高い家賃も払えなくなって、惨めな思いで大阪に帰ることになったら?」
考えれば考えるほど、「やらない」方がどれだけ安全で、賢い選択だろうかと感じてしまうのでした。

リスクを考えることは、もちろん大切です。
でも、あの時の私は「挑戦するリスク」ばかりに目を向けて、「挑戦しないリスク」には気づいていなかったのです。

挑戦しないこと。それは、現状維持ではありません。
自分の可能性に蓋をして、見たことのない景色、出会うはずだった人々、そして新しい自分に出会うチャンスそのものを、失ってしまうこと。
挑戦しなかった後悔は、きっと時間が経つほど、じわじわと心を蝕んでいくのだろうな、と。

「失敗したって、命まで取られるわけじゃない。ボロボロになったら、また大阪に帰ってきて、イチからやり直せばいいじゃない!」

最後は、そうやって自分を奮い立たせました。半ば意地でしたね(笑)。

あの日、あの時、もし私が「やらない」という選択をしていたら。
もちろん、それなりに幸せな人生はあったかもしれません。
でも、東京で出会ったシェフの味も、厳しいけれど温かかったあの店の技術も、かけがえのないたくさんの出会いも…。
そして何より、「ひとぱん工房」でお客様の「美味しい!」という笑顔に直接出会えるこの喜びも、絶対に手にすることはできませんでした。

だから、もし今、あなたが新しい扉の前で立ち尽くしているのなら、少しだけ考えてみてほしいんです。
その扉を開けずに「挑戦しない」ことで、自分は一体何を失うことになるんだろう?って。

挑戦しなかった後悔より、挑戦して得られる経験の方が、きっとあなたの人生を何倍も豊かにしてくれる。
パン生地が発酵して大きく、味わい深く膨らんでいくように、人の可能性も、一歩踏み出す勇気で無限に広がっていくんだと、私は信じています。

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