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一人で会社をつくって、丸10年。大成功なんて、してません。

それでも、この働き方はけっこう気に入っています。
今月から、会社は11期目に入りました。 社員はいません。設立したときから、ずっと一人です。
「会社を10年やっている」というと、何か大きな成功をしたとか、ものすごい苦労を乗り越えたとか、そういう話を期待されるのかもしれません。
残念ながら、そういう話はあまりありません。
会社をものすごく大きくしたわけでもないし、億万長者になったわけでもない。 かといって、明日会社が潰れるというような壮絶な経験をしたわけでもない。
ただ、一人で会社をつくって、仕事をして、気づけば丸10年が経っていました。
せっかくなので、そんな「普通の一人社長」の話を、少し書いてみようと思います。
38歳、5社目を3カ月で辞めた
独立した理由からして、あまり格好いいものではありません。
38歳のとき、5社目の会社を、試用期間の3カ月が終わるタイミングで辞めました。
そこに至るまでの転職活動も、正直かなり疲れていました。
そして辞めた瞬間、頭に浮かんだのは、
「また会社探すの、もう嫌だなぁ」
でした。
そこから、
「じゃあ独立するかぁ」
くらいの感じです。
起業したいという強い夢が昔からあったわけでも、社会を変えたいというビジョンがあったわけでもありません。
なんとなく、成り行きでした。
仕事のあては、ゼロでした
これも今考えるとなかなかですが、会社をつくった時点で、仕事のあては特にありませんでした。
ただ、転職するときはいつも先に会社を辞めて、数カ月就職活動をしながらフリーランスで仕事をする、ということを何度か経験していました。
それでもあまり収入に困らなかったので、
「まあ、何とかなるんじゃない?」
くらいには、思っていたんだと思います。根拠は特にありません。多少の貯金があっただけです。
フリーランスではなく法人にしたのは、それまで仕事をしてきた環境も関係しています。
同じ業界で10年以上働いて、管理職も経験させてもらい、それなりの企業や案件にも関わらせてもらいました。
独立しても、できればそういう仕事を続けたかった。
そう考えると、個人より法人格があった方が、ちゃんとした仕事を受けやすいだろう。
理由としては、そのくらいです。
最初の仕事は、会社をつくって3カ月後。たしか5万円くらい
会社をつくってからは、少ないながらも業界の知り合いがいたので、まずはそういう人たちのところを回りました。
最初の仕事が入ったのは、登記してから3カ月くらい経ってから。 たしか、5万円くらいの仕事だったと思います。
そこから急に仕事が増えたわけでもありません。 最初の1年は、たしか売上1,000万円にも届かなかったと思います。
仕事を取りたくて、営業方法をネットで調べたり、いろいろ考えたりもしました。
ただ、僕がやっているイベント制作という仕事は、知らない会社に電話して、
「イベントやりませんか?」
で簡単に受注できるような仕事でもありません。
営業はしたい。でも、電話をかけたり飛び込みをしたりして、すぐ仕事につながるような業界でもありません。
できることを考えながら、結構、暇にしていました。
それでも不思議と、
「もう一度就職しよう」
とは思いませんでした。
2年目、ようやく会社員くらいの生活に戻った
2年目になると、1年目に知り合った会社がお客さんになってくれたり、昔からの知り合いとの縁から仕事をいただいたりするようになりました。
それでも売上は、たしか2,000万円には届いていません。 ものすごく忙しかったわけでもありません。
ただ、自分の収入は、会社員時代くらいまで戻りました。
ここでようやく、生活としては安定したのだと思います。
そこから少しずつ年月を重ねて、気づけば丸10年。今も、会社はあります。
10年間、一人でやっています
会社をつくったときから、
「絶対に社員は雇わない」
と決めていたわけではありません。 そのうち社員を雇うのかな、くらいには考えていました。
今でも、会社を大きくしたくないわけではありません。 むしろここ数年は、どうであれ会社は大きくする方向でいた方がいいな、と思っています。
最近も、
「どう営業するか」 「どうやって新しいお客さんを増やすか」
を一人で考えて、足掻いています。
なので「小さな会社で自由に生きるのが僕の哲学です」みたいな、格好いい話でもありません。
結果として、今のところ一人です。
ただ、この働き方はかなり気に入っています
一人社長になって、一番大きかったのは時間だと思います。
平日に用事を入れてもいい。 仕事がなければ、昼まで寝ていてもいい。 平日に遊びに行ってもいい。
休むために、誰かの許可を取る必要もありません。
もちろん、忙しいときはあります。 イベントの仕事なので、土日も関係なく働くこともあります。
ただ、何カ月もずっと忙しいということは、ほとんどありません。
昔、なんとなく自分の労働時間を計算したことがあります。 週5日勤務に均して考えたら、たぶん1日平均2時間も働いていなかったと思います。
これは「2時間働けば稼げます」という話ではありません。 暇だった時期も含めての話ですし、忙しい日は当然もっと働きます。
でも10年間を振り返ると、会社員だった頃とは明らかに違う時間の使い方をしてきました。
僕がこの働き方を続けている、大きな理由の一つだと思います。
もちろん、一人だから面倒なこともある
会社員時代を振り返ると、営業担当がいてくれたのは楽でした。
自分が制作の仕事をしていても、営業さんが仕事を持ってきてくれる。 保険や年金などの手続きも、会社がやってくれる。
独立すると、それまで誰かがやってくれていたことが、急に全部自分の身近な問題になります。
特に税金は、ものすごく身近になりました。
良い悪いではなく、自分で会社をやると「税金ってこういうものなんだ」と考える機会が、圧倒的に増えます。
それから、一人しかいない会社なので、自分が身体を壊したときは少し心配です。
僕が動けなくなったら、お客さんから見ても、仕事を頼みにくい会社になってしまいます。
これは一人でやっている限り、ずっとあるリスクだと思います。
なぜ10年続いたのか
これは、自分でも考えてみました。
まず大きいのは、一人だったことだと思います。
社員がいないので、売上がそれほど大きくなくても会社を維持できます。 在庫を抱える仕事でもありません。 大きな設備投資も、ほとんど必要ありません。
極端に言えば、パソコンがあれば仕事ができます。
だから、仕事が少ない時期があっても、何とか続けることができました。
そしてもう一つ。
結局、いろいろな人に助けてもらったからだと思います。
独立する前に一緒に仕事をしていた人。 独立してから知り合った人。 仕事を頼んでくれた人。 紹介してくれた人。
それまで真面目に働けていたのかどうか、自分ではよく分かりません。
でも、もしかすると会社員時代に普通にちゃんと仕事をしてきたことが、後になって少し返ってきたのかもしれません。
もう一度38歳に戻っても、たぶん会社をつくる
もし、38歳で5社目を辞めた直後の自分に戻れるとしたら。
この10年間を全部知ったうえでも、たぶんもう一度、会社をつくると思います。
大変なこともあります。 思い通りになっていないことも、たくさんあります。
それでも、特に後悔はありません。 会社員ではできなかった経験も、いろいろ楽しめています。
ただ、誰にでも独立をおすすめするかと言われると、それは分かりません。
僕ならまず、
「独立したら一緒に仕事をしてくれそう?」
と、知り合いに聞いてみると思います。
その答えを聞いたうえで、それでもやってみたいと思えて、会社が潰れる可能性も受け入れられるなら、
「じゃあ、やってみてもいいんじゃない」
と言うと思います。
自分が仕事のできない人間だとは思っていません。
でも、営業も経理も経営も、何でもできるわけではありません。
だから10年続いたのは、自分の実力だけではないと思っています。やっぱり運もありました。
良い人に出会うかもしれない。 仕事を紹介してもらえるかもしれない。 逆に、全然うまくいかないかもしれない。
その「自分ではどうにもならない部分」があることを受け入れられるかは、意外と大事なのかもしれません。
……と言いつつ、38歳の僕自身は、そんなに覚悟して始めた記憶もないんですけどね。
「もう会社探すの嫌だなぁ。じゃあ独立するかぁ」
だったので。
最後に、38歳の自分に一つだけ言うなら。
特別なスキルを身につけろ、ではありません。 もちろん、できることは多いに越したことはない。
でも10年やってみて、それ以上に言いたいのは、
謙虚で、そして社交的に振る舞いなさい。
たぶん、それくらいです。


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