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【長野】戸倉上山田温泉「荻原館」_歓楽街の中心地に佇む老舗の温泉旅館


上山田温泉 ほろよい銀座

 明治中期から開発され、信州の不夜城と称されるほどの歓楽街を形成した「戸倉上山田温泉」は、長野の温泉地の1ヶ所だ。元々は戸倉村と上山田村にある2つの温泉地だったが、市町村合併に伴って戸倉上山田温泉と呼ばれるようになった。千曲川の畔に形成された温泉街にはスナックやラブホテルの看板が並んでおり、長閑な山間部に異様な空間を作り出している。

上山田温泉 新世界通り

 スナック街は昭和に栄えた歓楽型温泉地の象徴だが、昨今は景観の問題や建物の老朽化を理由に解体される傾向がある。この規模のスナック街が残る温泉地は、全国的にも珍しいと言えるだろう。また2025年に撤去されたが、かつては駅前に年季を感じる渋めの歓迎アーチがあった。令和になった今、衰退温泉地が残すレトロな世界観は徐々に失われつつあるらしい。

撤去された歓迎アーチ看板(2023年中頃撮影)
夜のスナック街

 入込み客数の低迷や、施設の老朽化、娼婦の売春など課題の多い街だが、近年は昭和レトロを全面に出したPRを行っている。スナックの体験ツアー、ネオンをモチーフとしたイベント列車の運行など、取り組みはユニークだ。多くの温泉地が景観を整備する中でも現状を生かし、歓楽型温泉地の復活のモデルケースになることを個人的には期待している。


「荻原館」について

外観

 「荻原館」は、温泉街の北に位置する客室数19の中規模旅館である。創業は明治36年で、上山田村の温泉の開湯と同年だ。紛れもない老舗だが、建物は改築されており新しい。周囲に飲食店も多くコンビニもあり、立地は良いと言えるだろう。

フロント
ロビー
客室階 廊下

 館内は2025年にリニューアルされたため、特にフロント周辺は真新しいと言っても良いほど綺麗だ。お洒落で清潔感もある。

大正時代の荻原館

 ロビーの一画には街の昔の写真や資料が展示されている。こうした資料を見ることができるのは、老舗の施設ならではである。

客室 前室

 前室があり、右の扉は客室入口、左に洗面台とトイレの扉が写っている。バスは付いていない。

客室 居室

 居室はシンプルで綺麗な和風だ。建物が南を向いているため、晴れの日に障子を明けると眩しいが、温泉街を望むことができる。

お茶請け・お茶

 お茶請けはシャインマスカットシフォンケーキだ。お茶は緑茶で、客室を案内するスタッフの方に淹れていただける。お持て成しを感じる。


「荻原館」の温泉

 この宿には1階に広い大浴場、5階に洗い場のない露天風呂がある。今回は露天風呂のみ取り上げる。浴室は「荒砥」(男湯)と「千曲」(女湯)の2つだ。

荒砥 入口
荒砥 脱衣所

 脱衣所はかなりこぢんまりとしている。籠は6個用意されているが、6人で使うとかなり窮屈だろう。

荒砥 露天風呂

 目隠しはあるが眺望は良く街を一望できる。使用源泉は上山田温泉(株)が供給する共同源泉「混合(26号/27号/30号/32号/35号/40号/41号/43号/46号)」、泉質は「アルカリ性単純硫黄泉」、主成分は食塩で明確な硫黄の臭気がある。戸倉上山田温泉には多くの共同源泉や自家源泉があり、それぞれ色や濁りが異なるが、食塩泉系の硫黄泉である点は多くの源泉に共通する。

千曲 入口
千曲 脱衣所

 この宿では平日の月-木曜に限り、事前予約をすることで本来は女湯として利用される千曲を貸切できる。時間は18-20時の間の30分間のみ。脱衣所の籠の数は荒砥と同じだが、スペースは荒砥の3倍くらい広い。

千曲 露天風呂

 荒砥より目隠しが高いため眺望は微妙だが、開放感のある空間ではある。面白いことに、大浴場、荒砥、千曲は同じ源泉を使うにも関わらず、千曲のお湯は白濁している。硫黄泉は繊細で色や濁りが変わりやすのだ。


「荻原館」の食事

〜夕食〜

 食事の用意が済むと客室に電話をいただける。食事処は1階の半個室で、昨今の少人数の旅行需要に応えるべくリニューアル時に設けられたそうだ。どのブースで食事を取るかは、チェックイン時に伝えられる。

食事会場 入口
食事会場 廊下
食事会場 半個室

 木を基調とした明るい空間になっている。リニューアルから時間も経っていないため、清潔感がありとても雰囲気が良い。

先付け

 料理としては、野沢菜の春巻、自家製味噌、海老煎餅、河豚の酒粕焼き、鴨のロースト・青杏・クリームチーズの味噌漬けの串、杏のコンポートだ。どれも味付けがしっかり目である。ちなみに杏は戸倉上山田温泉が位置する千曲市の名産品だ。

ステーキ肉
(本来の冬季の料理は塩麹鍋だが、個人的な好みで陶板焼きにしてもらった)

 ステーキ肉には和牛が用意される。セルフで焼いて食べる。付け合わせは葱、エリンギ、ブロッコリー、紫じゃがいも、薬味は山葵と檸檬、味付けはおろしソースだ。

ステーキ(陶板焼き)

 肉に火を入れる。サシが多いので、脂が苦手な人には向かない。

ご飯・味噌汁・漬物

 お酒を頼まない場合、早い段階でご飯・味噌汁・漬物を用意いただける。

お造り

 お造りの内容は本鮪・たらば蟹・信州サーモンだ。信州サーモンは長野の様々な宿のお造りで活躍している。上品な味わいが魅力だ。

鯉の旨煮

 長野の名物でもある鯉の旨煮は、骨が少し気になるが臭みはなくあっさりしている。

山麓牛のソテー・フォアグラの信州味噌焼き

 メインは山麓牛のソテーとフォアグラの信州味噌焼き、トリュフスライスと雲丹ソースでいただく。添え物として葱と里芋もソテーされている。この料理は今までの中で、最も高級感を出している一品だ。器も洒落ている。

味噌プリン・お茶

 デザートは信州味噌で味付けしたプリンで、上に胡桃・林檎の洋酒漬けが載せられている。味噌感はあまり強くないが、香りが芳醇で美味しい。熱いお茶も嬉しい。

〜朝食〜

朝食

 朝食も夕食と同じ会場となる。朝食は最初に全て用意されるスタイルで、追加で提供される料理はない。良い意味でボリュームが控えめなので、朝のフードファイトにはならない。

小鉢など

 内容は切干大根、南瓜のそぼろ煮、味噌なめ茸、虹鱒の干物、厚焼き卵。どれも優しい味付けで美味しい。

二穀ご飯

 ご飯にはもち麦と、栄養価が高いことで知られている信州産のソルガムが入っている。

蕎麦すいとんと野菜の糀味噌仕立て

 鍋物は味噌汁風のもので、中に野菜、豚肉、蕎麦すいとんが入っている。塩味が控えめで飲みやすい印象だ。


まとめ

 サービスの全体的な上質さが魅力的な宿だ。客室でのお茶の用意や食事の開始の連絡など、昨今は省略されがちなお持て成しを感じることができる。凝った料理、屋上の露天風呂、女将さんの人柄など色々な要素が好印象だ。またリニューアルで半個室の食事処を設けるなど、街を牽引する老舗として先進的に取り組む姿勢も素敵である。気になる要素が見当たらない、選んで後悔しない温泉宿という印象の施設だ。
 1人客の予約枠もある程度確保されている。夕朝食付きは良い値段だが、食事・温泉・接客の質を考えれば妥当だと考える。温泉街の中にあるため、周辺観光はしやすいはずだ。戸倉上山田温泉は上田市と長野市の間に位置し観光拠点として優れるため、長野を訪れる際にはぜひ宿泊してほしい。
【メモ】
・宿泊時期:2026年初め頃
・宿泊費用:~¥20,000
・施設:旅館
・温泉:硫黄泉、掛け流し、露天風呂、貸切風呂
・食事:和食、会席料理


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