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【福島】湯野上温泉「湯宿 にしきや」_センス溢れる館内と料理が素敵な温泉民宿


湯野上温泉 旧新日光街道沿い

 明治中期の新日光街道開通に伴い宿場町として発展した「湯野上温泉」は、福島の温泉地だ。栃木との県境から流れる阿賀川沿いに、中規模な温泉街を形成している。街の観光要素は少ないが、「大内宿」や「塔のへつり」といった有名な観光地に近く南会津の周遊拠点として利用される印象だ。最寄り駅の会津鉄道「湯野上温泉駅」は、茅葺き屋根の駅舎が有名である。

大内宿
(2023年秋撮影)
塔のへつり
(2023年秋撮影)
会津鉄道湯野上温泉駅 駅舎

 湯野上温泉は湯量豊富だが大型施設は少なく、多くの宿が民宿だ。歴史が浅い沿岸の温泉地などでは漁家民宿の集積地帯が温泉街となる例があるが、歴史のある山間の温泉地に民宿が集積している例は少し珍しい。なおこれは周辺でも湯野上温泉だけで、隣接する会津若松市の芦ノ牧温泉や東山温泉は寧ろ大型施設が多い。この違いの要因は何なのか、気になるところだ。

湯野上温泉を流れる阿賀川

 南会津は東武鉄道の特急「リバティ」が東京と繋ぐ他、バスツアーも多く、観光需要があることは自明だ。特に湯野上温泉がある下郷町は観光に強く、近年の入込数の伸びも良い。一方で自治体の人口減少は激しく、高齢化率も50%を超えている。家族経営の宿が多い湯野上温泉も厳しい状況だろうが、周辺の観光地や自治体と連携し持続的な温泉地を目指してほしい。


「湯宿 にしきや」について

湯宿 にしきや 外観

 「湯宿 にしきや」は、温泉街の南に位置する客室数6の温泉民宿だ。創業は昭和50年、建物には明治の中頃に建てられた民家を転用している。飾り気のない施設も多い温泉街の中では洒落た部類である。

庭園の池
庭園の飛石

 敷地には小規模ながら日本庭園があり、滝がある池では鯉が泳いでいる。落ち葉もなく綺麗に管理されている。

館内
盆栽と階段箪笥
談話スペース

 館内はレトロながらモダンなインテリアや装飾品が置かれ、ハイセンスな空間になっている。掃除も行き届いており清潔で、山間の民宿にありがちな田舎の家感が全くない。

浴室・お手洗い周辺
2階客室への階段
客室

 客室はバス・トイレなしの6畳間だ。このポツンとした和室には民宿感があるが、造りや小物がレトロさを演出している。布団の上げ下げは、食事の際に行っていただける。

お茶請け・緑茶

 お茶はティーパックの煎茶、お茶請けは湯野上温泉で製造販売されているくるみようかんだ。甘さが控えめで食べやすい。


「湯宿 にしきや」の温泉

浴室の案内

 浴室は2つあり、札を掛けて貸切で利用する。「一の湯」は檜風呂の浴室、「二の湯」は岩風呂の浴室、使用源泉はどちらも同じだ。

一の湯 脱衣所

 今回は一の湯を紹介する。レトロな脱衣所は天井が低いがそこそこ広い。写真では見切れているが、左手に荷籠がある。 

カラン
アメニティ (Aēsop)

 カランは2つで、ボディケア・ヘアケア品は1セットしかない。余談だが、ケア用品が良い。誰が福島の山間の民宿でAēsopが出てくると思うだろう。

浴槽

 浴槽は6人くらい入れそうな檜風呂で、1人で使うには十分すぎる広さだ。浴室には芳しい檜の香が満ちている。湯野上温泉らしい熱めのお湯で、肌がぴりっとする。

湯口

 使用源泉は「中央貯湯槽(1,2,3,5,8号源泉混合泉)」、多くの宿で使われている集中管理源泉だ。湯野上温泉では他に「居平貯湯槽(1,2,3,5,8号源泉混合泉)」、「館本混合槽(1,2,3,5,6,7,8号源泉混合泉)」、自家源泉の「4号源泉」があるが、泉質はどれも「単純泉」で、無色透明で匂いも湯の花もない。主成分も芒硝と食塩と共通しており、お湯の特徴に違いはない。


「湯宿 にしきや」の食事

〜夕食〜

食事会場 テーブル

 食事会場は庭園を望める1階の広間だ。テーブルの間に仕切りはないが、距離は取られている。温かい料理以外は予めテーブルに置かれている。

旬の野菜のゼリー寄せ

 サラダはお洒落なゼリー寄せだ。この時はアスパラガスが旬とのことで、それに合うマヨネーズ系の柚子胡椒ドレッシングが添えられている。丁寧に飾り切りされたトマトは、南会津の名産品だ。

鰊の山椒漬け
(会津の郷土料理)
こづゆ
(会津の郷土料理)
いかにんじん
(福島の郷土料理)
会津産の蕎麦粉を使った蕎麦豆腐
只見町産の蕨のお浸し

 会津の郷土料理や地元食材を使った料理が並び、福島の味を堪能できる。どれも盛り付けが丁寧で、目でも楽しむことができる。

手塩皿(小鉢)

 ちなみに小鉢には、可愛い会津塗りの手塩皿が使われている。こういった伝統工芸品に触れられる点も魅力的だ。

馬刺し

 会津の名物である馬刺しも提供される。会津地方では甲信地方で見られる甘い醤油だれではなく、辛味噌を付けて食べる。半分は炙られており、肉の旨味を強く感じられる。

鮎の塩焼き

 鮎は大きく肉厚で食べ応えがある。皮の仄かな苦味がアクセントになり、薑と酢橘とともに美味しくいただける。

食事会場の炊飯設備

 食事会場では下郷町産のコシヒカリがリアルタイムで炊かれ、炊き立てで提供いただける。

青唐辛子味噌・下郷町産コシヒカリ
味噌汁

 流石福島、お米と味噌がとても美味しい。器もシンプルだが洒落ている。

福島牛の焼肉
福島牛の焼肉

 メインの料理は福島牛の焼肉だ。たれと塩・山葵でいただく。赤身なので油っぽくはないが柔らかく、上品な味わいだ。

しんごろう / つと豆腐の田楽
(それぞれ下郷町、常磐地域の郷土料理)

 最後の料理も福島の郷土料理だ。しんごろうは半殺しのうるち米に甘口のえごま味噌を付け焼いた料理なのだが、チョコレートを彷彿とさせるとても芳醇な香りがある。


〜朝食〜

食事会場 テーブル

 食事会場は夕食と同じで、温かい料理以外はテーブルに用意されている。

ご飯のお供・香の物

 納豆、オクラ、明太子、山芋、梅干し、内容は素朴だが盛り付けが綺麗で素敵だ。梅が甘めの味付けで食べやすい。

のり・温泉卵
焼き鮭

 温泉宿の朝食のスタンダードとも言える、温泉卵と焼き鮭も提供される。

蒸し野菜

 熱々の蒸し野菜は、胡麻だれとポン酢でいただく。野菜が新鮮なためか、自然な甘みを感じる。

炊き立てのコシヒカリ
ご飯
味噌汁

 ご飯は土鍋で炊かれた状態で提供され、炊き立てを味わうことができる。味噌汁の具は豆腐とわかめだ。

和紅茶

 食後のドリンクは、珈琲・緑茶・和紅茶から選択できる。和紅茶は渋みが少なく飲みやすい。


まとめ

 レトロでハイセンスな温泉民宿という印象だ。館内のインテリアや装飾は洗練されており、民宿の限られた空間ながら滞在を楽しめる。温泉はお湯が良いだけではなく、貸切、広い浴室、高級アメニティと贅沢な要素が多い。地元の食材をふんだんに使った料理は盛り付けも丁寧で、どれも美味しい。色々な福島の味を楽しめる点も魅力的だ。凡ゆる面でのクオリティが高く、万人にお勧めしたい温泉宿である。
 1日に3組程しか取らないため、予約が埋まるペースは速い。民宿としては少し値が張るかもしれないが、サービスの質を考えれば全く割高ではない。下郷町には見所が多く、栄えている会津若松市にも近いので会津を観光する際にぜひ宿泊してほしい。
【メモ】
・宿泊時期:2026年中頃
・宿泊費用:¥15,000~
・施設:民宿、庭園、レトロ
・温泉:単純泉、源泉掛け流し、貸切風呂、高級アメニティ
・食事:和食、郷土料理、地元食材


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