【長野】浅間温泉「栄の湯旅館」_昭和が香るレトロな館内が魅力の老舗温泉旅館

飛鳥時代に開湯し天武天皇も利用したと伝えられる「浅間温泉」は、長野の温泉地だ。松本城から近く、かつては初代の藩主が湯殿を構え城主や武士が利用する保養地として栄えたそうだ。現在は市街地に位置し、住宅街の中に飲食店や土産屋が点在する規模の大きな温泉街を形成している。昔ながらの共同浴場もあり、主に地元の方々に利用されている。

温泉街は傾斜地にあり細い道が多い。また大型施設が多いことも特徴だ。中央本線が通る松本は関東と東海の両方からアクセスに優れるため、昭和の団体旅行ブームに応えるべく、大型化した施設が多いのだろう。温泉街には飲食店や土産屋、カフェやクラフトショップなどもある。傾斜地がネックになるが、街を歩いても楽しめる温泉地である。

浅間温泉では2022年に、街の再生とサービスの高付加価値化を目的とする「(株)WAKUWAKU浅間温泉」が設立され、休業した旅館の再生や空き地活用が進められている。松本はインバウンド客も多いため、外国人フレンドリーな滞在形式の泊食分離にも注力しているそうだ。街に規模的に再生も簡単ではないだろうが、熱海のような良いモデルを目指し頑張ってほしい。
「栄の湯旅館」について

「栄の湯旅館」は、街の分湯場の目前に位置する客室数8の小規模旅館だ。創業は大正15年の老舗旅館である。小さな建物にも見えるが、奥行きがあり実際はそこそこの大きさがある。綺麗に改装された老舗旅館や大型ホテルが多い浅間温泉では異質な、地下階含め4階建ての木造建築である。



斜面に立っており入口は2階である。古さは否めないが、フロント周辺は改装はされており綺麗だ。館内には民芸品などの小物が並べられている他、随所に見られる数寄屋造りの意匠やタイル張りの壁がレトロである。

客室の扉を開けると細い全室があり、左手に居室がある。吊り下げ照明もなかなかレトロである。

写真の左奥が部屋の入り口だ。立派な造りの和室で、バストイレはないが新しい洗面台が備えられている。木造建築ゆえか、どうしても振動は響く。冬には炬燵が用意される。

卓上にお茶請けの小さなくるみゆべしと、茶葉の緑茶が用意されている。こたつで飲む熱い緑茶は冬に嬉しい。

入口からの廊下につながる形で、広縁もある。窓がかなり大きく日が入りやすいが、気温の影響を受けやすい。朝日と障子が織りなす空間は、とても心地が良い。1人で泊まるにしてはかなり広々とした客室なので、ゆっくり寛ぐことができるだろう。
「栄の湯旅館」の温泉

建物が斜面に建っている都合上か、浴場は階段を下りた地下1階にある。浴場は男女別のものと小さな貸し切り風呂が1つがある。

脱衣所にはそこそこのスペースが保たれている。

モザイクタイルやパネルタイルを使ったレトロなデザインで、可愛らしい空間になっている。カランは浴室の角に3つ、浴槽のサイズは3-4人向けだと思われる。また換気が弱いのか、やや湯気が籠っている。


(1-2人向けくらいの印象)
源泉名は「山田源泉、2号源泉、4号源泉、大下源泉、東北源泉の混合泉」、街の共同源泉だ。泉質は「アルカリ性単純泉」、大型施設が多い浅間温泉では珍しい源泉掛け流しで、分湯場が近いため鮮度も良い。お湯は無色透明かつ無味無臭、微量の茶色い湯の花が舞うが基本的に癖がない。また少し熱めのお湯である点も特徴だ。
「栄の湯旅館」の食事
〜夕食〜

1階の広間が食事会場として使用される。テーブル間はパーテーションで仕切られているため、人目を気にせずに食事ができる。スタッフに用がある際は、奥に見える電話から内線を掛けるという少し変わった形式である。

先付けに加えて、予め卓に用意されている料理が多い印象がある。少ないスタッフで提供をするための工夫だと考えられる。料理が少し冷めてしまうこともあるだろうが、従業員が都度料理を運ぶ形式に落ち着かなさを感じる人もいると思うので、これはこれで良いのかもしれない。食事の時間は先に決めるので、温かい状態で提供できるよう考えられてはいる。

信州サーモンの香草オイル漬け、鳥松風、鶏ごぼう信田煮など、お洒落な料理が多い印象だ。また柿の白和という料理に珍しさを感じる。

煮物は吸い物のようなさっさりとした味わいだ。とても具沢山で、贅沢な気分になる。

海老、鱧、木耳など具沢山で美味しい。宿の食事の蒸し物では茶碗蒸しや蒸し野菜が出るイメージが多いので、薯蕷蒸しは少し新鮮に感じる。

信州名物でもある馬刺しは、1切れが小さめだが肉厚で数も多い。薬味とすりおろしにんにく・生姜とともに醤油だれに浸けていただく。

山女魚は信州穂高産だそうだ。やや小ぶりだが、臭みがなく食べやすい。

こちらは後から提供される。海老や舞茸は種として王道だが、柿と林檎も天ぷらになっていた。先付けでも柿の白和えがあったりと、フルーツ王国の宿に滞在していることを感じる。

メインのすき焼きは、着火後に火が消えてから食べるように指示される。かなり火が入ってしまうのだが、下手に生で食べて何か起こると宿側も困るため、こういった運用なのだろう。ただそこは流石の信州牛、火が入っても柔らかく、一緒に煮た白菜や春菊などの具にも味が染みて美味しい。

デザートには2種類の小さなケーキが提供される。どちらも重くないため食べやすい。
〜朝食〜

朝食も夕食の時と同じく、1階にある広間が食事会場として使用される。

朝食は夕食と違い、すべての料理が卓に用意される形式だ。朝食の献立に長野の要素があまり見られず、ベーシックな旅館の朝食という印象である。どれも優しい味付けで食べやすく、量もそこまで多くないので、体に負担が掛からないだろう。


ご飯は御櫃に入った状態で提供され、好きな量を取って食べる。味噌汁がいろり鍋で用意される点が少し珍しい気がする。


デザートはフルーツとヨーグルトで、さっぱりと締まる。
まとめ
昭和レトロな建物が魅力の温泉旅館という印象だ。館内の随所に見られる数寄屋造り風の意匠やモザイクタイルが、滞在を楽しいものにしてくれる。障子で仕切られた広い和室の客室も、雰囲気があり魅力的だ。またレトロな浴室で入る温泉は熱めだが癖がなく入りやすい。お湯の鮮度も申し分ない。夕食に洒落た料理が多く長野名物も提供されるため、満足感があるだろう。
1人向けの客室は複数あるようだが、予約できる日付はやや限られているようだ。今回のような馬刺しや牛肉料理が提供されるプランでも、ある程度優しい料金で宿泊することができる。松本の中心地には観光スポットも多いため、観光する際にはぜひ宿泊してほしい。
【メモ】
・宿泊時期:2025年末頃
・宿泊費用:¥15,000~
・施設:旅館、レトロ、和風
・温泉:単純泉、アルカリ性、源泉掛け流し、貸切風呂、湯の花
・食事:和食、会席料理
