【神奈川】湯河原温泉「お宿 ながお」_旬の海鮮を使った料理が味わえる温泉民宿

万葉の時代からの歴史を持つ「湯河原温泉」は、神奈川の有名な温泉地だ。相模湾に注ぐ千歳川に沿って広域な温泉街を形成され、老舗の宿と店が並ぶ古き良き温泉場の街並みが見られる。温泉は薬湯と名高く、かつては大名や御用邸に献上されたそうだ。その名残か、首都圏の入浴施設やホテルなどで温泉が使われていることがあり、運び湯の文化を感じさせる温泉地である。

温泉地としては広域で、しばしば相模湾付近を「浜湯河原」、箱根山付近を「奥湯河原」、川を渡り静岡県熱海市に当たるエリアを「伊豆湯河原」と呼ぶ。ただ明確な区別はなく、どのエリアの宿もほとんどは湯河原温泉を名乗り、多くは温泉旅館組合にも加入している(伊豆湯河原のみ独自の組合も存在)。このよう県を跨ぐ温泉地は、全国的に見ても珍しい。

湯河原温泉は近年、若年層からの知名度が低いことが課題視されている。近隣の熱海温泉や箱根湯本温泉に比べてコンテンツが少なく、競争力が弱いことが要因だと言われている。街では老舗旅館の改修や飲食店のオープン、公園の整備など、人気温泉地への再帰に向けた取り組みが進められている。こうした動きをきちんと若者にPRできるかが、今後の鍵であると考える。
「お宿 ながお」について

「お宿 ながお」は、奥湯河原の入口に位置する客室数5の小規模な民宿だ。創業は2001年で、老舗旅館の多い奥湯河原では珍しい新興の宿である。この建物はかつて民間企業の保養所であったが、そこで料理長を務めていた方のご子息が旅館に転用したのだそうだ。館主も板前修行の経験を積んでおり、こだわりの料理はこの旅館の売りになっている。




建物は3階建てだが、傾斜地に建つため入口からは2階にある。2000年代の創業とは言え、建物自体は保養所として使われてきたため古さは否めない。ただ外壁は黒く塗られ、館内は所々が改装され洒落た施設にはなっている。共同設備の洗面台やトイレも新しくないが綺麗で、印象は悪くない。

客室はバス・トイレなしの6畳間だ。景色は良くないが、窓が大きいため日が入る。古い部屋だがエアコンやLED照明は導入されており、過ごす上で不便はないだろう。


机にはお茶請けの他、パックの緑茶、インスタント珈琲、ペットボトルの水の用意がある。飲み物については緑茶以外の用意がない宿も決して珍しくないため、充実している印象を受ける。
「お宿 ながお」の温泉

浴室は1階に2つあり、いずれも貸切利用できる。貸切中は札を床に置き、利用中であることを示す。15-18時は予約制だが、その後は自由に利用することができる。今回は青い暖簾の浴室を取り上げる。

脱衣所はかなりコンパクトで、籠と流しがあるだけのシンプルなものだ。洗面台なのか流しなのか曖昧な設備もある。

浴室も小じんまりとしており、同時に使うとしたら2-3人が限界だろう。温泉は蛇口のホースから供給され、オーバーフローで排湯される。少し籠る浴室だが、気になるほどではない。壁・床・浴槽を含め木をモチーフとしたデザインになっており、なんとなく落ち着く空間だ。

カランは左右の壁に2箇所あるが、鏡があるのは右手だけ。比較的新しいらしく、使う上で不自由はない。

使用源泉は共同源泉「混合泉(奥湯河原サービランス)」だ。湯河原温泉ではサービランスという温泉の供給拠点を4箇所(奥湯河原、権現山、土肥、宮上)設置し、源泉を集中管理している。奥湯河原サービランスは4箇所の中でも最も上流に位置し、他のサービランス間で湯量を補完する機能を持たない。そのため送湯の中継が少なく、新鮮なお湯を楽しむことができる。泉質は「含石膏-弱食塩泉」、弱い塩味と苦味があるが匂いはなく、癖のない温泉だ。温まりが良いので、長湯には注意した方が良い。
「お宿 ながお」の食事
〜夕食〜

食事は会場食で、1階の宴会場だったと推測される部屋が使われている。他の宿泊客との間に距離がある他、ちょっとしたパーテーションもあるため落ち着いて食事を取ることができる。

先付けの小鉢などはなく、鍋、漬物、釜飯のみが用意されている。釜には火が付いており、30分程で炊き上がるとのこと。この時の鍋はトマト味で、〆のパスタと味変向けの粉チーズが卓上にある。鍋には好みのタイミングで火を付ける。

鍋の具材は豚肉・鶏肉・白滝・各種野菜とベーシックだ。先に肉を入れ、その後野菜を被せ煮るように指示される。肉に火が入りすぎる気もするが、食中毒対策かもしれない。



お造りの内容はトロ、〆さば、ブリなど、どれも肉厚で食べ応えがある。あん肝は臭みがなく食べやすい。茶碗蒸しは上に餡のような白菜のスープが掛かっており、中にはぷりぷりの白子が入っている。

内容は、牛蒡の赤ワイン煮、かぼちゃの煮物、もずく酢、ブロッコリー・無花果・胡桃のクリームチーズ味噌和えだ。旬の魚介を使った料理を売りにしている宿ではあるが、こうした小鉢も凝っており、普段は口にしない味を楽しむことができる。先付けっぽいが、食事の途中で提供される。

釜飯の具材は人参・牛蒡・油揚げ、色からもわかる通り優しい味付けで、他の料理の邪魔をしない。


風呂吹き大根は、中華風の甘味噌がアクセントになっている。揚げ野菜とともに出るサモサは2種類あり、種は1つは肉とエビ、もう1つは明太子だ。味付け用の岩塩も用意される。

杏仁豆腐の上にジュレが載っており、上品さを際立てている。添えられたフルーツもどれも美味で、良い口直しになる。
朝食

夕食の時とは異なり先付けが多めで、釜のご飯は既に炊き上がっている。鍋物の湯豆腐にも火が点いている。小鉢の品数も多く、十分なボリュームの朝食だと言えるだろう。卵焼きや納豆など朝食の王道が並びながら、烏賊の塩辛や鰹のほぐし煮など、魚介の要素もある。

小鉢には烏賊の塩辛や鰹のほぐし煮など海鮮要素もありつつ、ひじき煮や納豆など王道の品も並ぶ。


魚料理でカマスが出てくるのは少し珍しい気もする。温かい湯豆腐は寒い朝に丁度良い。


炊き立てのご飯はもちろん、味噌汁を熱々の状態で提供される。

デザートは単なるヨーグルトに見えるが、中には大きめにカットパインが入っている。
宿泊の感想
海鮮料理が魅力の宿という印象だ。お造りだけでなく、あん肝や白子など珍味も美味しく仕上がっている他、海鮮を使っていない料理も小洒落ており素敵だ。建物の古さは否めないが、そこまで気になるものではない。貸切で入浴できる熱めの温泉も魅力的で、湯河原の名湯を独り占めで楽しむことができる点も良い。なかなか穴場なのではないかと思う。
1人客の受入れは積極的で、土日に泊まることもできる。平日であれば、夕朝食付きでもかなり優しい料金で宿泊できる。奥湯河原は駅からの距離はあるものの、帰りには坂を降りつつ温泉街を観光できるので、機会があればぜひ宿泊してほしい。
【メモ】
・宿泊時期:2026年初め頃
・宿泊費用:~¥10,000
・施設:民宿
・温泉:食塩泉、源泉掛け流し、貸切風呂
・食事:和食、海鮮、会席料理
