生転対生 2

2話 人生唐突なり

本が好きだった。
知らない事を知る事が好きだ。
人、動物、妖怪
知った事を試す事が好きだ。
数式、古文、体術、術式
知っているけどわからない。
試してみるけどわからない。
人として生きている彼女に出会ったのは運命か。
力を持った彼女は怖がられていた。
人でもなく妖怪でもないそんな彼女への執着はなんだろう?


「危ない!美湖!」
先ほどズカズカと舞台を降りていった産石の爺さんが叫ぶ。
その声の先で達磨のような顔をした大きな頭の妖怪が美湖の前を塞ぐように装飾品を押し潰しながら現れる。
……なんでみこっちゃんがいるんだ?あれはうちの式の恰好か?
疑問がよぎるが――
「ジョー!客を避難させろ!」
指示を出し、陰陽五行の気を込めて錫杖を槍投げのように投擲する。
「生きとし生ける各々廻りて相生し、死しし死す各々打合い相剋せよ。喝!
神珍鉄の錫杖からシャクシャクと破魔の音が響き、達磨頭を吹き飛ばす。
思ったよりも効いていない。実体を持つタイプの妖か?
「広間の扉が開きません!封じられています!」
「達磨頭を舞台に引き寄せる!舞台に結界を張り分断せよ!」
「若様は!?」
「こんな日に襲ってくるんだ。狙いは俺だろう。返り討ちにする」
こんな日だ。俺の箔を付けるためにここで退治する。


「説教は後回しだ。下がりなさい美湖!こういうのはわしらの仕事だ!」
唐突に表れた達磨のような顔の大きな頭が飛んできた杖の音で退けられたのを見ておじいちゃんが間に割り込む。
「何アレ!?」ビン
「知らん。どこぞの魔じゃろ」
札を取り出し、印と呪言を唱えて結界を張る。
その中でバンバンと達磨頭は結界に体当たりを行う。
その度に結界が軋む音がする。
すごい!すごいが――
「なにそれ!?知らないんだけど!?」ワナワナ
「うちじゃ退魔は長子相続じゃからの。その後、長子が他の兄弟に教えることで鍛えるんじゃが……あやつちゃらんぽらんだからの……」
「あー」ペタン
そう言えば遊ぶときに修行と称してた気がする。
でもチビ達に中二病的な会話してたような……。知らなかったの私だけ?
「産石のじーさん!そのまま祓えそうか!?」
舞台の方から大ちゃんが声をかける。
「抑えるので精一杯だ!」
「何かわかるか!?」
「何かに憑いた憑依実体系じゃろう!何に憑いたのかは知らん!」
憑依実体?よくわからないけど実際あるものに憑いたのか見たことがあるような。
気になってその方向を見るとさっきまであったはずの達磨がなくなっていた。
「大ちゃん!そこの達磨がなくなってる!」ビンビン
「なら、こっちに任せろ!俺が祓う」
「……無茶だけはするなよ!」
「当然!」
結界の一部を崩れ舞台の方に穴が開くとそこから達磨頭が飛び出し、
「ぬ!?」
「おじいちゃん!?」ピン
おじいちゃんを体当たりで吹き飛ばしてから天上へと向かう。
それに対して舞台から大ちゃんが術を撃って気を引いている。今のうちにおじいちゃんの手当てを――
「構うな。今はあの錫杖を小僧に渡せ、あれがあればなんとかなるはず」
おじいちゃんはむくっと上半身だけ起き上がって言うがどうやら立てないらしい。
心配だがおじいちゃんの言う通りに床に刺さった錫杖に近づき引き抜く。
すると
「棒?」?
変形した神珍鉄はどこかで見たことがあるような三尺ほどの長さの棒に変形した。
変形するにしてもこういうのって剣とかそういう形に変形するものじゃないの!?伝説の武器と言えば剣でしょ!?


「アレはまさか…。おいおい。さっきのお嬢ちゃんがソウなのか?探しちゃいなかったがこんな所にいたのかよ」
部屋の外から覗いてたコンセイは嫌なものを見たかのように顔を歪ませる。
「だが、あの程度に困惑してるとなると抜け落ちてるのか?兎も角腕前を見てから判断すべきか」


この感触……何かを思い出しそうな……。
「何ぼうっとしてる!逃げろアホ!」
「アホじゃないわバカ!」ブン
大ちゃんの注意に我に返って構える。
とっさに叫び返したのが悪かったのか達磨頭はぎょろりと私の方を見て大口を開けて飛び込んでくる。
「あっち行けぇ!」ビク
バッティングするように振りぬいた棒が偶然、達磨頭を捉えて大悟のいる舞台の方向へ吹き飛ばす。
「ナイスバッティング!」
飛んでくる達磨頭を軽く避けて蹴りで軌道修正された達磨頭は舞台の上を転がりいつの間にか舞台に用意されていた五芒星の陣に収まった。
「封魔術、縛」
達摩頭は空中に浮くように縛られて何も出来ないようだ後は――
があああああ!
「うおっ!?」
達摩頭は叫びと共に術から逃れようと暴れだし、今にも引きちぎって逃げそうだ。
どうすればいい?この棒を大ちゃんに渡す前に脱出されそうだ。すぐには届かな――いや!届くかもしれない!
この棒の長さでは届かない。何より達磨には近付きたくはない。
しかし持った時から感じる奇妙ななつかしさ
自然にその言葉が出る。
「伸びろ棒!」ビン
言葉とともに達磨頭に向かって棒が勢いよく伸び、バランスを思いっきり崩したのでつんのめる。
「お、重い」ビキ
そうこうやってるうちに達磨頭が術から飛び出しそうになっている。
……ちょうど振り下ろせば当たりそうな位置だ。
ものすごく伸びた棒の扱い方はよく知らないけど思いっきり振り下ろすことはできる!
「当たれぇ!」ビン
ドォン!
鈍い音と共に達磨頭は棒と床にサンドイッチされる。
「そのまま抑えておけ」
「あんまり持たないよ大ちゃん!?あいつ力強いから!」ビンビン
「すぐに済ませる!」
ジタバタ暴れる達磨頭に大悟は近づき、達磨頭の周りを一周し、円を描く。
「かくあれし。闇より参りし常世ならざるものよ。実物に憑きし虚構の姿は怖れる勿れ。光に焼かれて帰られよ」
パァン!と柏手を打ち描かれた円から光が迸る。
オオォォンっという悲鳴のような声を上げながら達磨頭は焼かれるように消え、カロンっと大きめの達磨がその場に転がった。
……倒したの?
「達磨に異常は感じられない。退魔シューリョーだ」
転がってる達磨を裏表上下左右念入りに見ていた大ちゃんの声で、ようやく息をつける。
「なんていうか…。目茶苦茶疲れた…」ヘナ
「ありがとうな。みこっちゃんのおかげで被害が少なくすんだわ」
「感謝なさい」クネクネ
「感謝するけど。今日呼んでないはずなのにみこっちゃんはなんでいるの?」
「え…あ!誕生日祝いよ!これ!」ブルブル
誤魔化すように取り出したプレゼントは、
「おー。ありがとう」
ほっ。
よかった。渡せたし

「なんだなんだ?」「神珍鉄と勝手に使ったぞ」「どこの娘だ」「若の式では?」「いや若の式ではないぞ?見たことがない」「なに?だとしたら問題じゃ」「なぜ使いこなせた?」「人か?」「魔か?」

そうして言われ続ける嫉妬、懐疑という負の感情。
「あ――イヤ」ペタン
力がある故に恐れられていた幼少期の恐怖と違い、一触即発の殺意を伴った殺すことも辞さないような雰囲気
何を言えばいい?どうすればいい?
思考が纏まらない。
息が苦しい。
息が――
「あとから出てきて偉そうだな。達磨にゃ逃げ回ってたくせに」
ひょいっと庇う様に大ちゃんが割り込んできた。
その背中にぎゅっと掴まる。
「若様。このモノがなんにしろ神珍鉄を使えるのであれば相当な力、或いは特殊な生まれになりますぞ?」
「こいつは産石のじーさんの孫だ」
「なんと?だとすればこの騒ぎは産石殿の仕業か?」
「違うと思う。じーさんはそこで腰抜かしてるから手当てしてやれ」
「どちらにせよ。若から離れろ小娘。聞きたいことがある」
殺気を漲らせる存在に身が固くなる。尻尾が勝手に大ちゃんに巻き付く。
それを受けて大ちゃんはぽんぽんと私の頭を撫でてから、「責任取るよと」私にだけ聞こえる声で言葉をかけた後に全員に宣言するように

「うるせえ!こいつは俺の嫁だ!」

そう言って抱きかかえられ逃げるように歩き出した。



拝啓
お兄様お元気ですか?
いろいろありましたが私はこの度、旦那ができました。
夢が叶って死ぬかもしれません。
用件のみにて失礼いたします




















「あまり大した物は持ち出せなかったが、収穫はあったな」
コンセイは嗤う。
「転生体がこんな片田舎にいるとは予想外だったが――この情報はどこに売れば面白いかな?」

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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