「センチメンタルⅡ」20260210
つめたい!光にかがやかされて
さまよひ歩くかよわい生き者たちよ
己は どこに住むのだらう――答へておくれ
───立原道造「暁と夕の詩」
*
とおい記憶の地平の向こう側へ
消息の途絶えたおもかげを追ったとき
あなたの詠む歌は悲恋でしょうか
それともおごそかにつづられる叙事でしょうか
いまこのとき この春に
あなたのまなざしの奥に
小さくきらめく光は何でしょうか
だれにも語られない憎しみでしょうか
いくつもの物語をたどらなくてはそこに至れない
生命の深い森に連なるこのうえもなく貴重ななにかでしょうか
心がいつかきっとそこを訪ねたいと願い
願いつづけながら滅びてゆくかなしみでしょうか
あるいは深くわけ入ったとき
道行きの途上でついには口ずさんでしまう
いにしへの歌謡に連なるなにかでしょうか
あなたと血脈を同じくする数多のまなざしが告げていました
そうでありうることがせつないのです
そうでありえないことがくるおしいのです
あめつちはじめてひらけしときより
あはれにはかなく
かなしくむごたらしい
つねならぬつねの
つねになりてなりゆくありさまを
ただひとり見すぎたこの星の自然よ
おまえは倦むということがないのでしょうか
時のあわいにあるかなきか
永遠のまにまに
かつ消えかつ結びて
なおも見わたせば
春にひろがる情けのさざなみを
ある人かくのたまはく
まことのひとのなさけ
しごくまっすぐに
はかなくつたなく
しどけなきものなり
かさねてのたまふ
つたなく執着尽きがたく
めめしくあはれなるものなれば
あはれの心をあはれのままに語れぞかし
ひとのこころを種として
まにまにかつ消えかつ結びて
つたなくめめしふ詠みつくれば
あやしふこそものぐるほしけれ
あなたのまなざしの向かうかなたに
結ばれる言の葉は挽歌でしょうか
あけそめの光に連なる頌歌でしょうか
よしなきいざないは止まず
遠いおもかげをよすがとしながら
終わりなき連歌のえにしにみちびかれ
踏破すべき一片のよしなしごととして
いまも心に訪れているのでしょうか
