読書メモ「スナック墓場」

・スナック墓場
・文藝春秋
・嶋津輝
・2019年9月

嶋津輝氏が執筆した7編が収録された短編集。
絶賛されている通り、どの作品も、
何気ない日常をしみじみと、味わい深く描写している。
そのうえ、著者独自のユーモアがところどころに散りばめられ、
読後感が本当に心地よい。

特に「一等賞」「スナック墓場」が個人的にはおすすめだ。
どこにでもありそうな市井の日常が、
ちょとした違和感、引っかかりのようなものが良い味付けとなって、
色鮮やかで魅力的な世界に変化する。

頑張って成功を手にする、
不幸な境遇を打開するといった大衆受けする展開はない。
一等賞に登場するユキにしかり、
スナックを切り盛りする3人の店員しかり、
決して恵まれた境遇にあるわけではなが、
なぜかとても生き生きとした日々を過ごしているのだ。

生きていれば、不快に思うことや理不尽な扱いを受けるかもある。
それでも、人とのつながり、
ちょっとしたやりとりに、元気をもらうものだ。

豪放磊落な大文豪、色川武大さんは次のように説いていた。
8勝7敗ではつまらない、9勝6敗を狙うべき。
色川さんのこの言葉は大好きだが、本作品は、
勝ち負けではない、仮に負けっぱなしだとしても、
素晴らしい人生だ、そういった世界観を味わうことができる。
だからこそ、読後感が心地よいのだろう。

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