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指数関数的な「生産性格差」が始まる - 読書記録 「The Five-Year Century-5年の世紀 」(5)

今回から、書籍『The Five-Year Century』第2部「私たちを阻む4つの幻想」の第4章に入ります。テーマは「漸進的(ぜんしんてき)変化の錯覚」です。

本章は、本書が指摘する「4つの幻想」の1つ目にあたる、「人間が指数関数的変化を誤解する」という問題について深く解説しています。

人間は、ゆっくりとした直線的(線形)な変化を直感的に理解することは得意ですが、爆発的な「指数関数的変化」を理解することが決定的に苦手です。しかし、AIによって指数関数的な変化が起きている現在、この変化の性質を正しく理解できないことは、組織にとって致命的な問題になると著者は警告しています。

この錯覚から抜け出すアプローチとして、本書では以下の4つの視点が紹介されています。

  1. 戦略ではなく、痛みから始めよ (チームの価値や人材の可能性を阻害している、目の前の課題解決から始める)

  2. 自律的な企業思考を持つ (「AIがどこで役立つか」を問うのをやめ、「人間が関与しなければならないのはどこか」を考える)

  3. 成果重視の指標を作成する (「従業員一人当たりの収益」「一人当たりの解決した問題数」「サイクルタイムの短縮」などを指数関数的指標とする)

  4. デジタルワーカーという観点から考える (AIを人間の雇用を脅かす存在ではなく、人間の能力を増幅させる存在へと捉え直す)

この中で特に印象的だったのが、4番目の「デジタルワーカーという観点から考える」の節にあった次の問いかけです。

もしあなたの会社の社員一人ひとりが、10人のAIエージェントを直属の部下として持っていたらどうなるでしょうか?

The Five-Year Century

「10人のAIエージェントを部下に持つ」という考え方は、現在のソフトウェア開発現場でまさに現実のものになりつつあると感じています。 実際、優秀な開発者はすでにCursorやClaude Codeなどのエージェントを並行して複数起動し、自律的に問題を解決させています。この波に乗れているエンジニアは、まさに水を得た魚のように様々なチャレンジを積み重ね、10倍のパフォーマンスを出しているようにも見えます。

その反面、この波に乗れていないエンジニアも存在します。彼らはAIを使う上での課題や不完全な部分ばかりを探し出し、それを「だからまだ使えない」「人間がやらなければならない」という理由付けにしているように見えます。本書では、このような状態を次のように手厳しく表現しています。

誰もが仕事でAIを効果的に活用できるわけではありません。一部の人々、そして組織全体としては、指数関数的な変化がうまくいかない理由を際限なく探し出すでしょう。

The Five-Year Century

ここは、まさに頭の痛い問題です。 変化を味方につけてレバレッジをかけるエンジニアと、できない理由を探し続けるエンジニア。両者の間の生産性格差は、今後「直線的」ではなく「指数関数的」に、つまり恐ろしいスピードで広がっていくことを意味しているからです。

この圧倒的な格差に取り残されないためにも、まずは「AIは指数関数的な変化をもたらすものである」という現実を正しく受け入れ、現状維持の誘惑を振り切って前に進むことが重要なのだと、強く感じさせられた章でした。

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