Photo by
humble_dahlia809
彼女と僕
( #ショートショート 本文:593字)
人影のない昼下がりの公園は、音が消えたみたいに静かだった。風もなく、木々の葉も揺れない。その中心に彼女はいた。
最初は、ただの錯覚かと思った。あまりにも整いすぎていて、この世界の質感から浮いている。死角のない僕の視界の中で、彼女だけが異質だった。白い肌、透き通るような輪郭、そして何より、その佇まい。近づくことすらためらわせるほど、完璧な「雰囲気」があった。
僕はベンチに座ったまま、動けなくなる。彼女が、こちらを見た。その瞬間、時間が止まった。ゆっくりと、彼女はウインクをする。……いや、それはまばたきだったのかもしれない。けれど僕には、特別な合図のように見えた。一つ、二つ、三つ。まるで、僕だけへの秘密の合図のように。心臓が跳ねた。
どうして僕に? 理由なんていらない。ただ、それだけで十分だった。胸の奥に、静かで確かな熱が灯る。
――恋に落ちた。
言葉を交わすこともなく、ただ見つめ合うだけ。それなのに、すべてが通じている気がした。彼女の存在が、僕の世界を書き換えていく。
どれくらいそうしていただろう。気づけば、僕は立ち上がり、彼女に一歩踏み出していた。もっと近くで見たい。もっと知りたい。この奇跡みたいな存在を。彼女はまた、ゆっくりとウインクをした。僕は、ただ見つめ続けた。
僕が一目惚れした彼女には、瞳が一つしかなかった。
そして、彼女を見つめ続ける僕には、瞳が三つあった。
(了)
どんな人にも恋に落ちる権利はあります。どうか、お幸せに。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
パテックさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#パテック杯 #恋愛
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!