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ハレルヤ!アーメン!|#灯火杯5th

#ショートショート  本文:1216字)

「マフラーに巻かれているようでは男じゃないぞ」
 姉さんの声は、冬の空気を割って響いた。冗談めかしているけれど、どこか本気で、僕の背中を押そうとしている。

「どうして、姉さんがついてくるの?」
「それはだな。そう……コンビニで買い物をしようと思ってだな。ついでにそこまでいっしょに行こうかと……」
 言い訳みたいな言葉の奥に、少しだけ寂しさが滲んでいた。僕は気づかないふりをした。

 姉さんは僕より四つ年上。僕と話すときはいつも男言葉になる。小さい頃、僕が「お姉ちゃんじゃなくて、お兄ちゃんがよかった」と泣いたらしい。そんな記憶は曖昧だけど、姉さんはそれをずっと覚えていて、今もその役を演じてくれている。

「マフラーはだな……」
 姉さんが自分のマフラーを巻き直して手本を見せる。
「……こうやって、くるっと回して、力いっぱい結んで……ぐえっ!」
「姉さん、それじゃ息できないよ。ふわっと、ゆるめて」
「……ああ、危なかった。死ぬかと思った」
 笑いながら、姉さんはマフラーをほどいた。風が頬を撫でていく。冷たいけれど、なんだか心が温かくなる。

 先週、姉さんは三年間付き合っていた彼と別れた。理由は聞いていない。でも、三日間「風邪だ。熱がある。死ぬ〜」と布団にくるまっていた姉さんの瞼が赤く腫れていたのを見て、僕は察した。泣いたんだ。たくさん、泣いたんだ。

「今夜、プロポーズするんだろ。男らしく、堂々と彼女に告白するんだぞ」
 昭和のオヤジみたいなセリフ。でも、姉さんはいつもそうだ。強がって、笑って、僕を励ましてくれる。

「わかってるよ、姉さん。……コンビニはあっちだろ。じゃ、ここで」
「おう。頑張れよ。祈ってるからな!」
 姉さんは手を振った。少しだけ、ぎこちなく。僕はその背中に小さく「ありがとう」と言った。聞こえないくらいの小さな声で。

 今夜はクリスマス。天気予報の降水確率は0%。ホワイトクリスマスにはならない。空は澄んでいて星が瞬いている。晴れだから、ハレルヤ!
 姉さんと二人で「雨ならアーメン!  晴れならハレルヤ!」って、教会学校でふざけてたよね。あの頃の姉さんは、今よりずっと元気で笑顔がまぶしかった。

 僕は姉さんが好きだ。強くて、優しくて、ちょっと不器用で。面と向かって言ったことはないけど、ずっとそう思ってる。
 姉さんのポジティブな思いが僕の背中を押してくれたから、今夜のプロポーズはきっとうまくいく。だから、僕のことはもう心配しなくてもいい。

 神さま。どうか、姉さんを祝福してください。彼女がまた、誰かに心から笑える日が来ますように。神の御子、イエス・キリストが生まれたこの良き日に、御名によって祈ります。アーメン。

 街はクリスマスソングにあふれている。カップルが手をつなぎ、子どもたちがサンタの帽子をかぶってはしゃいでいる。イルミネーションが、夜を優しく照らしている。

 素敵な夜だ。きっと、姉さんにも、僕にも。新しい物語が始まる夜だ。

(了)


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
花邑灯火さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#灯火杯5th #クリスマス #エール

本作は、昨年の灯火物語杯に参加した作品のリメイクです。
続編にしようかと思ったのですが、どうしても前作を超えるストーリーが思いつかず、リメイクでの再挑戦となりました。

メンバーシップやってます。メンバー絶賛募集中。

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

#マフラー #ハレルヤ #アーメン #プロポーズ #教会学校 #祈り #イエスキリスト

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