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恋する女は嫌いだ

#ショートショート  本文:648字)

 夜十時。氷をグラスに落とした瞬間、電話が鳴った。

「今、話せる?」
 恋する女は声がうるさい。
「三秒なら」
「えっと、あの……」
「はい、三秒!」
「それで、彼のことなんだけど……」
「無視かい!」

「彼、メッセージの句点がいつも二個なの」
「終わったね。それは重い」
「でも、ハートもついてた!」
「情緒がジェットコースターだね」
「どうすればいい?」
「酔い止めをお勧めする」

「返信したほうがいい?」
「『句点を減らせ』って送れば?」
「嫌われる!」
「じゃあ、句読点監査官として生きなよ」
 私は黙って酒を飲んだ。

「あと、駅で偶然を装って会いたくて」
「待ち伏せか。駅員に相談したら? 監視カメラに詳しいから」
「それじゃ犯罪者じゃない。私を何だと思ってるの!」
「恋する女」
 しばしの沈黙。

「あと……彼、犬を飼ってるの。私、苦手で」
「あんた、虎になれば? 犬より強いわよ」
「解決にならない!」
「恋愛なんてだいたいそんなものでしょ」
 再び沈黙。

「……深いね」
「浅いよ」
「私、重いかな」
「かなり。自分から重量増やしにいってる」
「だって好きなんだもん! 恋したことないの?」
「ある。池で泳いでるのにエサをやったことがある」
「そのコイじゃない!」

 やがて、彼女は弾んだ声を出した。
「わかった!  私、彼じゃなくて恋してる自分が好きなんだ!」
「最悪ね」
「スッキリした!  明日、駅で偶然してくる!」
「日本語が壊れてる」
「行ってきます!」
 電話が切れた。

 静かな部屋。氷が溶けかけた酒を飲み干し、呟いた。
「これだから、恋する女は嫌いだ」

(了)

仲のいい二人ですね~。彼女、うまく偶然できたかな?


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#アマノ文筆クラブ #恋する女は嫌いだ


TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜の朝をお楽しみに。

では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。

#電話 #三秒 #句点 #ジェットコースター #酔い止め #駅 #偶然 #犬 #虎 #恋する女

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