箕面の山にて|霜月掌編集
箕面山。深き霧の朝、男は狩りのために従者を従えて山へ分け入った。彼はただの男ではない。弓術の達人であり、狩りを武道の一環として捉えていた。獲物を仕留めることよりも、自然との呼吸を合わせることに重きを置いていた。
「獲物を追うな。風を読むのだ」と彼は言う。
彼らが進む山道は、落葉に覆われ、足音すら吸い込まれるような静けさだった。彼は立ち止まり、指を空にかざす。風が南から吹いている。獲物は北の沢の方だと読んだ。
従者は焦りを見せる。
「殿、早く行かねば逃げられまする」
男は首を振る。
「逃げるものを追うは下策。待つことこそ、狩りの極意」
彼らは沢の上にある岩場に身を潜め、息を殺す。やがて、霧が晴れて獲物が目の前に現れた。その美しさは燃える炎のようであり、まるで世の終わりを思わせる鮮やかさであった。
男は弓を構え、矢をつがえる。だが、放たれた矢は獲物には届かず、近くの木の幹に刺さっただけだった。
従者が驚きの声を上げる。
「なぜ、仕留めなかったのですか!」
男は静かに答える。
「あれは幻だ。我が心に迷いがあった。迷いある矢は放つべきではなかった」
獲物は霧の中へ消えた。男は弓を収め、従者に言った。
「今日の狩りは、我が心の狩りであった。獲物を仕留めずとも、己を知ることができた」
従者が言った。
「もうよろしいのではないですか」
「そうかも知れぬな」
男が頷く。
「じゃ、このあたりで食用の葉を摘んで帰りましょうよ。業者に売れば小遣い稼ぎになるって話です。ほんとかどうか、知りませんけど」
「そりゃいいな。それにしても、今年の景色も素晴らしかった。これだから狩りはやめられんなぁ」
箕面山での紅葉狩りのおみやげには、名物「もみじの天ぷら」がおすすめです。皆さんも良き秋を。
(了)
毎年、役を交替して楽しんでいるそうです。フィクションですよ!
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
三條凛花さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#霜月掌編集 #11月らしい小説
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