夏休みの思い出
(#ショートストーリー 本文:624字)
夏休み初日。ぼくは早起きして、駅へ向かう。切符を握りしめ、二時間、電車に揺られる。窓の外を流れる田んぼの緑、遠くの山、白い雲。
おじいちゃんの家は、木の匂いがする古い一軒家だ。着くなり、おじいちゃんと一緒に裏山へセミを取りに行った。ミンミンゼミやアブラゼミがにぎやかに鳴いているけれど、カブトムシの姿は見当たらない。
「おじいちゃん、カブトムシはいないの?」
ぼくが聞くと、
「カブトムシは夜か明け方だぞ」
おじいちゃんが笑って教えてくれた。
その日は、庭の小川にスイカを沈めて遊んだ。夕方、冷えたスイカを取り出して、みんなで縁側に座って食べる。真っ赤な果肉にかぶりつくと、口の中に甘さと冷たさが広がった。おじいちゃんもおばあちゃんも笑っていた。
夜は虫の声を聞きながら、明日に備えて早く布団に入る。
翌朝、まだ薄暗いうちに目が覚めた。懐中電灯を持って、一人で裏山へ走る。クヌギの木の樹液に、カブトムシが何匹も集まっている。汗だくになりながら、そっと手を伸ばす。
帰りの電車では、虫かごの中でカブトムシがカサカサと音を立てている。窓の外の景色を眺めながら、また来年もおじいちゃんちに行きたいなと思った。
そんな夏休みを送れたらよかったのに。
ぼくは、マンションの一室で白いノートを閉じた。カレンダーには、残り少なくなった日付の枠に「夏休みの思い出(作文)」と予定が書いてある。窓の外はグレーの壁で、セミの声も、川のせせらぎも、聞こえてこなかった。
(了)
そんな夏休み。憧れますね。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
小牧幸助さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#シロクマ文芸部 #夏休み
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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