大好物と相棒|#せりふ三題噺
( #ショートストーリー 本文:544字)
「おめでとう。今日からここがあなたの家ね」
母はそう言って部屋を見渡し、手元のパックから真っ赤な完熟のいちごを一粒差し出した。
「ありがとう。わざわざ持ってきてくれたの?」
「そう……今朝採れたばかりよ。引っ越しの片付け、お疲れ様」
私はその一粒を受け取る。実家の庭で一緒に育てた、私の大好物だ。
「寂しくなっても、この子がいるから一人じゃないでしょ。……でも辛くなったら、いつでも帰ってきなさい」
母が視線を向けた先で、引っ越し祝いにと持たせてくれた真っ白な文鳥が、カゴの中でピピピと小さく喉を鳴らした。
「うん。……お母さんも、体に気をつけてね」
鳥かごの中で不思議そうに首を傾げてこちらを見る文鳥は、まだこの場所が自分の家だとは分かっていないようだった。その無垢な様子が、かえって私の強張った心を少しだけ解いてくれる。
荷解きを終えたばかりの、がらんとした部屋。特別なことは何もない、静かな独り立ちの夜の始まり。自由への高揚感と、それと同じくらいの心細さが胸の奥で渦巻いている。部屋いっぱいに広がったいちごの甘い香り、私を見つめる文鳥――この状況が、私の心を柔らかく整える。
母を見送り、私はおろしたての柔らかなパジャマに袖を通す。明日から始まる新しい一日を思いながら、深く息を吐いた。
(了)
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
はらとけいさんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
#せりふ三題噺 #おめでとう #いちごパジャマ文鳥
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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