あんたが彼で、あたしが彼女|#モノカキングダム2025
( #ショートストーリー 本文:1219文字)
『道場まで来られたし』
――まるで果し状。裕也のやつ、しかたない。受けて立つしかないか。
「ごめん、モコ! 相談がある!」
「……あんた『道場じゃないと相談できない病』なの?」
あたしは藍間萌子(あいまもえこ)、通称モコ。高校二年、女子剣道部主将。 目の前で道着を着て、相談相談とわめいているのは結城裕也(ゆうきゆうや)。同じ高校、同じ学年、男子剣道部の控え選手。幼稚園からずっといっしょの腐れ縁――世間一般で言う、幼馴染というやつだ。
裕也は元気だけが取り柄の凡人なのに、なぜか女子に人気がある。無害認定されてるだけだとあたしは思ってる。なのに頻繁に告白されて、そのたびに「どうにかしてくれ~」と泣きついてきて、剣道の試合で相談するのが恒例行事。どういう思考回路になっているのか、解剖して調べてみたい。
剣道の腕はあたしの方が一枚上手。試合をすれば、いつもあたしの圧勝。だけど今日はひょっとするとと思わせるような真剣な顔。
「今回はヤバいんだよ! クリスマスにデート誘われて、つい『モコと付き合ってる』って言っちゃったんだ!」
「はぁ!?」
よりにもよって、何……その嘘。
「だから……順序が逆になったけど、これから俺と付き合ってほしい!」
……それ、告白? 辻褄合わせ? どう考えればいいの?
「勝負よ! あたしに勝ったら考えてあげる!」
礼をして、そんきょ。立ち上がり、構え――打ち合い開始!
「メーーーン!」裕也の竹刀が振り下ろされる。
――ごめん、突然、どういうこと?
「ドーーーゥ!」踏み込みがいつもより鋭い。
――どう答えよう、あたし。
「コテーーー!」手元を狙ってくる。
――小手先の回答じゃダメ……だよね?
その瞬間、裕也の突きが決まった。
竹刀の先が胸に届くと同時に、声が響く。
「付き合ってください!」
真剣な顔。いつものお調子者じゃない。
あたしは――何と答えたか覚えてない。たぶん、もごもご言って逃げ帰った気がする。
試験勉強なんてもう手につかない。英語の単語帳を開いても、頭の中は「アイ・マイ・ミー」「ユー・ユア・ユー」がぐーるぐる。
「アイ・マイ・ミー」あたし、藍間萌子は――
「ユー・ユア・ユー」結城裕也の――
「シー・ハー・ハー」彼女になるの?
「ヒー・ヒズ・ヒム」裕也が彼?
――裕也が彼? あたしが彼女?
あーあ、これじゃ藍間萌子(あいまもえこ)じゃなくて曖昧模糊(あいまいもこ)だ。はっきりしないにもほどがある。
心臓がドクドク鳴ってる。竹刀の打ち合いよりも激しく。
もう一度、ちゃんと答えよう。スマホを取り出して、ひとこと打ち込む。
『OK!』……送信。
画面を見つめる間もなく、裕也から即返信。
『やったーーー! クリスマス、俺、全力でエスコートする!』
思わず笑ってしまった。竹刀での勝負じゃなく、ここまで真剣な気持ちで、あたしを求めてるなんて。
今年のクリスマスは、剣道場での勝負よりも胸が高鳴る夜になりそうだ。
(了)
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
ことばとさんの企画にエントリーします。
よろしくお願いします。
#モノカキングダム2025 #あい
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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