夜職保育士さんと僕12 取り戻せ日常
この物語はたぶんフィクションです
ミキさんと僕もたぶん空想上の誰かです
でも、空想上でも良いから、2人のかけがえのない時間を残せたら良いなと思います
浜松から戻り、開けた扉は希望の扉だったはず…
そこには希望ではなく、終わっていない家事があふれていた
キッチンの流しには食器が置きっぱなし
バスルームの前には1週間分はありそうな洗濯物
まとめただけのゴミ袋
僕が来る前でもこんな酷い事になってなかったはずなのに
「ちょっとだけ片付けサボっちゃった」
ミキさんが申し訳なさそうに言った
「1週間分くらいありそうだね。明日休みだし、一緒に片付け手伝ってくれる?」
僕が答えると
「私、頑張るよ。ホントは私がやらなきゃいけないんだから」
とミキさんも笑顔で答えてくれた
その顔がすごく可愛くて、その場で思いっきり抱きしめた
抱きしめたまま大きく深呼吸をするように、ミキさんの匂いを全力で吸い込んだ
僅かに残る香水とシャンプーの匂い…
2週間ぶりに全身で、安堵感を感じる事ができた
もうこのまま眠ってしまいたいという誘惑を振り切り、頭を切り替える
「よしっ!」
と一声、自分の洗濯物も取り出して、洗濯物の仕分けを始めた
「今からやらないでも、明日で良いよ」
とミキさんは言ったけど
「3回は回さないとだから、今のうちに仕分けだけしとく」
と答えて、僕は仕分けを始めた
「ミキさん、今日早起きだったろうから、先にお風呂入っちゃっても良いよ」
と声をかけながら気づく
夜職用の下着が無い…
夜職辞めたとは言っていたけど、こんなところで改めて実感することになった
下着類や靴下なんかは、今日のうちに回して干してしまおう
そう思い、靴下と下着類を洗濯ネットに分けている所にミキさんが丁度やってきた
「人のパンツ持って何してるのかな?ひょっとして変態なんですか?」
とからかってくる
「匂いとかは嗅いで無いから安心してね」
と応戦すると
「そんなことしたらぶっ叩くから!」
「でも、ちょっとだけなら良いよ、変態さん」
と笑っている
「早くお風呂入って下さい」
と精一杯平静を装っていたけど、多分僕の顔は真っ赤だったと思う
ミキさんがお風呂に入っている間に、流しの洗い物も済ませようと洗い物を始める
お皿とコップはあるけど、調理器具がほとんど無かった
外食か買ってきた惣菜ばっかりで、ちゃんとしたもの食べてなかったな…
自炊は得意なはずなのに、この2週間の生活リズムが崩れてたんだろうなと少し心配になった
洗い物を終えた頃にミキさんがお風呂から上がってきた
「お湯張ってあるから、ゆっくり入ってきな」
と言われ、僕はそのまま入れ替わりでお風呂に入る
シャンプーとボディーソープの匂いが懐かしく思えた
湯船に浸かっていると、そのまま眠ってしまいそうだったけど、なんとか睡魔にうち勝ってリビングに戻った
リビングではミキさんが顔のお手入れ中だった
丁度洗濯が終わっていたので、洗濯物を干し始めると
ミキさんが
「私の下着は自分で干すからね」
と言ってきた
「なんで?良いよ、ついでだしまとめて干すよ」
と答えると
「やっぱり、なんか恥ずかしいから自分でやる」
と言う
1年位何も言われなかったのに、なんで急に今更と思いつつも
「じゃあお願いね」
とネットごとハンガーに引っ掛けておいた
顔のお手入れを終えたミキさんが、下着を干しているのを見ながら、ふと時計を確認する
まだ9時を少し過ぎた位だった
寝るにはまだ早いかなと思いつつ、ひとつやり忘れていた事を思い出してミキさんに声をかける
「髪、乾かそうか」
ミキさんの髪は半分乾きかけだったけど、ゆっくりとドライヤーをかける
短くはなったけど、髪の毛の触り心地の良さは変わらなかった
もう少し触っていたいなと思った頃に
「私も乾かしてあげる」
とミキさんが言い交代する
ドライヤーをかけてもらいながら、ミキさんに触られている心地よさで、僕はそのまま眠ってしまっていた
気がついたら4時前で、ミキさんも隣で眠っていた
ミキさんの寝顔を見ながら、今日はあまり見たことのないミキさんがたくさん見られたなと思った
きっと髪を切ったからだけじゃない、お互いに何かが変わったからなのかもしれない
そんな事を考えていると、もう一つ忘れている事を思い出した
「お迎えの日にね」と言ったミキさんの顔を思い出しながら
ほんの一瞬だけ、ミキさんを起こさないように注意して
そっとキスをしてから眠りについた
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