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初冬(ある日の日記)

季節は秋から冬へと移ろうとしている。初冬――その狭間に立つ。
季節の境といえば、冬から春へは雪どけ水や桜のつぼみ、春から夏へは街を吹き抜ける薫風、夏から秋へは鈴虫たちの声。初春や初夏、初秋――その姿は鮮やかに思い描ける。だが、初冬はどうだろう。冬の始まりの情景は、容易には浮かんでこない。

木々の葉は次々と落ち、厚着の人々が街を行き交う。どこか浮足立った空気、クリスマスの気配。しかし、今ひとつ心に響かない。一年の疲れが積もる時期だから、風景をめでる余裕を失い、記憶に残らないのかもしれない。本当はもっと鮮やかな情景があるはずなのに、気づかれぬまま過ぎ去ってしまうのだろうか。あるいは、私はただ、忘れているだけなのかもしれない。この季節に出会った何かを。薄れていく記憶の中の誰かを。

出会ったはずの人、出会うはずのなかった人。立ち尽くす私の傍を、人々は近づいては遠ざかり、季節のように流れていく。


※Talesで小説を書いています。こちらもよろしくお願いします。


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