AIがハードへ広がる一週間──Metaの低価格スマートグラスと、Galaxy Watch 9・Android 17
2026年6月下旬のテクノロジー分野では、AIがソフトウェアからハードウェアへと広がる動きが目立ちました。Metaは自社ブランドの低価格なスマートグラスを発売し、Samsungの次期スマートウォッチGalaxy Watch 9のリーク画像が相次ぎ、GoogleのAndroid 17は端末への展開が進んでいます。
本稿では、公式に発表された情報とリークにとどまる情報を区別しながら、それぞれの中身と市場での位置づけを説明します。
Metaが自社ブランドの低価格スマートグラスを発売
最も明確な発表は、Metaのスマートグラスです。同社は2026年6月23日、Meta Glassesと名付けた新しい製品を発表し、299ドルからの価格で同日に発売しました。販売地域は米国、カナダ、英国、フランス、イタリア、ドイツ、スペインなどで、年内にさらに拡大するとされています。これまでのスマートグラスはRay-BanやOakleyといったEssilorLuxotticaのブランド名を冠していましたが、今回はMetaが自社で設計し、これらのブランド名を付けない初めての製品です。EssilorLuxotticaとの提携のもとで作られている点は変わりません。
価格設定が大きな変化点です。第2世代のRay-Ban Metaが379ドル、Oakley Metaが499ドルであるのに対し、Meta Glassesは299ドルからと、より手に取りやすい水準に置かれました。Metaの最高技術責任者でReality Labsを率いるAndrew Bosworth氏は、発売前のイベントで、人々に届けるには設計や様式だけでなく価格帯も重要だと述べています。製品は3種類の様式で展開され、Meta Adventurer、Meta Fury、そしてKylie Jenner氏と組んだMeta Glasses by Kylieが用意されています。最後の一つは399ドルで、Jenner氏の声をもとにした音声をAIに使う選択肢が付きます。色やレンズの組み合わせは26通り用意され、視力補正レンズにも対応します。
機能面では、画面を持たない構成です。カメラと開放型のスピーカー、複数のマイク、Meta AIを起動する専用ボタンを備え、電池は8時間超とされています。利用者はMeta AIに話しかけて、目の前のものを翻訳させたり、内容を尋ねたり、写真や動画を撮ったりできます。前年に発売された画面付きのRay-Ban Displayが799ドルだったことと比べると、Meta Glassesは表示機能を持たない代わりに価格を抑えた位置づけです。搭載されるAIは、MetaのSuperintelligence Labsによる初のモデルであるMuse Sparkです。最高経営責任者のMark Zuckerberg氏は、眼鏡が個人向けの高度なAIにアクセスする主要な手段になるとの見方を示しています。Metaは2026年に巨額の設備投資を計画しており、こうしたAIへの投資が製品として実を結ぶかどうかが問われる局面でもあります。
Metaは、仮想現実の機器よりもスマートグラスで成果を上げてきました。報道によると、同社のグラスを日常的に使う人の数は、前年から大きく増えたとされています。ただし、市場を分析する立場からは、こうした機器が本当にスマートフォンより便利だと利用者に納得させられるかは、まだ不透明だとの見方も示されています。眼鏡で翻訳や撮影ができるとしても、それが既存のスマートフォンでできることとどれだけ違うのかが問われるためです。Metaが価格を下げて裾野を広げようとしているのは、まず多くの人の手に届けることで、AIを身につけて使う習慣そのものを育てる狙いがあると見られます。眼鏡が個人向けのAIにアクセスする入り口になるという同社の見立てが、実際の利用にどこまで結び付くかが、今後の焦点です。
スマートグラス市場の競争とプライバシーの論点
スマートグラス市場は拡大しつつあります。調査会社IDCによると、画面を持たないスマートグラスの出荷は2026年第1四半期に前年同期比167パーセント増え、同四半期のAIグラス市場でMetaは69.2パーセントを占めたとされています。別の調査会社Counterpointは、MetaとEssilorLuxotticaの合計シェアを8割超と見ています。平均販売価格は2026年の376ドルから2030年には229ドルへ下がるとIDCは予測しており、価格低下が普及を後押しする構図です。
競争も激しくなっています。SnapはAR表示に対応するSpecsを6月16日に2195ドルで発表し、GoogleとSamsungはGeminiを使ったスマートグラスを今秋に投入すると見られています。GoogleはWarby Parkerとも組み、Appleもスマートグラスを準備していると報じられています。OpenAIもハードウェア製品の開発を進めているとされ、AIをどの機器に載せるかをめぐる競争は、眼鏡という形でも広がっています。一方で、プライバシーをめぐる懸念は残ります。Wiredが6月4日に報じた調査では、Metaの関連アプリに、起動していない状態の顔認識のコードが5000万台超の端末に配布されていたとされています。Metaはこれを探索的な開発であり、提供する場合は透明性をもって知らせると説明しています。また、撮影された映像が海外の人間の確認担当者に渡っていたとして、2026年3月に米国で集団訴訟が起こされ、英国とケニアの当局が調査を開始したと報じられています。Metaのグラスには撮影中を示すLEDが付いていますが、悪用しようとする者との攻防は続くとBosworth氏も述べており、運用面の課題は引き続き問われています。
Galaxy Watch 9のリーク──7月発表見込みと小幅な刷新
次に、SamsungのGalaxy Watch 9です。こちらは公式発表ではなく、リーク情報である点に注意が必要です。リーカーのOnLeaksによる設計画像がAndroid Headlinesを通じて2026年6月23日に公開され、複数のメディアが報じました。画像によると、Galaxy Watch 9の外観は前世代のWatch 8とほぼ同様で、丸い画面を四角い本体に収めた独特の形状や、つや消しの金属仕上げが踏襲されています。変更は小幅で、刷新というより洗練に近い内容とされています。
リークでは、本体サイズは40ミリと44ミリの2種類で、色は40ミリがクリームとグラファイト、44ミリがシルバーとグラファイトとされ、別のリークではベージュなどの色やバンドの新意匠も伝えられています。接続方式はBluetoothとLTEで、5G対応は含まれないとされています。中身の処理装置については論点が分かれています。SamsungはMWC 2026で、次のGalaxy WatchにQualcommのSnapdragon Wear Eliteを採用すると認めましたが、標準のWatch 9がこれを搭載するのか、上位のWatch Ultra 2に限られるのかは確定していません。複数のリークは、標準モデルが従来のExynos系の処理装置を維持する可能性にも触れており、正式な発表を待つ必要があります。ソフトウェアでは、Wear OS 7をもとにしたOne UI 9 Watchが想定され、6月8日に始まったSamsung Healthの刷新による健康機能の追加も予定されています。発表の場は、7月22日にロンドンで開かれると噂されるGalaxy Unpackedで、折りたたみ端末などと同時に披露される見込みとされています。なお、Samsungのスマートウォッチ出荷は2026年第1四半期に28パーセント減少しており、市場全体が伸びるなかでの巻き返しが課題となっています。
正式な発表に向けて注目すべき点はいくつかあります。
第一に、処理装置をめぐる論点です。標準のWatch 9がQualcommの新しいチップを採用するのか、従来の系統を維持するのかは、電池持ちや処理性能に直結するため、利用者の関心が高い部分です。第二に、Samsung Healthの刷新による健康機能が、どの機種でどこまで使えるかです。第三に、競合との位置づけです。Appleは秋に新しいスマートウォッチを投入すると見られており、両者は別々の利用環境に向けた選択肢として並ぶ構図になります。
リーク段階の情報は、あくまで正式発表前の見通しであり、最終的な仕様や価格は発表を待つ必要があります。設計の変更が小幅にとどまるとされるなかで、中身の刷新と健康機能の拡充が、買い替えを促すだけの価値を示せるかが問われます。
Android 17の展開と、AIの本格搭載は夏以降
最後に、GoogleのAndroid 17です。これは6月16日に正式版が公開され、まずPixel 6以降に展開が始まりました。コード名はCinnamon Bunです。他社の端末には年内を通じて順次提供される見込みで、Samsungなどは自社の独自層を重ねるため、提供までに時間がかかるとされています。主な新機能には、任意のアプリを浮かぶ小窓にできるBubbles、画面録画に自分の顔を重ねられるScreen Reactions、折りたたみ端末向けの分割表示によるゲームモード、紛失時に生体認証で端末を施錠できる防犯機能などがあります。生体認証による施錠は、暗証番号を知られても端末の追跡を解除できない仕組みで、暗証番号の試行回数の制限を厳しくするなど、盗難対策も強化されました。
一方で、最も注目されているAIの本格的な搭載は、6月16日の公開時点には含まれていません。Googleは、複数の手順をまたいで作業を代行するGemini Intelligenceを、今夏以降に一部の対応端末へ提供すると説明しています。これには12ギガバイト以上のメモリと2026年世代の処理装置が必要とされます。同日には、音楽生成のLyria 3や動画編集のGemini Omniなどを含むPixel向けの追加機能や、スマートウォッチ向けのWear OS 7も公開されました。Wear OS 7では、スマートフォンの通知を時計上で逐次更新する機能や、電池持ちの改善が示されています。
この一週間の動きは、AIを日常の機器に組み込もうとする各社の競争の縮図です。Metaは価格を下げて裾野を広げ、SamsungとGoogleは秋に向けて準備を進め、Appleも追随すると見られています。眼鏡、時計、スマートフォンという身近な機器が、AIを取り込む入り口になりつつあります。確定情報とリークを区別しつつ、何が実際に手に入る段階にあるのかを見極めることが、製品選びでも市場理解でも欠かせません。
参考情報
CNBC : Meta announces new smart glasses starting at $299(2026年6月23日)
CNN Business : Meta is now designing its own, cheaper AI smart glasses(2026年6月23日)
PYMNTS : Meta and EssilorLuxottica Bet on $299 Smart Glasses(2026年6月23日)
TechTimes : Meta AI Smart Glasses at $299 Debut Today(2026年6月23日)
9to5Google : Latest Galaxy Watch 9 leaks show updated design and new features(2026年6月23日)
Android Authority : Galaxy Watch 9 is looking a little familiar in freshly leaked renders(2026年6月23日)
Google : Android 17 has new features for productivity, gaming and security(公式ブログ、2026年6月16日)
TechCrunch : Android 17 launches with new multitasking tools as Google expands Gemini features(2026年6月16日)
※本稿は2026年6月24日時点の情報に基づいています。
