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真夜中のドーナツと生きる許可

今朝は、パートナーとなんでもないことで小競り合いをしてしまい、気分が塞いでいた。 起きてしまったことにクヨクヨするのは好きではないけれど、心には尾を引く違和感がざらりと残っている。

「もう、今日は自分を許そう」

こんな時こそ、ご自愛に限る。
私には、食べれば一瞬でゴキゲンになれる魔法の食べ物がある。大好きなドーナツだ。

私はお目当てを求めて、ミスタードーナツへ向かった。
話題の新作「もっちゅりん」を求めて列をなす人々を横目に、私は通常の列へ進む。お目当ては、大好きな「エンゼルクリーム」だ。

白いお粉をまとったドーナツをトングでトレイに乗せると、もう、私の心は不思議とゴキゲンになっている。 「帰ったら、パートナーに素直に謝って仲直りしよう」 不思議と、そんな風に気持ちが優しく切り替わっていた。

ドーナツは「罪」だった

かつての私にとって、ドーナツは「罪」だった。

ひとつ食べるのにも、ものすごい罪悪感を感じていた。
それを口にするときは、体型や健康に対する相当なリスクを背負うような覚悟が必要だったのだ。 ドーナツ、たった一つごときに。

それほどまでに、当時の私は自分の食生活に対しても、ストイックすぎるほどの制限をかけて生きていた。

入院中の、山盛りのドーナツ

2024年、私はそれまでの無理がたたり、限界突破を迎えて難病を患った。

幸いだったのは、3週間に及ぶ入院生活の中で、食事の制限が全くなかったことだ。病院食もおいしかったし、面会に来てくれる友人や仕事仲間は、みんな私の身体を気遣っておいしいものを持ってきてくれた。

中でも親友は、私の好きなものを本当によく分かっている。
彼女は、一人では食べきれないほどのドーナツを、たくさん選んで買ってきてくれた。

私を想って一つ一つドーナツを選んでくれただろう。その姿が目に浮かぶ。親友の真っ直ぐなやさしさが、たまらなく嬉しかった。


私はその山盛りのドーナツたちを、愛おしい使命感を感じながら、ひとつずつ大切に食べた。

真夜中に弾けた、私の呪縛

入院中、どうしても眠れない夜があった。
静まり返った病室で眠れずにいると、なぜだろう、じわじわとお腹が空いてくる。

そのとき、ふと、昼間に親友が届けてくれたあのドーナツの存在を思い出した。

「いや、でも、もう真夜中だし」 「さっき歯も磨いたし」 「こんな時間に食べたら体に悪いよね」

頭の中で、これまでの私を縛ってきた「ちゃんとしなきゃ」といういくつもの思考が、一斉にストップをかけにやってくる。

だけどそのとき、私の中で何かがパチンと弾けた。


「……もういいや!
思い切って、この夜中のドーナツを全力で楽しんでみよう」

そうなると、もう止まらない。
「コーヒーもあった方が、絶対に美味しいよね」と、マグカップと冷蔵庫に入っているスタバのアイスコーヒーを取り出す。

真夜中の病室。ひっそりと味わう、ドーナツとコーヒー。 一口かじった瞬間、頭がクラクラするほど、美味しかった。

気付いたら私は、ボロボロと涙を流しながらドーナツを食べていた。

「〇〇してはいけない」の終わり

もし、入院という強制終了がなかったら。
もし、いつものストイックな私だったら。

「こんな時間に食べちゃいけない」 「もう歯を磨いたからダメ」 「コーヒーを飲んだら余計に眠れなくなる」

たくさんの理由をつけて、私は自分の「食べたい」というピュアな欲求に、容赦なく蓋をしていただろう。

でも、あの真夜中、 「食べたいときに、食べたいものを食べていいんだよ」 という優しい風のような気持ちが、私の元に降りてきた。その温かい声を、もう二度と塞ぎたくはなかった。

親友が届けてくれたドーナツは、私の胃袋を満たしただけでなく、私の心を本当の意味で自由にしてくれたのだ。

知らない間に「〇〇してはいけない」という透明な檻を自分で作り、勝手に苦しくなっていた私。親友のドーナツは、その頑固な呪縛を、信じられないほどあっさりと解き放ってくれた。

真夜中に、泣きながら食べたドーナツのあの圧倒的な美味しさと幸福感を、私は今も忘れていない。 端から見れば「ドーナツを食べながら泣くなんておかしい」と思われるかもしれないけれど、あの夜、私は自分を縛っていた鎖をほどき、好きなものを純粋に食べる喜びを、ようやく思い出したのだ。

ドーナツは、私のお守り

あの日を境に、私の中でドーナツは「悪」から「善」へと、オセロがひっくり返るようにぐるりと変わった。 今の私にとって、ドーナツは私を無条件で幸せにしてくれる、最高のお守りだ。

だからこそ、今朝のように心が塞いだときも、私はドーナツの力を借りて、いつでも自分の軸に戻ることができる。

トレイには、お土産としてパートナーの分のドーナツも、ちゃんと乗せた。 私がゴキゲンでいれば、きっとパートナーもつられてゴキゲンになる。

ただそこに在るだけで、人を、そして世界をまぁるく癒してしまう。


ドーナツって、本当にすごくて愛おしい存在なのだ。



「ドーナツと生きる許可」の続きのお話
パジャマのままで愛されていい

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