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補装具費と日常生活用具の給付を使い分ける(対象品目・1割負担・購入前申請)

制度確認日:2026-08-14

この記事は、申請者が公式要項と自分の条件を照合し、比較、判断、必要書類の準備、申請後の管理まで進められる実務用ガイドです。金額・期限・対象・様式は改定や地域差があるため、申請時点で必ず公式ページと担当窓口に再確認してください。

2026年8月14日時点の公式確認

厚生労働省の2026年度案内で、補装具費は原則1割負担、課税世帯の月上限3万7,200円、非課税・生活保護世帯0円であることを確認しました。日常生活用具の品目・負担は市町村判断です。

この記事が整理すること

車いすや補聴器を購入したい。ストーマ用具の費用を毎月抑えたい。補装具の費用に困っているが、どこに相談すればよいかわからない。こうした状況で調べ始めると、「補装具費支給」と「日常生活用具給付」という2つの言葉が出てきます。名前が似ていても制度は別物で、根拠法も運営主体も、対象品目も自己負担の仕組みも異なります。

この記事は、障害のある方やご家族が「自分の場合はどちらの制度を使えばよいのか」「費用はどのくらいかかるのか」「何をどこに持っていけばよいのか」を実務レベルで把握できることを目的として書いています。

特に以下の点を中心に整理しています。

  • 補装具費支給制度と日常生活用具給付等事業の制度的な違い(根拠法・運営主体・対象品目の違い)

  • 補装具の対象品目一覧(義肢・装具・車いす・電動車いす・補聴器・白杖・眼鏡・義眼など)

  • 日常生活用具の6分類と代表品目(介護訓練支援・自立生活支援・在宅療養支援・情報意思疎通支援・排泄管理支援・居宅生活動作補助)

  • 対象者の要件(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳・難病患者等)

  • 自己負担の仕組み(原則1割・上限月額37,200円・非課税世帯は0円・46万円以上世帯は対象外)

  • 2024年改正のポイント(障害児の所得制限撤廃)

  • 申請の流れ(市区町村窓口→判定→支給決定→給付券→業者との契約→購入・修理)

  • 補装具の借受け制度(2018年から選択肢に追加)

  • 修理費の支給対象と手続き

  • 地域例方式:自治体ごとの品目・基準額・上乗せの実例(大阪市・高槻市・東京都区部など)

  • ストーマ装具の申請タイミング・更新手続き

  • 補聴器購入への支援(補装具費・自治体独自助成の両立)

  • 身体障害者更生相談所での判定が必要なケースとそうでないケース

  • 介護保険との優先順位(65歳以上は介護保険が優先される場合)

  • 補装具と日常生活用具の「どちらか迷いやすい品目」の判別方法

  • 難病患者が障害者手帳なしで申請する際の必要書類と注意点

  • 補装具の耐用年数一覧と「使えるのにまだ交換できない」問題

  • 借受け制度を選ぶべき状況の具体例(成長中の子ども・試用期間・病状の変化)

  • 自治体ごとの上乗せ助成・独自品目の調べ方

  • 精神障害者・知的障害者が使える日常生活用具の品目

障害のある方をめぐる福祉制度は種類が多く、名称が似た制度が複数存在するため混乱しやすいと感じています。この記事が、制度の全体像をつかみ、実際に動く手がかりになれば幸いです。

制度の全体像

2つの制度は根拠法から異なる

補装具費支給と日常生活用具給付は、どちらも障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づいていますが、根拠条文が異なります。

補装具費支給は第76条に規定されており、「身体の欠損または損なわれた身体機能を補完・代替する用具」への支援です。義肢・装具・補聴器・車いすといった、身体そのものを補う道具が対象になります。国が品目・価格・耐用年数を告示で全国統一で定めているため、住んでいる自治体によって対象品目が変わることはありません。

日常生活用具給付は第77条第1項第6号に規定された「地域生活支援事業」の一部であり、「日常生活上の便宜を図るための用具」への支援です。こちらは市区町村が独自に品目・基準額・対象者を設定する制度であるため、自治体によって内容が大きく異なります。ストーマ装具・紙おむつ・たん吸引器・特殊寝台などが対象に含まれることが多いです。

どちらも申請窓口は市区町村の障害福祉担当課ですが、制度の性質と手続きが異なるため、混同しないことが申請の第一歩です。

比較軸補装具費支給(第76条)日常生活用具給付(第77条)制度の目的身体機能の補完・代替(長期継続使用)日常生活の便宜を図る(消耗品・補助用具を含む)品目の決め方国が告示で全国統一で定める市区町村が条例等で独自設定実施主体市区町村市区町村自己負担上限月額37,200円(非課税世帯0円)市区町村が設定身体更生相談所等の判定主要品目で必要市区町村窓口の判断が主主な対象者身体障害者・障害児・難病患者等障害者全般・難病患者等

対象者の全体整理

補装具費支給の対象者は次の3区分です。

  1. 身体障害者:身体障害者福祉法第15条の規定による身体障害者手帳の交付を受けた18歳以上の方

  2. 身体障害児:身体障害者手帳の交付を受けた18歳未満の方

  3. 難病患者等:障害者総合支援法施行令第1条の疾病による障害の程度が「継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける程度」の方(手帳がなくても対象になる場合があります)

精神障害(精神障害者保健福祉手帳)と知的障害(療育手帳)は補装具費支給の対象外ですが、日常生活用具給付では対象になる品目があります。

日常生活用具給付の対象者は、市区町村が条例等で定めますが、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の所持者や、難病患者等が対象になることが多いです。品目によって対象者の要件が異なるケースがあるため、住んでいる市区町村の担当窓口に確認することをおすすめします。

自己負担の仕組み

補装具費支給の自己負担は、補装具の基準額に対して原則1割です。上限月額は、市町村民税課税世帯で37,200円(月額)と定められています。市町村民税非課税世帯および生活保護世帯は自己負担が0円です。

一方、障害者またはその配偶者のうち市町村民税所得割額の最多納税者の納税額が46万円以上の場合は、補装具費支給の対象外となります。所得の判断対象は「障害のある方ご本人またはその配偶者」のみであり、同居している親・子など他の世帯員の所得は対象に含まれない点に注意が必要です。

2024年(令和6年度)から、18歳未満の障害児については所得制限が撤廃されました。これまで同一世帯の所得割納税額が46万円以上の場合は障害児も支給対象外でしたが、2024年度からは障害児についてこの除外要件がなくなりました。18歳以上の障害者への所得制限については引き続き従来の基準が適用されています。

日常生活用具給付の自己負担は、市区町村が独自に定めます。多くの自治体が「品目の給付基準額の1割」を原則としており、非課税世帯は0円という設定が多いですが、自治体によって異なります。

【無料サンプル】耳鳴りが気になる40代男性が補聴器購入を検討するケースを全部見せます

補聴器の購入を検討している方のケースを取り上げて、補装具費支給制度を使った場合の費用感と手続きの全体像を最後まで見せます。実際には使える金額・手続きが異なる場合があります。あくまで制度の仕組みを理解するための一例としてお読みください。

想定するケース

  • 45歳の会社員男性(東京都A市在住)

  • 職場での会議や電話が聞き取りにくくなり、耳鼻科で検査を受けたところ両耳に中等度の感音性難聴と診断

  • 補聴器の使用を医師から勧められた

  • 身体障害者手帳(聴覚障害・4級)を取得済み

  • 市町村民税の課税額:12万円(世帯内最多納税者)

  • 希望する補聴器:高度難聴用耳かけ型1台、見積30万円。両耳装用も検討中だが、2個支給の必要性は未判定

ステップ1:身体障害者手帳を取得する

補装具費支給の申請には身体障害者手帳が必要です。このケースでは既に取得済みですが、まだ取得していない場合は、先に耳鼻咽喉科の専門医(指定医師)に身体障害者診断書・意見書を作成してもらい、市区町村の障害福祉担当課に申請します。

身体障害者手帳の聴覚障害の区分は次の通りです。2級(両耳それぞれ100デシベル以上)、3級(90デシベル以上、耳介に接しなければ大声語を理解し得ない程度)、4級(80デシベル以上、または語音明瞭度50%以下)、6級(70デシベル以上、40センチメートル以上の距離で発声された会話語を理解し得ない程度)となっており(身体障害者障害程度等級表・身体障害者福祉法施行規則別表第5号による)、補聴器の補装具費支給は6級を含む聴覚障害の手帳保持者が申請できます。

ステップ2:市区町村の障害福祉担当課に相談・申請

市区町村の窓口に出向き、補装具費支給(補聴器)の申請を行います。窓口では、身体障害者手帳のほか、申請書(補装具費支給申請書)、見積書(後述)が必要になります。

市区町村によっては、申請前に担当者との事前相談を設けている場合があります。「補聴器が必要になったが、補装具費支給が使えるか知りたい」と伝えれば、必要な手続きを案内してもらえます。

ステップ3:見積書を取る(業者の選び方)

補装具費の申請には、補装具業者(補聴器の場合は認定補聴器技能者のいる販売店等)が作成した見積書が必要です。市区町村によっては「指定業者」のリストを持っている場合があるため、窓口で確認することをおすすめします。

見積書には「補装具の種目・型式・価格」が記載される必要があります。申請時には正式な見積書を添付します。

都市部では補装具業者(補聴器取扱業者)の選択肢が多い一方、地域によっては自治体が代理受領・契約可能として案内する業者が限られ、遠方へ出向く場合があります。一般の補装具業者に全国一律の「厚生労働大臣指定業者」という区分があるわけではありません。見積・契約・代理受領に使える業者を市区町村の障害福祉窓口へ確認します。

ステップ4:身体障害者更生相談所(等)の判定

補聴器は身体障害者更生相談所等の判定が必要な品目です。市区町村が申請書を受け付けた後、身体障害者更生相談所に意見照会が行われ、補装具の種目・型式が支給に適切かどうかが判定されます。

東京都の場合は東京都心身障害者福祉センターが判定を担っています。判定には「直接判定」(来所して実際に機器を試す)と「書類判定」(書類だけで判断する)があり、補聴器は書類判定で対応できるケースが多いとされています。

更生相談所の判定を経て、市区町村から「補装具費支給決定通知書」が交付されます。

ステップ5:補装具費(支給金額)を計算する

補聴器の基準額は国の告示で定められています。2026年8月14日時点で公式に確認できた情報では、補聴器には種類(高度難聴用ポケット型・耳かけ型・耳あな型・骨導式等)ごとに基準価格が設定されており、この基準価格と業者からの実際の見積もり金額のうち低いほうが支給対象金額となります。

このケースでは、まず原則どおり1個支給で計算します。補聴器は原則1個で、両耳装用が就労・就学上真に必要と判定された場合に2個支給が可能です。本人が両耳を希望するだけで基準額を自動的に2倍にはしません。

厚生労働省の補装具一覧(令和8年4月1日現在)では、高度難聴用耳かけ型の購入上限価格は1個46,400円です。付属品・専門的調整の加算を含めない1個支給の単純例では、基準額46,400円と実見積30万円を照合します。確認元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/yogu/index.html

1個支給の単純例では、基準額46,400円の1割=4,640円が基本負担です。実売価格30万円との差は300,000円−46,400円=253,600円で、この超過差額は全額自己負担です。

まとめると、原則1個での計算は次のとおりです。

  • 市区町村の公費負担:46,400円×9割=41,760円

  • 利用者の基本負担:46,400円×1割=4,640円

  • 基準超過差額:300,000円−46,400円=253,600円

  • 利用者合計:4,640円+253,600円=258,240円

参考として、更生相談所等・市区町村が「就労上、両耳装用が真に必要」と判定し、2個支給を決定し、両耳合計30万円の別見積を採用した場合に限り、基準額92,800円、公費83,520円、利用者216,480円(基本負担9,280円+超過207,200円)となります。判定前にこの両耳計算を受給見込額にしません。基準額の範囲内で1個を選ぶ単純例なら基本負担は4,640円です。

また、この世帯の市町村民税課税額は12万円で、月額上限の37,200円は年間約44.6万円分に相当しますが、補装具費支給は原則として購入ごとの単発の支給(消耗品の毎月給付ではなく、耐用年数ごとの購入・修理への支給)であるため、月額上限が直接この計算に影響するケースは少ないです。

ステップ6:給付券を業者に持参して購入する(代理受領方式)

支給決定後、市区町村から「補装具費給付券」が交付されます。業者に給付券を提示して購入します。

支払い方法は2種類あります。

代理受領方式の場合:業者が委任状に基づき市区町村から直接(自己負担分を除いた)補装具費を受け取ります。利用者は1個支給のこの例では4,640円+差額253,600円=258,240円を業者へ支払います。手続きが簡便なため、多くの場合この方式が使われます。

償還払い方式の場合:利用者が全額30万円を業者に支払い、給付券と領収書を市区町村に提出して、後日公費負担41,760円が支給されるため、最終負担は258,240円です。先に全額を準備する必要があります。2個支給決定済みの別例では、決定額・見積額に応じて別計算します。

ステップ7:5年後の補聴器交換を見据える

補聴器の耐用年数は5年です。5年が経過する前に壊れた場合は「修理費支給」の申請ができます。修理でも改善しない場合は、状況によって耐用年数内でも再支給が認められる場合があります。

5年を超えた後に補聴器が使えなくなった場合は、改めて補装具費支給(購入)の申請をします。聴力の変化がある場合は、更生相談所での再判定が必要になります。

このケースの「気づき」を整理すると

このケースから読み取れる実務上のポイントは以下の3点です。

1つ目は、基準額を超えた分は全額自己負担という点です。制度は「基準額の範囲内で1割負担」という仕組みのため、高額な機種を選んだ場合には自己負担が想定以上に大きくなります。まず基準額の範囲内の機種で十分かどうかを業者に相談してから、上位機種の検討に移る順番が合理的です。

2つ目は、購入前の申請が必須という点です。補装具費支給は原則として購入前に申請・支給決定を受ける必要があります。先に購入してしまうと補装具費支給を受けられなくなる可能性があります。「気に入った補聴器を買ってから申請しよう」という流れは原則として認められません。

3つ目は、自治体独自の補聴器助成との組み合わせの可能性です。障害者手帳の対象外となる軽度・中等度難聴の高齢者を対象に、自治体独自の補聴器購入助成を設けている市区町村が増えています。大阪市では身体障害者手帳(聴覚)の対象外の65歳以上の方を対象に最大25,000円の助成を行っています。障害者手帳を持ちながらも補装具費支給の基準額を超える部分への補填を狙った独自助成を設ける自治体もあるため、住んでいる市区町村の窓口で「補聴器の独自助成があるか」を確認することをおすすめします。

ここから先は、申請に直結する実務です。

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