【講演】姫路市のSNS・AI時代のファクトチェック実践ゼミに登壇しました
2026年7月11日、真夏の熱気に包まれた兵庫県姫路市の生涯学習大学校。
日頃お世話になっている姫路市総合教育監の加藤聡さんにお声がけいただき、講師として登壇してきました!



103教室に集まった受講生たちの眼差しは、外の暑さに負けないほど真剣でした。

この日開催された「SNS・AI時代のファクトチェック実践ゼミ」。
5時間のワークショップです。
僕は後半の登壇者として参加しました。
詳細はこちら↓
イベントの進行は加藤さんがやってくださいました。

【前半】「5割の人が嘘を信じる」衝撃の現実——善意が牙を剥くSNS・AI時代の3つの新常識
前半の講師を務められたのは、日本ファクトチェックセンター(JFC)のトレーナーであり、読売テレビ放送の報道デスクでもある金崎浩さん。
情報の最前線に立つ金崎さんのお話に、僕も一人の教育者として深く頷かされました。

新常識①:直感は、もはや「嘘」を防ぐ盾にならない
共同調査(『Innovation Nippon 2024』)では、偽・誤情報に接触した人の51.5%がそれを「正しい」と信じている現実が明らかになりました。
わずか15項目のデマだけでも約4割の人が接触しており、現代において「デマを見ない」ことは不可能な状況です。
「自分は騙されない」という直感は通用しません。

新常識②:善意のシェアが、誰かを傷つける「凶器」に変わります
情報を広めるのは、悪意ある作成者だけではありません。
「役に立ちたい」「怒りを共有したい」という純粋な善意や熱狂から、深く考えずに拡散してしまう「共有者」こそが情報汚染を広げています。
僕たちも一歩間違えれば、いつでも加害者になり得るリスクを背負っていると感じました。

新常識③:AIは「答えを生成する道具」ではなく、「根拠を検証する相棒」です
AIの嘘(ハルシネーション)を防ぐ鍵は、信頼できる一次ソースを読み込ませてその範囲内だけで分析させる「グラウンディング(根拠付け)」。
AIに答えを委ねるのではなく、自分が持ち込んだ情報の真偽を効率よく精査するためのパートナーとして活用すべきだと考えました。
結び:立ち止まる勇気を

情報に溢れる現代を生き抜くためには、シェアする前に一瞬立ち止まり、「なぜこれを信じたのか」と自問するクリティカルな思考が不可欠です。
その数秒の「立ち止まる勇気」が、大切な人と社会を守る防波堤になるのだと感じました。
【後半】情報の海で溺れないための「私だけの書斎」:GeminiとNotebookLMでAIを最強の味方にする方法

AIは「万能の神」か「不確かな道具」か?
「AIをどう使いこなせばいいのか分からない」
「もっともらしい回答を返してくるけれど、本当に信じていいのだろうか」――。
急速に進化するテクノロジーを前に、私たちはそんな不安と好奇心の狭間に立っています。
しかし、AIを「正体のわからない魔法」として恐れる必要はありません。
静岡サレジオ高校での実践例――インドネシアの高校生との共同制作やプロジェクションマッピング――が示すように、テクノロジーは本来、私たちが世界とつながり、日常をより豊かに、快適にするための「便利な道具」です。

今回の講演では、AIを単なる効率化のツールではなく、信頼できる「日常の味方」へと変えるための、インサイトに満ちた活用術を紐解きました。
ポイント1:AIの能力は「主人の器」で決まる
AIを使いこなす上でまず理解すべきは、人間とAIの主従関係です。

ここで、古代ローマの哲学者エピクトテスの寓話を引用しましょう。

エピクトテスは奴隷の身でありながら、その知性は主人を遥かに凌駕していたと言われています。

「AIを『賢い奴隷』、人間を『主人』に見立てる。
AIの能力を引き出すのは主人の器次第である」

なぜ「主人の器(リテラシー)」がこれほどまでに重要なのでしょうか。
それは、AIが言葉の意味を人間のように「理解」しているわけではないからです。
AIの正体は、膨大なデータから「次に続く確率が最も高い単語」をパズルのように繋ぎ合わせる仕組みです。
例えば「ラーメン」の次には「餃子」という言葉が来る確率が高いと判断しているに過ぎません。

この仕組みゆえに、AIは時として「ハルシネーション(もっともらしい嘘)」をつきます。

どんなに優秀なアシスタントでも、主人の指示が曖昧であれば、その真価は発揮されません。
AIを「万能の神」として盲信するのではなく、あくまで「優秀な下書き係」として扱い、最終的な真偽を人間が見極める。
この「主人の構え」こそが、AIの能力を最大化させるのです。

ポイント2:「情報の海(Gemini)」と「安全な机の上(NotebookLM)」の使い分け
現代という情報の荒波を乗りこなすには、Googleが提供する2つのAI、GeminiとNotebookLMを、目的という「航路」に合わせて使い分けるのが賢明です。

Gemini:未知の世界を探索する「冒険船」
最新のウェブ情報にリアルタイムでアクセスできるGeminiは、広大な情報の海をゆく船のような存在です。
「今週末のイベント情報」や「新しい企画のアイデア出し」など、外の世界から新鮮な刺激を取り込むのに最適です。
ただし、海には荒波があるように、ハルシネーションというリスクも伴います。NotebookLM:静かに思索にふける「私だけの書斎」
対照的にNotebookLMは、自分が指定した資料だけを知識源とする、極めて安全なデスクです。
外部のノイズを遮断し、信頼できる資料のみが置かれた「書斎」で、専属の秘書と一緒に情報を整理するような感覚です。
参照元が限定されているため、嘘をつくリスクが極めて低く、深い集中と正確さを約束してくれます。

情報の「広さ」を求めて外海へ出るならGeminiを。
情報の「正確さ」を求めて自分の思考を深めるならNotebookLMを。
この使い分けが、情報過多の時代を生き抜くためのライフハックです。

ポイント3:一瞬で「根拠」に辿り着く、NotebookLMの圧倒的な安心感
NotebookLMが「安全な机の上」と言われる最大の理由は、回答のすべてに「出典番号」が付与される点にあります。

AIの回答にある番号をワンクリックするだけで、元資料の該当箇所へ瞬時にジャンプできます。
これにより、「証拠を探すのはAI、その証拠をもとに判断を下すのは人間」という、最も効率的で安心感のある分業が可能になります。
さらに、驚くべきは「Studio機能」による変換能力です。これが私たちのライフスタイルを劇的に変えてくれます。

ポッドキャスト風音声解説: 難解な資料を、親しみやすい対話形式の音声に変換。満員電車の通勤時間が、自分専用のオーディオブックを聴く「贅沢な学びの時間」に変わります。
スライド生成(.pptx): 資料の内容を構造化し、構成案を即座に作成。資料作りの「0から1」の苦しみから解放され、よりクリエイティブな「構成のブラッシュアップ」に没頭できるようになります。
FAQ・フラッシュカード: 要点を抽出してQ&A形式に変換。膨大な資料の中から「何が重要か」を、自分で探し回る必要はもうありません。
ポイント4:AIが作る「余白」を、人間にしかできないことに使う
AIによって業務が効率化され、時間が短縮される。
その先に待っている本当の価値とは何でしょうか。

効率化の目的は、単に仕事を早く終わらせることではありません。
AIが証拠探しや下書きを引き受けることで生まれる「時間」は、私たちがより人間らしくあるための「余白」です。

静岡サレジオ高校の実践でこだわっているのは、テクノロジーを使って効率化した先に、生徒一人ひとりの表情をじっくり見る余裕が生まれ、多文化共生の深い対話が可能になるということです。
相手の感情に寄り添うこと。
誰かと信頼関係を築くこと。
誰かの体温を感じ、心を通わせること。
これらは、どれほどAIが進歩しても代替できない領域です。
効率化の先に待っているのは、単なる暇つぶしではなく、誰かのために心を使うための豊かな時間なのです。
結論:AIを使いこなす「両輪」を持って未来へ
AI時代をより良く生き抜くためには、2つの「車輪」が必要です。
一つは、GeminiやNotebookLMを便利な道具として自在に操る「活用する力」。
もう一つは、情報の真偽を冷静に見極める「ファクトチェック・リテラシー」。
この両輪を揃えることで、AIはあなたの可能性を広げる最強のパートナーとなります。

AIは万能ではありませんが、あなたの「器」次第で、日常を劇的に快適なものへと変えてくれるでしょう。
AIがもたらす効率化の恩恵を、私たちは何に投資すべきでしょうか。
あなたはAIが生み出した「余白」という時間を、誰のために、何のために使いますか?

