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副業:街の小さな駐車場(第13話・最終回) 一 手放すことから、次が始まる -


🌿 静けさの中にあった違和感

すべてが順調に思えた。
月極もコインパーキングも、ここ1年は安定して動いていた。

けれど、早春のある日、
小さな違和感を覚えた。

金融機関の関係者が訪ねてきたり、経営の状況をそれとなく聞かれたりもした。

自分には関係ない——そう思っていました。
しかし、その変化は、
やがてこの土地にも静かに及んでいくことになります。


💬 古い縁に背中を押されて

きっかけは一本の電話でした。
長く関わってきた会社が資金難に陥り、
再建のための協力を求められたのです。

家族もその会社に縁があり、いくばくかの株主でもある。
私自身も、長年の信頼の中で支えてきた相手でした。

見て見ぬふりはできませんでした。
けれど、その決断が、
思わぬ方向に影響を及ぼすことになります。


⚖️ 努力が裏目に出た

かつては雑草が生えるだけの空き地でした。
私はそれを整え、コインパーキングとして生まれ変わらせた。

舗装し、照明を設け、看板を立てる——
それだけで土地の価値はずいぶんと上がりました。

しかし、その“価値の上昇”が裏目に出ました。

金融機関はその土地を高く評価し、
再建資金を借りるための担保(抵当権設定)(※1) として差し出すことになったのです。
そして、月極駐車場の一部までがその範囲に含まれました。

そして、皮肉にも、私が不動産の法律に詳しすぎたことも——影響してしまった。


🧾 なぜ月極まで巻き込まれたのか

理由は単純でした。
建物がない土地は、処分しやすい。

住人の退去や解体の手間もなく、
売るときも更地に近い状態で引き渡せる。
つまり、金融機関から見れば“動かしやすい資産”なのです。

共同担保とされたわけです。


ただ、ここは共有名義の土地でもあり、
担保に差し出すためには、
家族を一人ひとり説得しなければなりませんでした。

同意を得るまでには時間もかかり、
その過程で何度も話し合いを重ねました。


私にとっては長年の副業であり、
街の人たちに使われてきた小さな空間でした。
けれど、評価の基準は情ではなく、数字でした。


💬 信頼と不義理のあいだで

さらに追い打ちをかけたのが、
相手の会社の経営悪化です。

思っていた以上に財務は深刻で、回復の見通しは立たず、
やがて連絡も途絶えがちになりました。

「助けてください」と言っていた相手が、
今度は沈黙で応えるようになった。

その沈黙が、言葉よりも重く感じられました。
不義理というのは、
お金よりも人を傷つけるものだと、そのとき実感しました。

もちろん、そこはビジネスライクに対応します。
きちんと借りは返していただく。


🪙 担保に取られた土地の行方

金融機関はまだ権利を実行してはいません
けれど、現状を見れば、
いずれ売却に動く可能性は高いと思っています。

つまり、
この駐車場を失う日は、
そう遠くないのかもしれません。


💭 それでも残るもの

思えば、何もない土地を整備し、
仕組みをつくり、
街の中に小さな役割を与えた。

その経験は、もう誰にも奪えません。

  • 契約の流れを読む力

  • 設備投資の判断

  • 管理と報告の整理

  • そして、人に任せても「動きが見える」仕組み

それらは、すべてこの駐車場が教えてくれたことです。


🌇 手放す勇気と、始める力

失うことは、終わりではありません。
必要に迫られて手放すとしても、
その先でまた始められる。

この数年間で、私はどこででも事業を立て直せる力を得ました。
地図の上の一点に縛られず、
知識と仕組みを持って歩けるようになったのです。


🌿 終わりに

副業とは、もう一つの収入を持つことだけではなく、
もう一つの支え方を持つこと

土地が失われても、
得た知識と経験は消えません。

静かな覚悟を胸に、
私は次のステージへ向かいます。

もちろん、この件をただで済ませるつもりもない。

この数年の経験が、
誰かの“始める勇気”につながれば幸いです。

これは、あらゆる場面に通じる原理でもあります。
ノウハウさえあれば、人も場所も、何度でも立ち上がれる。


✍️ あとがき

この連載は、私自身の実体験をもとにした「記録」であり、
同時に、過去を静かに見つめ直すための「再生の物語」でもありました。

すべてを書きながら、私は自分の中で整理していたのかもしれません。
土地も、人も、時間も、思いどおりにはいかない。
それでも、どんな状況でも「動くこと」を選んできた

それが、このシリーズの核心でした。

読んでくださった皆さんへ。
この作品を通して、誰かの行動のきっかけや、
“もう一度やってみよう”という小さな勇気につながれば、
これ以上の喜びはありません。

ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
スキやフォロー、コメントで応援してもらえると嬉しいです。


前回はこちら👇


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※1 担保(抵当権)とは
金融機関などが貸したお金を回収できるように、
「返済が滞った場合、この不動産を売って回収してよい」という権利のことです。
実際に売却手続き(競売)に進むことを「抵当権の実行」と言います。

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