三相交流の√3の正体
三相交流の√3、どこから出てくるの?
こんにちは、電工仙人です。
三相交流の計算問題を解いていると、必ずと言っていいほど√3(≒1.73)という数字が出てきます。線間電圧を求めるにも、三相電力を求めるにも、とにかく√3をかけたり割ったり。「なぜこの半端な数字が毎回顔を出すのか」——今日はその正体を、水のたとえを使いながら追いかけてみましょう。
■ 三相交流は「3本の水路」で送る仕組み
家庭で使う単相交流は、いわば1本の水路で水(電気)を送るイメージです。これに対して三相交流は、3本の水路で同時に水を送る方式です。
ただし、この3本は水の出るタイミングが少しずつずれています。1周期(波1つ分)を3等分した、120度ずつのずれです。1本目の水路がピークのとき、2本目と3本目はまだピークに達していない——これを絶えず繰り返しながら、3本まとめて電気を送り届けています。このタイミングずらしのおかげで、3本合計の送電能力が高くなり、モーターのような大きな負荷も無理なく回せるのが三相交流の強みです。
■ Y結線とΔ結線、電圧・電流の関係が変わる
三相の負荷や発電機のつなぎ方には、大きく分けてY結線(スター結線)とΔ結線(デルタ結線)の2種類があります。
Y結線は3本の水路を中心の1点(中性点)に集めてつなぐ形、Δ結線は3本を輪のようにぐるりとつないで三角形にする形です。このつなぎ方の違いによって、線電流と相電流、線間電圧と相電圧の関係がそれぞれ変わってきます。
Y結線:線電流 = 相電流、線間電圧 = 相電圧 × √3
Δ結線:線電流 = 相電流 × √3、線間電圧 = 相電圧
相電圧・相電流というのは、1本の水路(1相分)だけを見たときの電圧・電流。線間電圧・線電流というのは、外から測定器を当てたときに実際に読み取れる、水路と水路の間の電圧や、水路そのものを流れる電流のことです。同じ電気を見ているはずなのに、Yなら電圧側に、Δなら電流側に、必ず√3が顔を出す構造になっています。
■ なぜ√3という半端な数字になるのか
ここが今日の核心です。Y結線を例に考えてみましょう。
3つの相電圧は、大きさが同じで、位相(タイミング)だけが120度ずつずれた波です。線間電圧というのは、隣り合う2つの相電圧の「差」にあたります。同じ大きさの波を2つ持ってきて、タイミングを120度ずらした状態で差を取ると、単純な足し算・引き算にはならず、波の合成(ベクトル的な計算)が必要になります。
この120度という角度で波を合成すると、答えの大きさはちょうど相電圧の√3倍になる——これが三角関数の性質から導かれる結果です。120度という位相差が三相交流の設計そのものに組み込まれているため、電圧や電流を合成するたびに、必然的に√3という数字が姿を現すのです。逆に言えば、√3は「何か特別な部品や現象」から来ているのではなく、3本を120度ずつずらして送るという三相交流の仕組みそのものの副産物というわけです。
■ 三相電力の公式にも√3が入る
この√3は、電力の計算にも登場します。三相交流の電力は次の式で求められます。
三相電力 P = √3 × V(線間電圧) × I(線電流) × cosθ
たとえばY結線で線間電圧200V、線電流11.5A、力率1(cosθ=1)の負荷なら、P = √3 × 200 × 11.5 × 1 ≒ 4000W(4kW)、という具合です。単相の電力計算(P=VIcosθ)に見慣れていると、いきなり√3が割り込んでくるので戸惑いますが、正体が分かれば「ああ、また120度のあの話か」と納得できるはずです。
■ まとめ
三相交流は3本の水路(相)で、120度ずつタイミングをずらして送る方式
Y結線は電圧側に、Δ結線は電流側に、それぞれ√3の関係が現れる
√3の正体は、120度ずれた波どうしを合成した結果として出てくる数字
三相電力の公式 P=√3VIcosθ にも、同じ√3が組み込まれている
次に計算問題で√3を見かけたら、「120度のずれが姿を変えて出てきただけ」と思い出してみてください。急に取っつきやすく感じられるはずです。
📘 好評発売中!『中学生でもわかる 第一種電気工事士 筆記試験』(電工仙人 著)第2章では、このY結線・Δ結線の√3の関係と、そこから電圧降下・V結線・短絡電流まで、計算問題の「型」としてまとめて整理しています。
▼Amazonで見る
今日の話が「へぇ」と思えたら、ぜひスキ・フォローをお願いします。次回もこういう電気の小ネタをお届けします。
