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幸福に満たされて【16】

ここの病院の
道を挟んだ所に
何階建てか忘れましたが
マンションが建っていました

そのマンションの
住人さんは
ご自分で動くことが
出来る人はほぼおらず

一部屋に
お二人がベッドの上で

新築の
美しいマンションの中で
過ごされているのです

初めて
紹介された時は
衝撃が走りました

ですが
ご家族にとっては
毎月の施設利用代や
食事代等において
親切な設定となっていたことは
なんとなく覚えています

私は病棟よりも
そちらのマンションでの
勤務の方が多く

毎日
ケアワーカーさんとの
情報交換や
入所者の方(話せる方とそうでない方)とも
時間の限り
業務とコミュニケーションを
とれるようにこころがけていました

最初は
緊張していましたが
少しずつ皆さんとも
打ち解けるように
なっていきますが

どうしても
ケアの優先順位で
動きますので

元気な方は
それほどかかわることが
ありませんでした

あるお部屋に
伺うようになったのは
その方の末期が
近づいてきていると
申し送りがあったからでしょうか

それだけはなく
ご家族は入所の手続きだけして
ほぼ完全放置の
状態であるというのを
聞いたいたせいも
あったからだと思います

何の問題もなく
コミュニケーションが
とれるレベルの方です

一人は寂しいだろうと思い
声を掛け始めました

「一体何しに来てるのさ」
「用事もないんだから」
「さっさと行きな」
というような一発目の言葉でした

これはきっついわ
家族も来ねえわ
と思いました

ただ
めげるわけには
いかないのです

勤務の度に
一言でも二言でも
話しかけ始めると
はじき返すような
荒っぽい言葉ですが
返事が返ってきますし
会話は続くのです

口が悪い同志の
会話ですから
他のケアワーカーさんから見たら
あるまじき対応だったと思います

その方は吉川さん(仮名)
といいます

やがて
吉川さんは
体調がすぐれなくなり
病院の方へ入ってこられました

個室対応です

トントントン「失礼しまーす」
「吉川さんこっちに来ちゃったの?」
「体調どう」

「そんなの見た分かるだろう」

「元気そうでよかったまたね」

という感じで
私はマンション勤務の途中や
終わってから
病棟の個室へ
度々赴いていました

ある時は
目をつぶったまま返事もなく
私の声だけが病室に小さく響き
ドアを閉める日もでてきました

もう
このまま逝ってしまわれる
のかと思っていましたら

吉川さん元気になってるみたいよ
と聞き
急いで
トントントン「失礼しまーす」
「元気になったんだってよかった」

「なにがいいんだよ」
「このざまだよ」
みたいなことを言われて

笑顔を返し
それでも
「元気になって良かったじゃん」
という以外言えませんでした

数日後
吉川さんは息を引きとられました

私は
マンションの
業務がありましたので

業務が終わり
病院に戻ってきてから
綺麗なお顔の吉川さんに
挨拶をしました

休憩室で
スタッフと話している時に

もう一度
きちんとご挨拶をしようと
吉川さんが
休まれている個室へ
伺いました

トントントン「失礼します」
ドアを閉じて
吉川さんの側へ行きました



それは
ゆっくり
静かに始まりました

まず
穏やかな気持ちになります
何かは分からないのですが

天井から
天井の全てから
金色の粒子が
降って来るのです

何事が起きているんだろうと
最初は
天井を見たりしているのですが
部屋一面が
天井から
下1メートル位
金色です

何この気持ちいいの

こんなこと
感じたことない
優しい気持ち
しかも
この上なく気持ちがいいのです
穏やかなんです

そうしたら
天井から降り注ぐ
金色の粒子が渦になり
私の背中へ纏ってきました

イメージですが
人の形になっていきます

吉川さん
なにこれ!
あたしにおんぶしてんの?

そっか
みんなの所に挨拶に行こうか!

吉川さんは
みんなに
お礼が言いたいのかもと思い
吉川さんをおんぶして
休憩室まで行きました

二人スタッフがいて
一人は
霊感を感じやすい人だったので

「吉川さんいるじゃん」
って言ってもらえれば
私おかしなこと
していないよねって
思えたのですが

吉川さんの
思い出話はしていましたが
二人とも何も言わなかったので

心の中で
「ねえ挨拶できた?」
「良かったね」
「最後この人達に綺麗にしてもらえて」

私も
目の前の二人に
ありがとうと
心でお礼を言って

「いい?お部屋かえるよ」と
個室に戻り
もう一度吉川さんに
手を合わせ
頭をさげました

ばいばい
よかったね

私も
こんな素敵な思い
させてもらって
本当にいい気持ちだった
ありがとうございました
とドアを閉めました

これは
私一人の
体験ですので
立証できないんです

ただ
テレビですごい人が
金粉を手にだしたりしますよね

だから
金の粉が降ってきても
おかしい訳でもなく

そしたら
私が
金の銅像みたいになっていないと
おかしいのですが

金の粒子は
吉川さんを
形成する道具
みたいなもんで

吉川さんを
おんぶした時には
消えていますし

重くもないので
でも
ただただ
なんだか気持ちがいいんです

あの口の汚い
人を罵るように言葉を
ふっかけてくる吉川さん

本当は
優しいがいっぱいあったけど
うまく出せない
恥ずかしがりやさん
だったんだなと思いました

これを書いていて
なんなら
マンションの
ケアワーカーさんの所にも
行けば良かったのかなと
今更反省したりして

本当に
ありえないくらい
幸せな時間を
ギフトとして頂きました

伝えたい思いは
波長が合えば
受け取ることが出来る
ということを
お伝えしたいです

もっと言うと
その方が
お亡くなりになっていることを
知らない方が
生身の人間として
出会える確率は
上がるのかもしれません

人生で
この上ない安らぎと
心地よさとは
こういうものだよと

教えてくださった
吉川さんに
心からお礼を
伝えたいと思います

これを読んでくださった方
ありがとうございます

お亡くなりになった方は
伝えたいことがあると思います

吉川さんは
ありがとうを
伝えてくれました

何故そう思うのか

よく深い私は
もしかしてと
次も期待するのです

このことで
吉川さんとの出来事も
その次おきる出来事で
本当だと確信が持てたのです

今日は素敵な事だけで
しめくくります

皆様に心落ち着く
穏やかな時間が流れますように

聞いてくれたあなたに
『いいこ いいこ』

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