50代の暮らしで考える|古い家具と、巡り合うということ
寝室で大好きな収納があります。今思えば、探して見つかるものではなかったのかもしれません。
ベッドやサイドテーブル以外に、唯一置いている家具が、リネンキャビネット。ガラス扉のついたアンティークの家具は、ベッドリネンを収納するのにぴったりのサイズです。我が家に来たのは、他の家具に比べると比較的最近のこと。でも、以前のオーナーさんには長年、大切に使われてきた素敵な家具です。
日本では、布団類は押し入れに収納するという習慣が元々あります。それと似たように、欧米にはリネンクローゼットというものがあります。寝室のある階の廊下に備え付けてあったり、寝室そのものに家具が置かれることが多く、ベッドリネンや予備のタオル、毛布などをしまうための一家にとって欠かせない収納です。

扉を開けると、洗いたての柔らかなシーツやカバーが畳んで並んでいて、ラベンダーのサシェからふわりといい香りが広がる。ベッドリネンは、寝室のインテリアの中でも大きな存在です。色や素材にこだわる分、そのクローゼットの中も、暮らしを映す小さな美しい空間でもあります。
ベルギーで暮らしていた20代の頃、ブリュッセルにあったあるインテリアショップで見た、リネンがたくさん入ったガラス扉のキャビネットのことを、今でもよく覚えています。ガラス越しに見えるリネンの佇まいに、心が奪われたこと。年季の入った家具の風合い。ベッドリネンのファブリックの色や質感。どこか、優しく、美しい時間がそこだけ流れているようなシーンでした。
正直、シーツや布団カバーは、衣装ケースにまとめてクローゼットに収めるだけでも十分かもしれません。日本には、そういった便利な収納グッズがたくさんあるのだから、すっきりとしまえるものです。でも、あの佇まいへの憧れは、ずっとどこかに残り続けていました。できればアンティークや古家具がいい。心の中の「いつか欲しいものリスト」に25年以上残ったままでした。

そう思いながら、時々探してもみました。でも、これという出会いは、なかなかありません。古い家具であること、ガラス扉がついていること。そしてベッドリネンが収納できるぐらいのサイズでありながらも、寝室に圧迫感が出るほど大きすぎないもの。たまに良さそうなものを見つけても、値段の面で踏み切れなかったり、どこか少し違ったり。急ぐものでもないから、いつか、と思い続けて、何年も経っていました。
6年ほど前のそんなある日、妹からLINEが届きました。
同じマンションに住む高齢の女性が施設に入ることになり、長年大切にしてきたアンティークや骨董品を、引き取ってくれる人を探しているとのこと。「家具は十分あると思うし、合わなかったら断っても良いけれど、アンティークとかが好きなのを知っているから念のため聞いてみようと思って」
我が家に迎えるとは別に、どのようなものがあるか興味があったので、もちろん見てみたいと返事し、素敵な家具のたくさんの写真が送られてきました。その中の一枚に目が留まりました。ガラス扉のキャビネット。すぐに妹に返事をし、寸法を確認すると、サイズはぴったり。

届いたキャビネットは、思い描いていた通りのものでした。前のオーナーさんがどのように使われてきたのか分かりませんし、この家具の歴史もわかりません。いつどこで作られたのか。でも、なんとなく日本っぽい。和洋折衷家具かな、と思いました。歴史は不明でも、感じられたのは愛情。きっと、何十年も大切に使われてきたこと、そしてそのオーナーさんのものになる前も、もしかしてまた別の人が大切にされていたのかも。そこが古いものの魅力でもあります。
キャビネットを置き、中にベッドリネンを入れた瞬間、部屋に溶け込み、まるで最初からここにあったかのよう。
こういう家具ほど、探している時には見つからないものですよね。我が家にある他のアンティークや古いものも、ほとんどがそう。いつ、どこで、どんな状況で出会ったか、覚えています。その物語も、家具の魅力の一部、そして奥深いインテリアをつくりあげる大切な要素なのだと思っています。
20代の頃からの憧れが、50代でこんな形で叶うとは、思いもしませんでした。
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以前、Houzz Japanで連載していた頃、リネンクローゼットについて書いた記事があります。海外の素敵な事例も、よければあわせてご覧ください。
家じゅうのタオルやシーツをすっきり収納。リネンクローゼットのすすめ
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ヘザー・ブラッキン
インテリアデザイナー・コーディネーター
好きなものに囲まれた、自分らしい暮らし。日本とヨーロッパのエッセンスで、あなたの空間づくりをお手伝いしています。
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