詩 天と地の差
渋谷駅の、新南改札の側にあるベンチに座って、うなだれている。
雨が降っている。ビルの内壁の向こうでは、雨がどんよりとした色をして降っている。
どんどん調子が悪くなってきそうだ。
ここは静かで、うなだれるにはうってつけだ。
気を落としてこうして座り続けていると、自分の人生は何だろうかと思ってしまう。
今まで頑張って生きてきたのに、結局どうにもならなかった。何も手に入らなかった。居場所などどこにもない。
どこにもよすががないから、このベンチが代わりになる。
とはいえ、人生の意味において代替にならないことは分かっている。結局どこにも行けないまま、ある種の流浪人として、ここに座っているしかない。
ふと、白人男性が横を通った。
自分の惨めな心とは全く違うほど、身なりが整っている。
男はその先にあるエスカレーターを上っていく。
この先には、googleの本社がある。この男は、googleの社員なのだろう。男はどんどん遠ざかっていく。
ずっと見つめていた。身体に力が入らないまま、薄暗い心を抱えた瞳でずっと、男の姿を追っていた。
男の背は堂々としていたような気がするが、しかしなぜか、寂しいように思えた。
雨の日の影が一層男の背を覆っていく。男は影を背に抱えたまま、どんどん上へと行く。やがて天井の壁に遮られて、見えなくなった。
一体、どこで人生に大きな差が生じてしまったのだろうか。
自分はこの薄暗い地上で、泥臭い人生を送っている。地獄のような薄暗さに満ちた世界で、心の中に泥土が溜まったような重苦しさを抱えたまま、このベンチでうなだれている。
しかしあの男は、上へ上へと行く。
一体どこで、どうしてこんなに、大きな差が生じてしまったのだろうか。
きっと男は天国に行ったのだ。デジタルの雰囲気に包まれた、透明な天国の世界へと上っていったのだ。
そこにはクラウドの透明な雲が広がっていて、そこでは絶えずデジタルの電子音が飛び交っている。
透明な天上の世界では、あまりにも繊細で、現実の匂いを全く感じられない精巧な花々が咲き乱れている。
デジタルの天上の世界は、地上の泥臭さが一切ない、清潔感で包まれた透明な世界だ。
自分もこの、クラウドの雰囲気に包まれてみたいものだ。自分もこの雲上の世界の一員だと、思ってみたい。
しかしそれは不可能だ。もうあまりにも、差が出来てしまった。
この先にあるはずの天国に手を伸ばそうと思っても、決して届かない。
この天国は泥臭さを受け付けない。門の先には行けない。
自分は一生、雨降りの泥臭さの雰囲気を抱えて生きていかなければならない。
虚しくなってきそうだ。一体どこで人生を間違えてしまったのだろうか。なぜこんなにも、差が開いてしまったのだろうか。
