万葉の人たちに思いを馳せる
初心者向けの万葉集の本を読んでいる。
万葉集は七世紀後半から八世紀後半にかけて
編纂された我が国最古の歌集である。
全二十巻に四千五百首の歌が収められており、
作者は天皇から農民までという幅広い階層で、
詠まれた歌も東北から九州の日本各地に及ぶ。
万葉集の歌はすべて漢字で書かれているが、
私が読んでいるこの本ではかながふられており、
読むことはできるが正しく意味を知ることは難しい。
学生時代にもっと勉強しておけばよかったと悔やむばかり。
それでも現代語訳されているので意味がわかってくる。
しかも時代背景や人間関係も解説されている。
この本で紹介されている歌は約百四十首、
古来より親しまれているという歌ばかりである。
人を愛する歌の相聞歌や人の死を悼む歌の挽歌など、
これらを読み進めると万葉の人々の心がわかってくる。
ああ、日本人は昔も今も変わらないのだと感慨が沸き上がる。
いや、いまよりももっと人を深く愛していたことがわかる。
中大兄皇子とその弟の大海人皇子に愛された額田王の歌。
中大兄皇子はやがて天智天皇となって額田王を后にする、
大海人皇子は兵を挙げ天智天皇を滅ぼして天武天皇となる。
壬申の乱を起こし起こされた彼らの歌も悲哀に満ちている。
争いは世界中いつの時代も美しい女性が絡んでいるのだと思う。
さらには世継ぎ問題が争いを激化させるのだということも。
天武天皇の皇后が持統天皇となり藤原京を興す。
天皇が女性であってもいいのだと大いに頷き、
神々しい愛子様が天皇になったらなんといいことかとも思う。
皇族に使える宮廷歌人である柿本人麻呂の歌を知り、
遠き太宰府に赴任させられた大伴旅人や山上憶良の歌に感嘆する。
愛する人を失い酒に酔いしれる哀しさはしみじみよくわかる。
大学時代に日本文化史の課外授業で奈良に行った。
法隆寺や薬師寺などを見て建築や仏像を学んだが、
あのときにもっと斑鳩の里などをめぐって、
しっかりと万葉の世界を勉強しておくべきだった。
記憶に残っているのは葉の落ちた村の家の柿の木に
たくさんの赤く熟した実が成っていたことだけである。
