ビアズリー

ビアズリー展を観たのは
冷たい雨が降る夜だった。
黒々としたおどろおどろしい東京は
オーブリーにぴったりだった。

オスカー・ワイルドの『サロメ』の
挿絵に驚愕したのは高校生の時。
魔界のような戯曲もさることながら、
ビアズリーの黒と白の線画は恐ろしかった。

本物の『サロメ』の絵があった。
斬首された予言者ヨナカーンの首に
恍惚の表情のサロメがキスをする、
《お前の口にくちづけしたよ》。

銀の皿の上にヨナカーンの首が乗り、
サロメが彼の髪を持っている
《踊り子の褒美》もあった。
血の滴るおぞましいシーン。

加えて初期の《ジークフリート第2幕》、
トーマス・マロリーの《アーサー王の死》の
《アーサー王は、唸る怪獣に出会う》。
大胆で繊細、緻密で精巧な絵に感嘆。

テオフィル・ゴーティエ『モーパン嬢』、
卑猥な絵『リューシストラテー』、
『髪盗み』『ヴォルポーネ』など晩年の挿絵。
溜め息と驚嘆、猥雑と洗練の秀作揃い。

昼間でもカーテンを閉め、
蝋燭の灯りだけで絵を画いた天才は
幼少から病んだ肺結核により、
25歳の若さで死んでしまった。