遠野凪子と「系図」

あるハーピストから武満徹さんが作曲した
「ファミリートゥリー 」のことを知った。
どのようなな曲だろうと思ったら、
谷川俊太郎さんの詩を朗読するオーケストラ曲。
ニューヨークフィルが創立150周年を記念して
武満さんに委嘱し1995年に初演された。

和名は「系図―若い人たちのための音楽詩ー」。
谷川さんの「はだか」という詩集から6編を
武満さんが選び出して曲を生みだしたのだ。
日本の初演も1995年で岩城宏之さんが指揮して
NHK交響楽団が演奏、朗読は遠野凪子さんだった。
そう、先日亡くなった遠野なぎこさんである。

遠野さんは当時15歳で白いワンピースを着て、
舞台に上がり美しい可憐な声で詩を朗読した*。
原作の主人公は少年だが武満作品では少女の物語。
「むかしむかし」「おじいちゃん」「おばあちゃん」
「おとうさん」「おかあさん」、そして「とおく」。
遠野さんの朗読の素晴らしさは大きな感動を呼ぶ。

「むかしむかし わたしがいた」で始まる物語は、
最後の「とおく」でこう語り終える。
「でもわたしはきっと うみよりももっととおくへいける」
アコーディオンの哀しい音とともに詠われる。
遠野さんのこの朗読での成功はその後の
華々しい女優人生が決定されるかのようであり、さらに
彼女が海の向こうへと旅立つことを暗示しているかのようだ。

*遠野凪子さんの