坂の上の図書館 #42 同じ音楽
ヴァイオリンの最初の一音が響いた瞬間、会場の空気が変わった。
静けさが落ちる。
誰も動かない。
誰も話さない。
ただ音楽だけが進んでいく。
もんげーじいちゃんは目を閉じていた。
夏休みに図書館へ通っていた少年は、身を乗り出してステージを見つめている。
やがて演奏は勢いを増していった。
ヴァイオリンの音が視聴覚室を駆け抜ける。
それを追いかけるように、他の楽器が重なる。
5人の音が一つになり、会場いっぱいに広がっていった。
おばあさんは笑顔を浮かべながら、隣に座る孫の手をそっと握っていた。
私は音楽に詳しくない。
だが、一つだけ分かることがあった。
会場にいる誰もが、同じ音楽を聴いていた。
最後の音が消える。
ほんの一瞬、静寂が訪れた。
そして、
大きな拍手が会場を包んだ。
ステージを見る。
メンバーたちは顔を見合わせ、ほっとしたように笑っていた。
