中国が覇権国になろうとするなら、願わくばその前に民主化してほしい!
中国の発展と人民の幸福とのギャップ
中国は国名に“人民共和国”と入っている。
人民の為の国と言いたいのだろう。
でも、そういう国に限って独裁色の強い国だったりする。
例えば、朝鮮民主主義人民共和国のように。
国家が中央集権体制を活かし、世界のトレンドに対して選択と集中で資源を投入していけば、確かに発展はするのだろう。
ちょっと前は、2015年頃に中国が崩壊すると盛んに言われていたが、まったくのガセネタだった。
いや、発展するのはいい。
しかし、発展=幸福ではないので、人民がそれでどう思うかは又別の問題になる。
そもそも、そこに住む国民は幸せなのだろうか?
Ipsosの幸福感アンケート(2023年)では、中国人の91%が「あなたは幸せですか?」という質問に対して「幸福」と答えている。
Pew Research Center の2023年調査では、中国人の約80%が「国は正しい方向に進んでいる」と回答している。
しかし一方で、世界幸福度報告書(World Happiness Report2025)では、中国の順位は世界140カ国中第68位となっている。(因みに、ロシアは66位、台湾は27位、韓国は58位で、日本は55位となっている。)
若者失業率は2023年夏に 21%を超え、2025年の大卒就職率は50%以下、SNS上では年間数千万件規模の投稿が検閲されていると推計されている。
専門家の間では、高齢者介護・医療保険などの社会保障問題、現役世代の高額住宅ローン、子どもの教育負担、安心感の欠如など、中国社会の現状から見ると幸福度がそれほど高くないはずだという指摘もある。
都市部と農村部でも、その捉え方に大きな差があるだろう。
調査環境によっては本音を言いにくい可能性も指摘されていることを踏まえると、9割の人が幸福という調査結果は額面通りに受け取れない。
むしろ、こういう結果が出てくること自体が、自由を制限されていることの証明にもなっているように思える。
例えば、ウクライナとの戦争で疲弊しているロシアの大統領ウラジーミル・プーチン の支持率は、約 65〜67%程度(2026年前後)となっているが、言論統制・監視の存在、本音を言いにくい環境等の影響で、ロシアの支持率はそのまま「本音」とは限らないと言われている。
体制維持が優先される構造
考えてもみれば、中国の国民は民主主義というものをしっかり体験したことがない。
生まれた時から、ほぼ共産主義国家で育ち、愛国教育を受け、選挙で自分たちの代表を選んだこともない。
だから、「国というのはこんなものだろう」という感じで、真の自由なんて別に望んでいないのかもしれない。
でも、中世とは異なり、周囲に民主主義国家があるので、自国のTOPの批判をマスコミも国民も出来る姿を見て、自由というものがどういうことなのかを知る機会が結構あったりする。
みんな薄々気付いてはいるのだが、それを公の場で発言することは出来ない。
人民の為の国と謳っていても、その人民が本音を隠して生きていかなくてはならないとしたら、それは人民の為でも何でもない。
体制とか当局といったものがあれば、それを守る為に統制が入るのは歴史の常なので、人民の為といいながら、体制の維持が優先されるようになるのは避けられない。天安門事件がそれを物語っているし、民主化を求めた08憲章の起草者の一人、劉暁波は投獄されている。
国家が発展するのはいいが、問題は、そういう体制の維持を目的化した国家が歴史上どうなってきたかということだ。
人間というのは、公平公正で自由競争の中での貧困なら自分が悪いと思えるが、抑圧された中で不公平非公正の状態なら不平不満が溜まっていくことになる。
体制側は、反体制の個人・団体を弾圧しようとするし、国内に不満が溜まれば国外に敵を作ってその矛先をかわそうとする。
そうなれば、国民感情は愛国的になり、場合によっては戦争も有り得る。
地域安全保障における中国民主化の重要性
民主主義国家なら、反対派を弾圧しても、そんなことをしたら選挙で負けて権力の座から転げ落ちることになるのでまったく意味がない。
実際、民主主義国家同士は戦争しにくいという指摘もある。
なので、中国の民主化は地域の安全保障にとって重要な意味がある。
というか、民主化した中国なら発展を続けて覇権国になっても異論はない。
このままの体制で国が発展して軍事大国化していくことに懸念があるのだ。
膨張した専制主義国家が軍事力を持つとどういう道を歩んできたかは、歴史をみれば明らかだ。
同列には扱えないが例えば、ソ連のアフガン侵攻(1979年)、ナチス・ドイツのポーランド侵攻(1939年)、イラクのクウェート侵攻(1990年)、ロシアのウクライナ侵攻(2022年)等がある。
かつて、アメリカとソ連が2強で並び立ち冷戦が繰り広げられたが、ソ連にゴルバチョフという人物が出てきて冷戦が終結した。それは経済という側面からみれば、共産主義の敗北という形で幕を下ろした。
現在、アメリカと中国がG2で並び立ち、新冷戦の様相を呈している。当時と違うのは、単純な資本主義と共産主義といったイデオロギーの対立ではないということだ。
主な軸は、米国を中心とする民主主義陣営と、中国・ロシアなど権威主義体制の陣営とに分かれているが、必ずしも対立関係とは限らない。
それでも、中国がこのまま発展していって軍事力も増強していったら不測の事態が起こらないという保証はない。
2026年5月14日の米中首脳会談で、習近平国家主席は「米中両国が“トゥキディデスの罠”を乗り越え、大国関係の新たな範式を切り開けるか。グローバルな挑戦に手を携えて対処し、世界により多くの安定性を注入できるか。両国人民の福祉と人類の前途・運命に着眼し、両国関係の美しい未来を共同で切り開けるか。これらは歴史の問いであり、世界の問いであり、人民の問いでもあり、また大国の指導者が共同で書き上げる必要のある時代の答案でもある。」と発言している。
トゥキディデスの罠は、新興国が台頭して、既存の大国の地位を脅かすとき、恐怖や疑心暗鬼が高まり、戦争に至りやすくなるという国際政治の概念をさす。
又、一方で「台湾問題は米中関係において最も重要な問題である。これを適切に処理できれば、両国関係は全体として安定を保つことができる。処理を誤れば、両国は衝突、さらには対立に至り、米中関係全体を極めて危険な境地へ押しやることになる。」として異例の強い警告をしている。
つまり、「これからさらに中国は台頭していくことになるが、戦争は望んでいない。しかし、台湾問題で介入すれば、譲歩せず戦うことになるから対応を間違えるな。」と脅しているのだ。
それが言えるようになったということが、力関係の変化を物語っている。
中国といえども、グローバル市場の一員として商売が出来ているから発展が可能なのであって、世界からソッポを向かれれば立ち行かなくなることは分かっているので今は自重しているが、「そんなの関係ねえ」か「時が来た」となった時が恐い。
習近平の現在の年齢は72歳(1953年6月15日生まれ)なので、あと10年はやれるだろうが、いずれ後継者に譲らなくてはならなくなる。
普通に考えたら、今の路線を継承する人物が継ぐことになるのだろうが、それでは世界は枕を高くして眠れない。
私は、その段階で中国版ゴルバチョフが出てきて欲しいと願っている。
ただそうなるには、中国が行き詰っていることが前提とはなるが…。
どちらにしても、人民を口にするなら少なくともゴルバチョフがやった“グラスノスチ”はやるべきだろう。
グラスノスチは、ロシア語で「公開」「情報公開」「公開性」といった意味を持ち、政治や行政の情報をできるだけ公開し、言論の自由をある程度認めるというものだ。
もちろん、これによってソ連の崩壊が早まったことを考えると、中国はやらないだろうが、検閲しないと崩壊するということは、どれだけ秘密にしていて、自由にしゃべられたら困ることがあって、如何に、独裁国家の体制というものが自由を抑圧しないと成り立たないものであるか、人民から乖離しているかということが分かる。
自由にさせたら体制を維持出来ないので、不満分子を監視し場合によっては力づくで押さえつけるしかない。それゆえ、中国では国防費と同程度かそれ以上の治安維持費がかかる。
これが民主国家の場合、一部の国家機密を除いて全て公開で且つ、自由に発言でき、国のTOPを批判しまくれるのに(忖度はあるが)、政権は普通に運営できているし、警察や公安はあっても、武装警察や、ネット検閲まではいらないので、治安維持の費用はそれほどかからない。
自由に発言できなくて統制された社会というのは、人間本来の姿ではなく無理が生じるので永続できないことが多く、特に個人主義の発達した西欧文化圏の東欧においては、共産国家が次々と瓦解していった。
その点、アジアは伝統的に集団主義なので、ある程度統制社会を受け入れる素地がありそうだが、中国はアジア的な集団主義というよりも、社会学でいう「差序格局(身内と他者を厳格に区別し、同心円状に信頼度が下がる構造)」、つまり、強力な家族・血縁主義(一族至上主義)と呼べるものなので、統制社会を受け入れる素地あるとはいえない。
なので、東欧同様に中国が瓦解していってもいいように思えるが、そうはなっていない。
中国の民衆は、そもそも支配者と関係ないところで生きてきたから、統制社会を受け入れている訳ではないのだろう。
ただ無関心ゆえに、結果的に統制社会を継続させることになっているのかもしれない。
社会主義を志向して集団でやっていくといっても、一族単位でまとまっていて、そこから一歩出れば、人を(自国の紙幣さえも)迂闊に信用できない世界が広がっているのが中国の伝統社会なので、そもそも、理想志向の社会主義は中国大陸には向いていなかったのではないか。
個人よりも集団の利益を優先させようとしても、構成している個人は、自分と一族の利益のことばかり考えているのだから折り合えるはずがない。
で結局、うまくいかなくて改革開放で資本主義を取り入れざるを得なくなった。
社会主義をやらない若しくは出来ないのなら、共産党が一党独裁しなければならない必然性はなくなってきた。
でも統治は続いている。
それを中国人民はどう思っているのか?
経済が順調ならそれでいいの?
中国共産党と中国人民の間で、なにか密約でもあるのか?
例えば、「取り敢えず、金を儲けさせてやる。その代わり、政治向きのことには口を出すな。」とか。
もしそうなら、中国共産党一党独裁の正統性を担保するものは「経済発展」ということになる。だからこそ、その動向を注視している。
しかし、台湾問題は、中国共産党の存在の正統性に関わる最上位に位置しているので、独立とかいうことになったら経済損失を度外視して阻止するだろう。
それを中国人民はどう考えているのか?
中国では共産党が国家よりも上位に位置していて、国家は共産党の指導を仰ぐ立場となっている。国家とは国民に他ならないので、国民は共産党の指導の下、自分たちの行く末を委ねなければならないのだ。
自分たちが選んだ訳でもない者に上から指導されるってそれで我慢できるの?
自分たちの想いと違っても唯々諾々と従い続けるの?
アメリカの後退と中国の台頭
自分が幸福になる為に頑張って仕事して、その副産物として国の経済も成長していくというのであれば自然な発展なので違和感は無いが、独裁国家が主導して人為的に経済を驚異的な速さで発展させ、同時に軍事力も拡大しようとするのは脅威でしかないし、自分たちが住む国の隣に、拡大膨張する独裁国家が存在するということほど不気味なものはない。
今はアメリカの方が経済・軍事で圧倒しているが、中国の猛追でこの先どうなるかは分からない。
でも、その拡大を可能にしているのは、中国に進出してその工場でものを作り、それを買っている先進国であり新興国であり途上国なのだ。
中国がアメリカを抜く前に、世界が団結して脱中国をやらないと、中国が覇権国になってしまうか、少なくともG2としてアジアは中国に飲み込まれることになるかもしれない。
安いからといって中国製を買っていると、高くつく可能性があるのだ。
そうなってしまったら中国のやりたい放題になってしまう。つまり、アメリカが手を出せなくなってしまう。
覇権国がアメリカだと、なんだかんだ言っても、独裁国家の核保有とか暴走を止めようとしたりして世界の秩序を守ろうとするが、中国が覇権国になればそんなことに関心はなく、ひたすら自分たちの権益を確保しようとして立ち回るだろうから、独裁国家がはびこり世界が混沌としてくる可能性がある。
文字通り、力こそ正義となり力でねじ伏せ、核の脅しも効かないことが予想される。だって、自分の国に打ち込まれて何人死のうが関係ないのだから。(毛沢東談であり習近平は毛沢東を評価している)
逆に言うとそれは、核の脅しが出来るということでもある。
こんな国に国民の命優先の民主国家が勝てるのか?
中国が民主国家ならどこかの時点でブレーキがかかるが、独裁国家なのでそれは期待できない。
中国人民に期待すること
とにかく、もう専制国家の時代ではない。「人間は生まれながらにして自由な存在だ」という原理原則からいえば、体制の維持の為に監視され統制される社会というのは、人間本来の欲求からして永続的なシステムではないという結論が、ソ連の崩壊をもってすでに出ているのだから。
中国のことわざで、皇帝がいても、遠く離れた庶民の日常生活には何の力も及ばない——権力者は遠い存在で、自分たちの生活は結局自分たちでどうにかするしかない、という意味の「天高皇帝遠」(てんたかくこうていとおし)というのがある。
中国の人民はそういう気持ちなのかもしれないが、国家の全権を一部の共産党指導部に委ねて我関せずを決め込むのは無責任だ。その動向如何によって、アジアの人々の生命の安全が脅かされるのだから、少なくとも中国人民はその連帯責任を負っていると言えるのではないだろうか。
厳しい言い方かもしれないが、いじめっ子と傍観者は同罪という見方もあるのだ。
大日本帝国の暴走を助長し傍観した者も、まったくの無罪とはいえないのだ。
もちろん、武力を持たない市民にどうしろというのかという意見はあるだろう。しかし、考えてもみてほしい。
中国の人口約14億人(2024年時点)に対して、中国共産党の党員数は1億271,000人(2024年末)で人口の約7%に過ぎないのだ。
規模からいったら「お前たちが出ていけ」と言える立場なのだ。
非暴力であっても戦い方はあるし(ガンジーやキング牧師等)、10億人がNOを示せば人民解放軍だってどうすることも出来ない。
現在の中国は、AI、顔認証、信用スコア、SNS監視により、「組織的な連帯」が芽生える前に摘み取るシステム(超限戦的な国内統治)を完成させているといわれるので、まとまって行動すること自体が難しいのは分かるが、その前にその意志が無ければ行動も何もない。
意志があれば、道は開ける。
台湾の存在を亡命政府と捉えれば、現在、共産党に中国大陸を乗っ取られているという見方も出来るのだ。
だからこそ、習近平が躍起になっているのだが…。
とにかく、人民にその意志がなく儲かればいいということなら、同罪と言われても仕方がないだろう。
権威主義国家と軍事力が合わさった時に何が起こってきたかを「知らなかった」は通用しない。
最後に
中国共産党が、中国人民と人類にとって幸福をもたらす存在ならいいが、そうじゃないなら、何とかしなくてはならない。
できればアメリカが元気なうちに。
というのも、自分の国のことは自分たちで何とかするというのが基本にはなるのだが(民族自決)、権威主義国家というのはそう簡単にはいかない。
そう、自分たちの権力を失う=報復に遭う=命が危ないということになるので、その抵抗は命懸けになる。
つまり、軍が動く。
その時に、それを抑えることが出来る力を持った存在が必要になる。
それが出来るのは、実質アメリカだけだからだ。
もちろん、アメリカが動いても中国人民が動かなければどうにもならない。イランの状況を見ても、空爆して独裁政権の指導者を排除しても国民の民主化の動きが大きなうねりにならなかったので、指導者が交代しただけになってしまった。
自分と一族の利益のことばかり考えていて、人類の幸福なんか知ったこっちゃないという中国人に、それを期待するのは無茶というのは分かっているが、外部勢力だけではどうにもならないのも事実なので、人類の為には期待するしかない。
期待薄なのは分かっている。それができるなら、80年代後半から90年代にかけて東欧諸国やソ連が崩壊して次々に民主化していった時に、中国も民主化しているはずだ。
それは分かっているのだが、それでも諦めきれないのは、ここが、人類の存続の分かれ目になるのではないかと思うからだ。
というのも、中国が民主化したら後は何とかなる国ばかりなので。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
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