「流される」ことは恥ではない― 経営に宿るしなやかな美学―
曽野綾子さんの『流される美学』に、こんな一節がある。
「大体において運命に流され、
ただほんの少しだけ、常に流れに棹さして、
自分の好みを通す―くらいの生き方がいい。」
この言葉に、私は静かにうなずいた。
私たちは経営の中で、「すべてを自分の意志で決めている」と思いがちだ。
だが実際は、時流、世の中の空気、社員の気持ち、顧客の動き…
あらゆる“流れ”の中に身を置いている。
抗うこともできる。
けれど、常に力を入れっぱなしでは、心も体も持たない。
だから私は思う。
「流される」ことは、経営者としての弱さではない。
それは、環境を受け入れ、人を尊重しながらも、
ほんの少しだけ、自分の“好み=信念”を棹として差し込む技なのだと。
全部を変えようとしなくていい。
全部に抗おうとしなくていい。
けれど、自分だけは見失わない。
このわずかな棹の角度が、5年後、10年後に、
思いがけない場所へ会社を運んでくれる。
流される。けれど、舵は手放さない。
その“しなやかな経営”に、私はこれからも美学を見出していきたい。
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