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ジャンボーグ9の「9」とは?


はじめに

ジャンボーグ9(以下、9)とは、1973年1月から放送が開始された円谷プロ制作の特撮テレビ番組「ジャンボーグA」に登場する2人目の主役ヒーローである。

「ジャンボーグA(以下、J-A)」のあらすじについてはこちらに詳しいので載せておく。

9はJ-Aの第27話より登場する。第27話のあらすじは以下のようになっている。

地球征服を企むグロース星人・マッドゴーネが送り込んだスーパーロボット怪獣・ジャンキラーに敗れたJ-A。正義を愛し、命の重みを知る若者、主人公立花ナオキは愛車ジャンカーZでジャンキラーへ特攻。その行動を見た地球の兄弟星、エメラルド星人がZに命を与えたことにより、誕生したのが9だ。※1

ロボット作品における初の「2号ロボ」にして「乗り換え」イベントを盛り込んだキャラとしても名高い9だが、一つ素朴な疑問が浮き上がる。

ジャンボーグ9はなぜ「9」なのか?


勇士のナンバー

9のテーマソング、「戦え!ジャンボーグ9」(当時円谷プロ企画文芸部室長、満田かずほ氏が清瀬かずほ名義で作詞)には以下のようなフレーズが存在する。

ナイン ナイン ジャンボーグ9 宇宙の勇士の ナンバーさ

※2

「9」とは勇士のナンバーと謳われているのだ。

そして、「J-A」は円谷プロ創立10周年記念の番組でもあることから「それまでに制作された宇宙出身のヒーローの数では?」という説もあげられる。
試しに数えてみる。

  1. ウルトラマン

  2. ウルトラセブン

  3. 帰ってきたウルトラマン

  4. ウルトラマンA

  5. ウルトラマンタロウ

  6. 快獣ブースカ

  7. ミラーマン

  8. レッドファイター

  9. グリーンファイター

  10. オレンジファイター

  11. J-A

…定義は人によっても異なるだろうが、差し引きを考えても、ゆうに「9人目」というカウントからは外れてしまっている。

一方で、J-Aにおけるキャラクターデザイナー(スタッフクレジットでは怪獣デザイン)の米谷佳晃氏は「まんだらけ33号」のインタビューにおいて「J-Aから9へ番号が飛んでしまったため、後からジャンボーグ2号から8号を考えて、プロデューサーに企画書を提出した。」という意味の証言をしている。そして氏は「ジャンキラーはジャンボーグ2号から8号のうちの改造のイメージ」とも証言をしている。

しかし、こちらの説には9登場までの企画経緯を考えると、矛盾が生じるのだ。

エースとクイーン


昭和48年、ジャンボーグAの製作が20話を過ぎた頃(放送ではなくて製作)、3クール決定に際し、ジャンボーグA 2号機の案を出したのは若槻文三氏。6月の時点で、大沢哲三氏がジャンボーグ9とすでに記載されたデザイン画を書き上げていること、田口氏が脚本で、すでにジャンボーグ9の呼称を使っていることから、ネーミング決定は非常に早かった事が解る。
また、前項であげた「戦え!」は9初登場回の放送日、7月18日に挿入歌として使用されており、逆算すると6月末には収録されている事になる(ちなみに、レコード発売は8月1日)。※3

一方で、9のネーミング経緯については一切記述がないのである。
9には企画書も存在するが(朝日ソノラマ刊・「円谷プロ特撮大全」に記載あり)、こちらにも命名経緯については特に記されていない。また、ジャンキラーと9は同話内に登場し、スーツの造形も開米プロにて並行して行われている。

少なくとも2号〜8号の裏設定があった上での9というのは米谷氏による後付けという確率が高いだろう。

では、9とは何の9なのか?

私は「ジャンボーグQ(Queen)」のアナグラムなのではないか?と考えている

Q→キュー→9→ナイン

…というわけである

あまりにも単純かつこじつけがすぎると思われるかもしれないが、以下に示す根拠を見ていただきたい。

JAKQ


J-Aには敵怪獣もエースに対するが如く「キング」と名のつくものが多い。※4

トランプで数えるならば、残るは「J」と「Q」。9がQならJは?となるが、こちらはグロース星人の打倒J-Aの切り札・ジャンキラーがそうであろう。

名前だけでなく、トランプのジョーカーのモデル、宮廷道化師の帽子もまるでジャンキラーのツノのようである。

さらにジャンキラーは、第43話にて後続機「ジャンキラーJr.」として再登場する。
単に「二世」を意味するJr.だからではなく、切り札たる「J」であることとのダブルミーニングとも取れる。

また、J-Aでは9の他に、地球パトロール隊PATの武装強化が第4クール突入前の第38話にて行われている。
この回でPATの新たな航空戦力として投入されたのが、宇宙空間を飛行できる小型万能攻撃機「ハンターQ」だ。

こちらも、デザインは9と同じく大澤哲三氏が手がけている。「ジャンボーグQ」と大澤氏が名付ける予定が、伝達ミスがあったかナンバーとなったものを、こちらで新たに反映させたとは取れないだろうか。

エースとキングの激戦が繰り広げられるドラマの強化としてジョーカーとクイーンの登場。裏モチーフとしてトランプは十分考えられる。

クエスチョン対エース


そもそもなぜ「A」に対応するものが「Q」ではならなければいけなかったのか。それは円谷プロの作った最初の作品まで遡ることとなる。

Aに対してのQはJ-Aよりも前に存在するのだ。

J-Aとは円谷プロ創立10周年記念作品である。
そして、円谷プロが産んだ第一号作品は言わずと知れた「ウルトラQ」。

こちらの「Q」については放送局であるTBSの編成部に所属していた岩崎嘉一が考案したもの。視聴者に「これは一体何だ?」と思わせる高難易度のクエスチョン、そして高度の特殊技術を駆使した特撮テレビ映画という二重の意味が込められている。それを表すように、怪獣たちを歌ったテーマソング「大怪獣の歌」の締めは

怪獣 怪獣 大怪獣 
響けビルの谷間に 叫べ夜のハイウェイ 
キュー キュー キュー ウルトラQ

※5

となっている。アンバラスゾーンに投げかけられるクエスチョンの一つが、大怪獣の猛威だと歌っているのだ。

そしてウルトラQの主役3人を歌った「ウルトラマーチ」はゴメス、ペギラの猛威に対し、万丈目、一平、由利子の出動のセリフののち、

大地をけって きょうも行く 我等がエース ウルトラエース

※6

と歌詞が続く。クエスチョンである怪獣に立ち向かう人間たちヒーローを「エース」と歌っているのだ。※7

2つの主役に対して「Q」と「A」の冠をつけるのは、前例が存在するのである。

2つの命

では、その「Q」になぜ「女王」の意味である「Queen」がつけられたのであろうか。

こちらにも前例が存在する。

1972年放送の「ウルトラマンA(以下、エース)」はJ-Aと同じく円谷プロ制作の特撮テレビ番組である。
こちらの作品において、9登場回を執筆した田口氏は脚本を担当しただけでなく企画の段階から参加しており、氏の担当回はJ-Aでもリメイクされている。
立花ナオキという血気盛んな若者が周りとの衝突を経て、信頼を結んでいくというストーリーも、エースで多く見られた要素である。

田口氏だけではない。市川氏の手がけた第一話「輝け!ウルトラ五兄弟」での北斗星司はエース降臨に至る「命の重みを知る行動」を行なっているのだ。

タンクローリーで超獣ベロクロンに特攻しようとする北斗星司
こちらは立花ナオキ。俺の命と交換だーっ!


またエースが諸事情で頓挫してしまった要素の一つである「ツーピース型のスーツ」も9は受け継いでいるのである。※8


ツーピーススーツのエース


9。ツーピースであることがわかる。

そして、エース最大の特徴といえば男女合体による変身である。
北斗と南のウルトラタッチによる、ユニセックスのヒーロー。
そして、正義を愛し、自由を守ろうとする北斗と南の心が一つになった時、その姿は現れるのだ。
北斗と南の関係については共に命を預け、生きるも死ぬも一緒と誓った関係であることは明白であるが(変身アイテムが指輪であるウルトラリングなのも含めて)、第1章最終回では以下のような言葉が語られる。

南夕子「牽牛と織姫は、恋人同士なの?私たちは、一体なんなのかしら…」

※9


その別れゆく定めを表すかごとく、2人が別れなければならなくなった第28話において「地球と月の兄と妹」として表現がなされている。

南夕子「あたしはこの地球に、超獣ルナチクスを滅ぼすために、月星人を代表して派遣された。そしてそれはあたしたち月の兄である地球の命を救うことにもなったわ。」
北斗星司「しかし君が月の人なら…俺たち地球人の妹じゃないか!」

※10

エース作中では北斗と南の関係を、恋人にしたかったかのような描写が度々見られるが、諸事情で諦めざるを得なくなったため、2人の関係はあくまで「兄妹」として総括されることとなったのだった。

J-Aに話を戻す。
9の変形前であるジャンカーZはナオキの兄、信也の妻である茂子との協力(茂子が指輪を質に入れたお金を借りて一括で購入)によりナオキが手に入れている。
J-Aが兄という男性由来の力なのに対し、ジャンカーは義姉の女性由来の力を経て産まれて(ナオキの新たな命という意味でも)いる。そして、9への変形はJ-A同様信也の形見の腕時計の光る時にのみ実行される。

茂子はジャンキラーの襲撃により重傷を負うも、9によってジャンキラーが倒されたことで、まるで示し合わせのようにその命は蘇る。
回復した茂子が渡したこの折り鶴がヒントとなり、J-Aの復活にも繋がるのだが、そちらは今回は省くこととする。

三つ目の命

ナオキと茂子、姉弟の協力と信也の腕時計。

北斗と南が荒削りながらもまとめた「兄妹」という関係を9では「姉弟の命による誕生と復活」という形で表している。

そして特筆すべきは茂子と息子の和也が怪獣ミラーコングに捕らえられる第44話だ。
それまでJ-Aを父の生まれ変わりと信じていた和也は、ミラーコングから自分を助けた9を思い、最後に茂子とこう話す。

「ジャンボーグ9も、きっとパパの生まれ変わりだよ!」

「そうね…パパが守ってくれてるのよ」

茂子の協力によって得た命は、信也の生まれ変わりにまでなったのだ。
ある意味では9も男女融合のヒーローと言えよう。
J-Aが名前で受け継いだエースを、A-2号の9は諦めざるを得なかった要素で継承しているのである。

余談になるが、4代目の地球攻撃隊長デモンゴーネは男女両方の姿を持ったグロース星人である。

デモンゴーネの女性体

最終回におけるデモンゴーネの決戦の相手がJ-Aではなく9になったのは、同じく男女融合のヒーロー同士の激突をさせることで、無機物に宿る人間同士の愛で生まれた9と、地球征服という野望への執着により生まれた、醜悪なデモンゴーネという対比にも思えてくる。

デモンゴーネの男性体、最終回ではこの姿で9に斃された

おわりに

9のネーミングについては、企画書やデザイン画にも経緯や理由は書かれておらず、いずれにしても想像の域を出ない。
しかし、「単純明快なヒーローアクション」を謳いつつ、「愛を捧いだ物に宿る命」をドラマ性として描き続けたJ-Aが、何の考えもなしに「9」というネーミングをつけるとは私にはどうしても思えないのである。

未来に輝くエース・アンド・ナイン。
否、エースとクイーンを、これからも愛していきたい。


注釈

※1 ジャンボーグA 第27話「ジャンボーグA-2号誕生!その名はジャンボーグ9」脚本:田口成光 監督:黒田義之

※2 戦え!ジャンボーグ9 作詞:清瀬かずほ 作曲:菊池俊輔

※3 東宝レコードより発売された。型番はDT-1011

※4 画像の最上段左よりキングジャイグラス、ルバンガーキング、ストーンキング。二段目左よりドクロスキング、ガメレオンキング、キングビートル。三段目左よりキングデッドゴン、グラスキング、フライトキング。四段目左よりデスコングキング、オネストキング、キングジンジャー、テロキング。

※5 大怪獣の歌 作詞:東京一 作曲:宮内國郎

※6 ウルトラマーチ 作詞:東京一 作曲:宮内國郎

※7 ウルトラQは怪獣が主役で、ウルトラマンのようなヒーローはいないと言われがちだが、ウルトラエースにして初代ウルトラヒーローの万城目ら人類という立派なヒーローが存在する。

※8 エースのツーピーススーツは第1、2話のみで使用。股部分が外れるトラブルの多発により、第3話以降は往来のウエットスーツ型となった。

※9 ウルトラマンA 第14話「銀河に散った5つの星」脚本:市川森一 監督:吉野安雄

※10 ウルトラマンA 第28話「さようなら夕子よ 月の妹よ」 脚本:石堂淑朗 監督:山際永三

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