第26話 阿曽のイーロン・マスクは、くっそバカなやつだった
冬。
地元の友だちが、意味のわからんことをやり始めた。
廃校になった小学校のグラウンド。
そこにある木、全部ライトアップするって言い出した。
いや、意味わからんやん。
ケヤキの大木もある。
高さもある。
それを高所作業車に乗って、たった一人でやりきったらしい。
しかも照明器具に60万円。
普通の感覚やと、ちょっとおかしい。
世の中にはいろんな“バカ話”がある。
飲み屋で一晩で何十万使ったとか、
身の丈に合わん高級車買ったとか。
でもそれって、消費で終わる話やと思う。
こいつのは違った。
まず発想がバグってる。
「学校のグラウンド全部ライトアップしよ」なんて
普通は思いつかん。
仮に思いついたとしても、やらん。
というか、できやん。
でもこいつはやった。
しかも一人で。
たぶん、ほんのわずかやと思う。
この小さなまちの、ほんの一部の人たち。
でも確実に、誰かの心を少しだけ豊かにしてる。
実際に、うちの母親もそうやった。
パーキンソン病で歩くのも大変やのに、
そのライトアップを見に小学校のグラウンドまで行った。
「綺麗やったなぁ」って、嬉しそうに話してた。
デイサービスでもその話をして、
職員さんに「見に行こ」って言って、
3人連れて行ったらしい。
ほんの小さな出来事かもしれやん。
でも確実に、誰かの行動を変えてる。
それって、むちゃくちゃすごいことやと思った。
阿曽のイーロン・マスクやな、って本気で思った。
昔、どこかで聞いた言葉がある。
「バカではダメだが、バカになるのは難しい」
賢いって何なんやろ。
失敗しないことか。
無難にまとめることか。
はみ出さんように生きることか。
でもそれやと、
こういう景色は生まれやんのやろなと思う。
自分は、ちょっと思った。
ああいう“くっそバカなやつ”の仲間になりたいなって。
ちなみにやけど、
「くっそバカ」は自分の中で最大級の褒め言葉です。
