大紀町から何かを生み出したい。その続き。
以前、「大紀町から何かを生み出したい」という記事を書きました。
きっかけは、村田里穂さんとの出会いでした。
インドネシアの森を守る活動をしている里穂さんの話を聞いて、「助ける・助けられる」ではなく、地域を越えてお互いのものや力を生かし、それが循環していくという考え方を知りました。
そこで思ったんです。
大紀町も、いろんな地域に支えられている。
だったら、受け取るだけじゃなくて、
大紀町からも何かを生み出して、外へ出していけないだろうか。
前回の記事は、そんなところで終わりました。
そして今回、その最初の一つが形になりました。
ヒノキのカフェテーブルです。
「何を作るか」から考えない
最初は、大紀町の特産品のようなものを作れないかと考えていました。
野菜なのか。
食べ物なのか。
木なのか。
でも考えているうちに、少し違う気がしてきました。
無理に「大紀町の名物」を作らなくてもいいんじゃないか。
大紀町にあるもの。
大紀町にいる人。
そして、自分にできること。
それらをつないだ結果として何かが生まれれば、それでいいんじゃないか。
そんなふうに考えるようになりました。
木のことなら、今井さんに聞こう
作ろうと思ったのは、幅60cm、奥行60cmほどの小さなカフェテーブル。
一人でコーヒーを飲んだり、
ノートパソコンを広げたり、
二人で軽い食事をしたり。
ASO BASEでも使えるようなテーブルです。
まず必要なのは天板。
僕の中では最初から決めていました。
「木のことなら、今井さんに聞こう」
今井製材所の今井さんです。
「60cmくらいの幅の板ってありますか?」
と相談すると、
「そんな幅の板はなかなかないし、あっても高いよ」
とのこと。
そりゃそうですよね(笑)
60cm幅の一枚板となれば、それだけ大きな木が必要になります。
もちろん、今回作りたいのは、何十万円もするような高級家具ではありません。
僕が作りたかったのは、
ちゃんと木の良さを感じられて、それでも現実的に手の届く価格のテーブル。
自分の家でコーヒーを飲むためだったり、
小さなお店で使ってもらったり。
「これならちょっと欲しいな」と思ってもらえるようなものです。
だから、いい材料を使いながらも、できるだけ価格は抑えたい。
そんなことを考えていたところで、今井さんから一言。
「30cmの板を2枚つないだらええやん」
なるほど。
60cmの板がないなら、30cmを2枚つなげばいい。
言われてみれば当たり前なんですが、自分一人だったら「60cmの板を探す」というところから抜け出せなかったかもしれません。
そして今井さんに、ヒノキの板を用意してもらいました。
ここから、このテーブル作りが始まりました。
2枚の板を、どうやってつなぐ?
次の問題は、30cmの板を2枚、どうやってきれいにつなぐか。
そこでマキタのジョイントカッターを購入しました。
約27,000円。
正直、かなり迷いました。
そんなに頻繁に使う工具でもありません。
「このテーブルを作るために27,000円の工具買うんか……」
と思いました(笑)
でも、やってみたかった。
そしてもう一つ大事なのが、板と板を接着するボンドです。
ここで頼ったのが、NISHIKI BASEの越仮さん。
越仮さんは、カホンという木の箱のような形をした打楽器を製作していて、そのカホンを「コシカリカホン」として展開されています。
木を使って楽器を作っている人なら、接着のことも知っているはず。
「板をつなぐなら、どんなボンドがいい?」
そう聞いて、越仮さんに教えてもらったボンドを使うことにしました。
今ならネットで検索すれば、いろんな情報が出てきます。
AIに聞いたって答えてくれます。
でも、実際に木を使ってものを作っている人が身近にいるなら、
その人に聞いた方が面白い。
そして何より、そこからまた人とのつながりが生まれます。
最後の仕上げも、人から人へ
板をつないで、削って、磨いて。
これが思っていた以上に時間がかかりました。
特に磨く作業。
「もうええんちゃう?」
と思ってからが長い(笑)
でも、触ったときの感触が少しずつ変わっていく。
せっかくここまでやったんだから、最後までちゃんと仕上げたい。
そして最後の仕上げに使ったのが、蜜蝋です。
この蜜蝋は、eikai baseの陽子さんからいただいたもの。
陽子さんは、自分で蜜蝋を作っています。
その蜜蝋を、今回このテーブルの仕上げに使わせてもらいました。
木のことは、今井さん。
接着のことは、越仮さん。
そして最後の仕上げには、陽子さんが作った蜜蝋。
それぞれの人の知恵や手仕事が少しずつ加わって、
僕が切って、
つないで、
磨いて、
脚を取り付ける。
そうやって、
一台のカフェテーブルが完成しました。
一人で作った。でも、一人では作っていない。
完成したテーブルを見ながら、改めて思いました。
実際に作業したのは僕です。
でも、これは僕一人で作ったものではない。
今井さんのアイデアがなければ、そもそも始まっていなかったかもしれない。
越仮さんに教えてもらったことも入っている。
陽子さんが作った蜜蝋も使わせてもらった。
そう考えると、この一台のテーブルの中に、
大紀町で出会った人たちの知恵や手仕事が、少しずつ入っている。
ここで、前に考えていたこととつながりました。
「大紀町から何かを生み出したい」
僕は最初、「何を作ればいいんだろう?」と考えていました。
でも、もしかすると順番が逆だったのかもしれません。
大紀町には、いろんなことを知っている人がいる。
いろんな技術を持った人がいる。
面白いことをやっている人がいる。
その人たちとつながって、
知恵を借りて、
自分のできることを足していく。
その結果として「何か」が生まれる。
今回のカフェテーブルは、その最初の一つだったのかもしれません。
大紀町だけで全部やる必要なんてない
そして、もう一つ気づいたことがあります。
「大紀町から何かを生み出す」といっても、
材料から何から、すべて大紀町産にする必要なんてない。
大紀町だけですべてを完結させる必要もない。
僕たちだって、普段はいろんな地域から物を買い、いろんな人たちに支えてもらっています。
だったら、いろんなところから受け取っていい。
その代わり、
受け取ったものに、自分たちの知恵や手を加えて、また外へ返していく。
それでいいんじゃないかと思うようになりました。
里穂さんとの出会いから考え始めた「循環」ということ。
規模はまったく違います。
でも今回、小さなカフェテーブルを一台作ったことで、その意味が少しだけ自分の中で形になった気がします。
これは「完成」ではなく、実験
もちろん、このテーブルを一台作ったからといって、大紀町がどうにかなるわけではありません(笑)
そもそも売れるかどうかも分かりません。
だからInstagramにも載せて、
「こんなテーブルだったら欲しいと思いますか?」
「いくらなら買いますか?」
「どんな使い方をしたいですか?」
そんなことを聞いてみました。
材料費や製作時間、販売にかかる費用などを考えて、今のところ販売価格は24,800円くらいを考えています。
何十万円もする高級家具を作りたいわけではない。
でも、ただ安いものを作りたいわけでもない。
木の良さを感じてもらえて、
一つずつちゃんと手をかけて、
それでも「これなら手が届く」と思ってもらえるものにしたい。
実際に売れるのか。
この価格で欲しいと思ってくれる人がいるのか。
まだ分かりません。
売れなかったら、それも一つの答え。
だったらまた考えればいい。
でも、
「大紀町から何かを生み出したい」
と考えていただけだったところから、
実際に一つのものが生まれた。
それは僕にとって、結構大きな一歩でした。
そして今回分かったのは、
大紀町から何かを生み出すために必要なのは、特別な名産品だけじゃないということ。
木を知っている人がいる。
木を使ってものを作る人がいる。
自然のものを暮らしに取り入れている人がいる。
そして、それぞれの知恵をつなぐことができる。
大紀町には「人」がいる。
だったら、まだまだ何かできる気がします。
まずは一台の、小さなカフェテーブルから。
「大紀町から何かを生み出す」実験は、まだ始まったばかりです。
