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第12話|阿曽のお寺でJAZZライブをやった日


当日は雨だった。
朝からずっと空はどんよりしていて、
正直、気持ちも少し重たかった。
「ほんまに人、来るんやろか」
そんなことを考えながら、
ひとりで現場の準備をしていた。
今回はライブハウスじゃない。
お寺でのJAZZライブ。
何が起こるか分からない。
機材トラブルも、電気系統も、
正直プロじゃない自分には分からないことだらけだった。
だから、万が一に備えて
電気屋の友達には声をかけておいた。
「何かあったらすぐ動いてほしい」
そんなお願いをして。
演者さんたちが到着して、
すぐにセッティングが始まった。

三重県大紀町 龍祥寺

すると、さっそくトラブル。
エレキピアノの椅子がない。
慌てて、自分が使っている電子ピアノの椅子を用意した。
さらに、ピアノスタンドがぐらつく。
これも自分のものを提供。
アンプの角度も微妙で、
電気屋の友達に急遽対応してもらった。
…と思ったら、最後は演者さんが自分で調整して解決。
やっぱりプロはすごい。
リハーサルが始まった。
正直、一番不安だったのは音だった。
お寺という空間で、
どれだけ音がまとまるのか。
でも――
音が鳴った瞬間、驚いた。
「めっちゃええやん…」
むしろ、すごく心地いい音だった。
その瞬間、少しだけ安心した。
リハが終わったあと、
演者さんにはご厚意で借りたVILLA ASOで食事をしてもらった。
食事の準備や買い出しは、
近所の人たちにお願いした。
これがもう、完璧すぎた。
飲み物も、段取りも、全部整っていた。
本当にありがたかった。
どうしても食べてもらいたかったのが、伊勢マグロのトロ。
あの味は、きっと伝わったと思う。
今回のメンバーは、愛知を中心に活動している方が多い。
でもその中には、
日本を代表するドラマーのひとり、
江藤良人さんもいた。
実際に「ルパン三世」の音楽を叩いている、本物の人。

ドラム 江藤良人


正直、阿曽でどれだけの人が知っているかは分からない。
でも、そんな人が来てくれた。
それもこれも、リーダーである
百本マイさんの人脈のすごさだと思う。

2025 11 9 当日のポスター


開場。
雨の中、それでも少しずつ人が集まってきた。
結果、来てくれたのは60人。
本当は80人でトントンの計算だったから、
正直に言うと赤字だった。
だって、あの演者さんたちを5人も呼んで、
格式あるお寺でやって、3000円。
そりゃ赤字にもなる(笑)
ライブが始まった。
お寺の空間に、JAZZが響く。
静かな場所に、音が広がっていく。
お客さんの表情が、少しずつ変わっていく。
終わったあと、
いろんな人が声をかけてくれた。
「JAZZは分からんけど、なんか良かったわ」
ほとんどの人が、そんなことを言ってくれた。
それで十分やと思った。
地元のテレビ局も来ていた。
インタビューも受けた。
アソベースの名前も出して話した。
めちゃくちゃ緊張した。
後日、放送されたのを見て、さらに恥ずかしくなった。
お寺の方からは、
「またやってくれ」
と言ってもらえた。
演者さんたちも、
「すごくいいライブだった」
と喜んでくれた。
そして何より――
一番喜んでいたのは、自分だった。
なんか少しだけ、
この田舎に恩返しできた気がした。
そのあと、ふと思った。
「これって、一回やって終わりなんかな」
どれだけいいライブでも、
これだけでは、ただの一過性のイベントで終わってしまう。
地域の活性化って、もっと継続的なものじゃないのか。
そんなことを、ぼんやり考えるようになった。
この日をきっかけに、
まちづくりとか、地域活性化とか、
少しずつ勉強するようになった。
そういえば――
演者さんたちと食事をしているとき、
すぐ近くを列車が走った。
ディーゼルで動く、キハ25という車両らしい。
田舎では、いつもの風景。
でもその瞬間、
みんな、めちゃくちゃはしゃいでいた。
「なにこれ!めっちゃいいやん!」
そんな声があがる。

VILLA ASO  列車の通過に喜ぶ演者さん達


自分たちにとっては当たり前の景色が、
違う場所から来た人には、こんなにも価値がある。
その光景を見て、
なんとなく思った。
「この町、まだまだいけるな」

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