自転車の生涯と維持管理について
最近は「生涯補償」をうたうメーカーが増えてきました。メリダやジャイアントでも行っています。
「生涯補償(ライフタイムワランティ)」という言葉の響きから、ユーザー側は「自分が生きている限りずっと」と誤解しがちですが、実際は「製品が安全に機能する設計上の寿命(製品ライフサイクル)」を指しているのが業界のリアルですよね。
自転車における生涯補償の「生涯」とは、あなたが生きている間ずっとの意味ではなく、製品の設計上想定された生涯(ライフタイム)のことです。 メリダでは約10年に設定しています。海外も含めた例ではそれを越えたからダメではなく、状況含めて柔軟に判断されます。他社がどのくらいの年数に設定しているかわかりませんが、あくまで耐用年数を具体化するほうが誠実な印象を受けます。広告としてのウケが良いのはやはり「永久」という甘い響きです。現場で実務に携わる立場からすると、こうした言葉のイメージ先行で作られた「永久保証」の誤解を解き、ユーザーに現実的なメンテナンスや製品寿命を理解してもらうのは、なかなか骨の折れる仕事ですので、今回はその説明をすることにしました。
これを「永久保証」と言い換える方がいらっしゃいますが、それはおそらくあるメーカーが「Forever」というワードを用いて「"We stand behind our frames—forever."」と自社のアピールを行っているからだと思います。しかし、それについての説明文では「"This means we offer a lifetime warranty to the original owner."」(これは最初の所有者に対して、材料または製造上の構造欠陥に対する生涯保証(lifetime warranty)を提供することを意味します)となっているので、結局は中身は同じようです。当該メーカー得意のエモーショナルで強い言葉を使った広告戦略なのだと思います。リーガルにも強い某社のことですから、マーケティング上の攻めに対する守りも万全なのだと思います。
まとめると、
「生涯補償」の裏側にある業界の共通認識は
「製品の寿命」という概念: メリダの「約10年」という設定は、非常に現実的で良心的な基準だと感じます。素材の疲労や経年劣化を考慮すれば、スポーツサイクルとして安全に走れる設計上の「生涯」はそのあたりが妥当なラインになるでしょう。
ファーストオーナー限定の原則: ほぼすべてのメーカーが「最初の購入者(オリジナルオーナー)」のみを対象としており、中古で手に入れた時点で補償対象外となるのも共通ルールです。
杓子定規ではない個別判断:保証全般にも言えますが、10年を過ぎたからといって一律で門前払いするわけではなく、破損状況(明らかな製造上の瑕疵か、単なる経年劣化や過失か)を総合的に判断して、メーカー側が柔軟に対応する(または有償の割引交換プログラムを提案する)ケースは海外ブランドでもよく見られます。(まあここは、ショップと代理店とのコミュニケーションや関係性によって、実際にエンドユーザーが受けるメリットも変わってくるということは言えますから、代理店と密な関係の店で買うほうが良いと思います。)
「生涯補償」は「永久に無償で新品に交換してもらえる魔法のチケット」ではないという正しい認識は、ユーザーが愛車を適切にメンテナンスし、安全な引き際(寿命)を見極めるためにも非常に重要な視点だと感じます。
部品にも寿命がある
フレームに寿命があるように、部品の寿命はそれより短くなるのは自明で。購入してずっと使おうとすると壊れますから、購入時から壊れることを前提にし、安全性を考えた引き際(寿命)を考慮し、高価なものを無理して入手するのではなく、交換運用できるコスト想定しての選択は大切だと思います。
最近はコスパコスパと言いますし、メリダもシマノもそうしたメリットの多いメーカーだと認識されています。コスパが良いことにより、さらに”永久保証”があることもあり、1つ上の製品を手に入れられるのはたしかに魅力的に見えますが、何かしらのアクシデントによって製品は突然壊れてしまうかも知れません。そうした場合に対応しやすいという意味で、”コストを抑えられる”ということもメーカー側の意図として大切ですし、実際に本場であるヨーロッパでメリダが支持されていく背景でにも関連しています。彼らは身の丈以上の製品に対する必要性を低く見積もる人々ですし、あくまで道具として使っていくスタイルが一般的にみえます。そんなところへメリダはハマったというところでしょうか。
コンポーネント戦争においても、シマノが優位になった理由は交換運用しやすいコストの製品によるものです。具体的には105やそれ以下の製品群のことです。それにより完成車採用を席巻しました。ボリュームゾーンの完成車を他のコンポメーカーでは作れません。スペックや機能で勝てませんし、価格も上がってしまいます。コンポーネントメーカーの趨勢は上位グレードだけで決まるわけではない側面もありますし、むしろそちらの方が大切だったりします。
スポーツ自転車、ことロードバイクに限って言えばなお、「高級」「高額」「憧れ」などをセールスポイントにするお店や代理店が多いわけですが、それらの甘い蜜に毒されすぎず、自らの目的と環境や現実にしっかりとコミットするというスタイルのお店で買うというのはもう1つの選択だと思います。
最近は「スポーツ自転車から離れる人々」がたびたび話題になりますが、ぼくの周りでも、周囲を見回しても、ロードだけではなく、いろいろな自転車を楽しむ人々のほうが、長く自転車を趣味として楽しむのに対して、有限なコストをすべて”ロードバイク”に投じてしまう人ほど、突然止めていってしまうというのはよく見る様子です。
安全に運用しよう
最近SNSで増えたようにみえるのは、「〇〇壊れた」を詳しく追ってみると、万単位の距離で使っていたりするケースです。 リムブレーキ時代のホイール寿命は2−3万キロ。今は強くなったとは言え、リムが減らないとは言え、ぼくはホイール全体の寿命は同じくらいだと考えています。
一般的なホビーライダーは年間3−5千キロ走るなら、2−3万キロには4−10年必要です。
ここからシマノのコンポ刷新サイクル(約4−5年)や現実的な寿命設計も見えてくる気がします。 日常の維持管理と、消耗した箇所毎の部品交換は別だと考えています。 使い続ければどこかが壊れてしまう。それらに対処するためのオーバーホールを行う必要もありそうです。
数年にわたって使用しても「特に問題ない」と感じるのは、いくつか理由があるはずです。まず、2−3年であれば、先ほどの寿命の中にあるため、あまり壊れない。ロードバイクの場合、使用環境が緩い場合が多いので、余計に壊れにくい。しかし、それ以上を積み重ねになりますと、どこかしらが壊れてしまうでしょう。ぼくらが「1−2年でオーバーホールを依頼してほしい」「3年以上放っておくと大変な場合がある」というのはそのためです。SNS以前から同じことは起き、同じことを言い続けていましたが、SNS以降はそうした例が増え、またSNSによって誤解や誤った自信を増す方が増えたように思います。4−5年放っておくと故障箇所が増え、大変なことになるケースが多いと思います。
やはり、ただしい目的は「なにか起きてから対処する」のではなく、「なにか起きる前に対処」だと思います。なぜなら、その方がラクだからです。金銭的コストも時間的コストも低く済みますし、体験やイベントをロスしてしまう機会も起きにくくなると思います。またそれは、自らや周囲の人の安全にも関わってきますので、自転車を使用する場合には、自分の使い方においての製品それぞれの寿命とそれらへのドライな対処というものが不可欠だと思います。
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