つまり私は上納されかけてたんだな
ハタチそこそこの頃かな?
男性が来る飲み会の時だけ招集かけられたり、こっちも招集かけたりするだけのグループLINEがあった。
だから友だちではない。
当時は友だちだと思ってたけどね。
あくまで男性がくる飲み会の時だけしか会わない。それはただの数合わせに過ぎない、と、今では思う。
そのグループLINEで、
「渋谷のタワマンでホムパやるんだけど行かない?」
と、チャラい誘いがきた。
「行くー!」
ふたつ返事でOKした。
若い時の私は愚かだったのだ。
いや、それは今もなんだけど。
わたしって人に合わせられなくてぇ…人の輪になじめなくてぇ…とか言ってたのに、なんかごめん。
心中では内省ばっかの陰キャのくせして、仮の姿のパペットには普通の若者らしい人生をちゃんと歩んでもらってた。
渋谷のタワマンはそりゃもう立派なものだった。
普通の誰かが住んでる家なのに、玄関は受付みたいな人がいて、
「ここに名前と連絡先書いて」
と多分自分よりもちょっと年上のホストくずれみたいな男に言われた。
えっ、なんで?と思ったけど、そこは可愛いハタチそこそこの女の子。
言われるがままに、自分の本名と連絡先を書いた。
まじで意味分かんないよね。
で、渋谷のタワマンとやらは、一体いくら出せばこんな一等地に、こんな広い部屋に住めるんだろうってくらい広くて、壁みたいな窓ガラスから見える渋谷は、ここにいる自分は特別な人間なんだと錯覚させた。
「この人がこの家に住んでる人でーす」
と紹介されたのは年齢不詳の胡散臭いおじさんだった。
なんか受付後はそのおじさんに挨拶しなきゃいけないみたいで、「本気です。(私の名前ね笑)こんな広い部屋に住んでるなんてすごいですねー!」みたいなちょっとした会話をしたと思う。
見た目は胡散臭かったけど返事は普通の人らしい答えが返ってきた。
「来てくれてありがとねー!楽しんでってねー!」
みたいな。
そこには、何人かの正体不明のおじさんに、舎弟みたいなホストくずれ男たちと、読者モデルやってまーす、とかタレント事務所に所属してまーすみたいな女がたくさんいた。
で、正直。
えっ、そんなんでその職業名乗れるんだ?って女ばっかりだった。
普通の女の子がダイエット頑張ってヘアメイクを完璧にすれば、全然なれるよなってレベル。
私は一般人だから、「かわいい〜!そんなお仕事してるんですかぁ?!すごーい!」みたいなポジションをとった。
心ん中では
え?そんなんでもなれんだ?じゃああたしでもなれんじゃんって鼻で笑ってたんだけどね。
受付とは違うホストくずれ第二号に
「え?事務所所属してないの?いけるって!」
みたいなことを言われた。
私は言った。
「え〜!うれしい〜!そんなこと言ってくれるのぉ?!♡」
正直全然嬉しくない。
てめえは馬鹿か?
タレント事務所はいってる奴が正義なのかよ。
なんで事務所にはいってる奴が勝ちで、入ってないあたしが劣ってるみたいになってんだよ。
「若くて」「可愛い」のに、現実を受け入れて努力と実力で勝ち取った普通の仕事をしてる一般人の方がどう見たってかっこいいだろ。
だけど、この空間は
芸能仕事をしてる奴が勝ち。
他は負け。みたいな法律があって、その法律にみんなが従ってた。
広い部屋の一角。
そこは「芸能人部屋」らしく、読者モデルとタレントの卵の中でも上流のやつしか入っちゃいけない部屋が用意されてた。
で、中が見えたんだけど、別に普通の一般人じゃんって感じだった。
こいつら、自分は特別だとか思ってんの?馬鹿じゃねーのと思いつつも、
「あたしだってあの部屋に行きたい」と思ってる自分もいる。
そう。だから私は最初に言った通り愚かなの。
散々心の中では罵ってるくせして、
その空間の上流階級に仲間入りしたいと思ってる。
おっぱい触らせてくれたら入れてあげるよ、って言われたら、いいよ!って言って入ってたかもね。
「タイムラインは俺の名刺代わりだから〜」って連呼する正体不明のホストくずれと「え〜!すごーい!」といいながら会話をした。
もう、心の中では最高に大爆笑だった。
何回タイムラインは俺の名刺代わりって言うんだよ!もうわかったって!好きだな、その表現!!
と、彼の表情や言葉を「面白いもの」として、インプットするのに必死だった。
頼んでもいないのに、
「こんなことやって〜こん時、まじでやばくて〜」とかタイムラインを見せながら説明してくる。
それに私はなんて答えればいい?
すごーい!が、欲しいんでしょ?だったら、それを言うしかない。
ifの世界として、
「タイムラインは名刺代わりって何回言うんですか?笑」って言ってたらどうなってただろう。
あぁ。後悔。面白い展開になりそうだから言ってみればよかった。
そんなこんなで、私は「芸能部屋」へ行くこともなく、酔っ払って、当時好きだったイケメン消防士への想いをホストくずれとかに話してお開きになった。
あの「芸能部屋」を残して。
タイトルでは
「つまり私は上納されかけたんだな」と言ったけど、それは釣り的なもので。
全然上納されなかった。
でも、あの時のあの空間は、今で言う「上納」される権利を持った奴が勝ちみたいな空気なだった。
残れる女の子たちを「選ばれた子」だと感じて悔しいとすら思ってた。
私の存在って、もしかしたらその「芸能人部屋」にいる女の子たちが特別意識を感じさせやすくる捨駒要員、引き立て役だったのかもしれない。
あの日、あの部屋で、あのあと何があったんだろう。
これは松ちゃんやら、フジテレビ問題がなかったら全く思いださなかったこと。
でも、正直…。
私は「面白いこと」が大好きなので、殺される以外は何でも経験したいっていうのが、根底にうっすらとある。
もし、上納メンバーにされていても、それに乗っかって、へ〜こんなこともあるんだ〜おもしろっ!て思ってたと思う。
昨今のニュースを見ていて、ハタチ過ぎたら自己責任だろ、そんなに騒ぐことかよ、と思いつつ。
もし、自分にハタチの娘がいてそんな場に行って都合良く扱われたりしたら。
それはぶち切れる。
都合いいよなぁ。人って。
