京都レトロな銭湯めぐり~銭湯ライターおすすめ3湯
町なかに約80軒の銭湯が残る京都。その9割が地下水を沸かし、サウナはほぼ追加料金なし。戦前に建てられた趣ある銭湯建築にも魅了されます。今回は、京都の銭湯ライター林 宏樹さんの案内で3湯へ。銭湯文化を大切に受け継ぐ人がいい湯を沸かしています。(ひととき2025年4月号より)

二大名所のタイル絵は必見
長者湯[上京区]

古くからの長屋など低層の落ち着いた町並みが残る西陣エリアで、地下水を廃材で沸かすスタイルを貫いているのが長者湯だ。
唐破風が印象的な建物は1936(昭和11)年築。創業はさらに古く、大正時代にまでさかのぼる。
こぢんまりとした銭湯だが、脱衣場に金閣と清水寺のタイル絵や近江八景を透かし彫りにした欄間があり、風呂屋情緒は京都でも指折りだ。


プラスチック籠が一般的となった今も、長者湯では昔ながらの柳行李の脱衣籠を使い続ける。籠を丸ごとロッカーに入れるのは、全国でもほぼ京都でのみ見られる習慣。京都独特の柳行李文化を体験できる点でも、長者湯は特別な銭湯なのだ。
この長者湯に新しくサウナが設置されたのが2023(令和5)年の10月。きっかけは、3代目にあたる間嶋正明さん、好美さんご夫妻の長男・健太さんが跡継ぎを決断したこと。「継いでくれと言われたことはないですけど、いつかはと思っていました。生まれ育った地域と繋がれる仕事というのが、すごく嬉しい」と健太さん。改装後は若いお客さんが増え、歴史ある建物もなんだか嬉しそうだ。





長者湯
☎075-441-1223
京都市上京区上長者町通松屋町西入ル須浜東町450
営業時間:15時10分~24時
定休日:火曜
乾式サウナ、水風呂、ジェット、薬湯(泡風呂)あり
アートな遊び心が彩るお風呂
京都 玉の湯[中京区]
京都市役所の目と鼻の先で1894(明治27)年から湯を沸かし続けている京都 玉の湯。このような町のど真ん中でも、京都ではきれいな地下水が湧くことに驚かされる。

周辺には宿泊施設も多く観光客にとって京都の銭湯を体験するには打って付けの立地。外国人観光客が入浴に来ると、翻訳アプリ入りのタブレットで対応するご主人の姿も、ここでは見慣れた光景だ。
切り盛りするのは、3人の子育て真っ最中の西出英男さん、晴美さんご夫妻。子連れでも気軽に利用してほしいと、絵本やお風呂で遊べるおもちゃ、当てくじまで揃えていて、週末には親子連れも多く見掛ける。
男湯の名物であるリアルな顔つきの羊の吐水口や、「玉」の字が入った伝統紋のタイルは、陶芸家の横顔を持つ晴美さんの手製。晴美さんは結婚当初、番台に座ることになるとは思ってもみなかったそうだが、「日々いろんなお客さんと会話できて楽しい」と明るい接客で出迎える。



一方の英男さんは、2019(令和元)年に先代である父親を亡くし、銭湯に対する気持ちが少し変わったそう。「130年続いた銭湯を僕の代でなくしたくないし、この先も残していきたい。名義は自分のものになりましたが、今は一時的に預かっているという気持ちです」。湯が沸き続けることに価値がある。


京都 玉の湯
☎075-231-2985
京都市中京区押小路通御幸町西入ル亀屋町401
営業時間:15時~24時 *土曜14時~25時
定休日:日曜
乾式サウナ、水風呂、ジェット、泡風呂、電気風呂あり
銭湯に新風を吹き込み10周年
サウナの梅湯[下京区]

高瀬川のほとりに建ち、春には川沿いの桜が目を楽しませてくれるサウナの梅湯。ロビーに入ると、手作り感のある棚にバラエティーに富んだグッズが並び、浴室には手書きの壁新聞も。そんなインディーズ感も手伝って、お客さんは圧倒的に若者が多い。ボディソープを浴室に設置するなど、銭湯初心者でも利用しやすい心遣いもうれしい。


廃業寸前だったサウナの梅湯を2015(平成27)年に継いだのが、当時24歳でいち銭湯ファンだった湊 三次郎さん。今年5月5日で継業10周年を迎える。湊さんは「銭湯を日本から消さない」をモットーに銭湯の継業を専門とする「ゆとなみ社」を立ち上げ、この10年で11軒の銭湯を引き継いだ(うち1軒は独立)。その本店というべきサウナの梅湯は、今や「銭湯の聖地」に。レトロなお風呂にアヴァンギャルドな空気も漂うここは、日本だけでなく世界から大勢の人が目指して来る場所になった。

当初掲げた「若者を銭湯に」の目標は達成できたとしながらも、次の10年に向け「継げなかった銭湯も多々あります。培った信頼、実績、資金力を駆使して引き継ぎまくるのが、ゆとなみ社の使命」と湊さん。銭湯を取り巻く環境は厳しく、関連業者も減る中で、自力で浴場等の工事を行う体制も構築中とか。
銭湯は、身も心も日常から解放してくれる町の大切な場所。今も銭湯が点在する京都は、とても豊かな町だ。湯に浸かれる有り難さの裏に、その豊かさを支える人がいる。


サウナの梅湯
☎080-2523-0626
京都市下京区岩滝町175
営業時間:14時~26時 *土・日曜6時~26時
定休日:木曜
乾式サウナ、水風呂、ジェット、薬湯、電気風呂あり
京都府内の銭湯の入浴料
大人550円(2025年4月1日現在)
*京都の銭湯の詳細情報は京都府浴場組合のサイトを参照
https://1010.kyoto/
文=林 宏樹 写真=橋本正樹
林 宏樹(はやし ひろき)
フリーライター。1969年、京都市生まれ。京都の銭湯に東京のような富士山のペンキ絵はないのかという疑問から銭湯巡りをはじめ、京都の現存銭湯をすべて〝湯破〟。著書に『京都極楽銭湯案内』『京都極楽銭湯読本』(ともに淡交社)など。銭湯愛好家集団「おしどり浴場組合」に所属しZINE「銭湯生活」も発行する
出典=ひととき2025年4月号
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、ウェブマガジン「ほんのひととき」の運営のために大切に使わせていただきます。