【創作大賞2026応募作】ネット・ア・バレー
お気づきの方もいるだろうが、このエッセイはスポーツの「バレー」の話ではない。
「ネット」や「バレー」という単語は入っているが、そもそも英文としておかしいのである。
もちろん、ダンスの「バレエ」の話でもない。
では、何のエッセイなのか。
もう一度、タイトルを最初から読み直してほしい。
『ネット・ア・バレー』
→『ネットアバレー』
→『ネタバレ』
そう。これは、「ネタバレ」に関するエッセイである。
ダジャレのエッセイではない、ということを最初に言っておきたい。
なぜこんなタイトルになったのかは後述するとして……
「いきなりネタバレの話?」
ほとんどの読者の頭の中に、クエスチョンマークが浮かんでいるようなので、解説すると、
私は普段、面白かったり心を動かされたりした物語、特に小説を、noteを通じて紹介している。
素敵な物語に出会い、
「あー!面白かったー!!!」
と思って自分の中で浸りに浸って、脳内でしっかり噛み締めたあと、次に沸き起こってくるのは……
「この物語を誰かに推したい!!!」
この推し活全盛期。誰もが同じような布教活動をしているのではないか。
だが、誰かに物語を推すとき、その物語を100%の形で推すのはとても難しい。
なぜなら、高い壁を乗り越えていかなければならないからである。
ここで登場する高い壁とは、すなわち、
そう、「ネタバレ」だ。
ネタバレ。ネタがバレてしまうこと。
物語を楽しむ全ての方にとっての天敵である。
最近の世の中は、日に日に、ネタバレとのエンカウントを避けにくいものになってきている気がする。
それゆえに、1つの物語を100%の形で楽しむことが難しくなっていると考えられる。
そこで、普段私がどのような時にネタバレと遭遇するのかを考察していこうと思う。
ひとつ注意点として、私はネタバレを異様に嫌がる「ネタバレキャンセル界隈」の住人であるため、読者が普段気づきもしないようなネタバレに言及することもあるだろうが、そこはネタバレに対する視野が広がったと肯定的に捉えてほしい。
ようこそ。ネタバレキャンセル界隈へ。
■小説ネタバレ
冒頭でもお話した小説の場合。
小説には帯がついているが、あれは時に、ネタバレにまみれた凶器になりうる。
例えば、帯のコメントに、こんなかんじで書かれていたらどうだろう?
ラスト1ページで、すべての意味が変わる
この帯を見かけた瞬間、私の読書体験は、読む前から、ひとつ終わりを迎えることになる。
「いやいや、これ絶対どんでん返しあるやつじゃん!」
犯人が分かったとしても、
「いや〜どんでん返しあるからな〜」
好きな人と結ばれたとしても、
「いや〜どんでん……以下略」
常に変なバイアスがかかった状態で読んでしまうのである。
なんなら、目次も、各章のタイトルが見えてしまって変に頭を働かせてしまうので、ネタバレを回避するために、見ないようにしている。
■漫画ネタバレ
漫画になると、視覚から得られる情報が一気に多くなる。漫画に付いてる帯も、先程の小説と同様にネタバレ満載なので、読了後までスルー。
表紙は言わずもがな。読み終わるまでは薄目でチェックする程度。
気をつけたいのが裏表紙。意外と盲点だが、結構重要なネタバレの源泉になっている。
国民的漫画である『名探偵コナン』を例に挙げてみよう。
コナンの裏表紙には大きな鍵穴の中にキャラクターが描かれている。
そこに、いつもは見かけないキャラクターが描かれていたとしたら。
……もう、お分かりいただけたであろう。
それは、絶対重要なキャラクター、
つまり、ネタバレキャラクターである!
こんなところに描かれているのは、絶対この巻のメインキャラ!間違いない!!!
私はコナンを買う時は、表向きに平積みされた本を薄目ですくい取って、そのままレジまで持っていく。
レジでバーコードを読み込む時に、裏表紙が見えるので、注意する必要がある。
■検索ネタバレ
「今話題になってるあの作品、なんて名前だったっけ?」
「確かネット・ア・〇〇とかだったような……検索してみよう!」
「えーっと、ネット・ア・……」
ネット・ア・バレー
ネット・ア・バレー_犯人
ネット・ア・バレー_雨音とき
ネット・ア・バレー_雨音とき_死亡
うわあああああああーーーーー!!!!!
検索サジェストが有能になりすぎて、逆に無能乙!なパターンである。
上の例文では、他の作品のネタバレを防ぐため、私、雨音ときが犠牲になったのであった。
完。
生成AIが台頭してきたとはいえ、まだまだググるが主要な現代。一度は体験したことが、あるのではないか。
逆に、これから先、生成AIで調べるなら、こんなかんじのネタバレが考えられる。
【プロンプト】
現在話題になっている作品で、
「ネット・ア・〇〇」という名前の
タイトルを教えてください。
【AI回答】
おそらく『ネット・ア・バレー』という作品だと思われます。
なお、この作品では序盤で雨音ときが死亡する展開が話題になっています。
また犯人については……
うわああええあいいーーーーー!!!!!
生成AIってとっても饒舌。中身は教えたがりおじさんなのかってぐらいに、聞いてないことまでペラペラ喋る。
生成AIが、存在しない情報をあたかも事実のように自信満々に出力する現象を、ハルシネーション(幻覚)というが、そうだと願いたいぐらいペラペラ喋る。
しかし、このケースではネタバレを防ぐことは実は可能。プロンプト(指示文)をしっかり整えれば良い。
「タイトルのみ教えて」
「ネタバレなしで」
などの指示を付け加えるだけ。
ちゃんと指示すれば動いてくれる。
つまり、この場合、生成AIではなく私が悪いのである。「ペラペラ喋りやがって〜」なんて、他責思考は良くない。
ここまで、問題なくついてきているのだろうか。心配しなくても、ここからこのエッセイはさらに加速していくので、振り落とされないようにしっかりついてきてほしい。
■ドラマネタバレ
例えば、大好きな推しがドラマに出るとしよう。
まず間違いなく、そのドラマを観ると思う。
推しならSNSもフォローしているはず。
そして、親切な推しなら、SNSでドラマの内容を事細かに書いていたり、撮影風景の写真を乗せてくれていたりするだろう。
はい!アウト〜!
大変親切でありがたいことなのだが、ネタバレキャンセル界隈からすれば、絶望である。
推しが出演しているドラマを純粋に楽しみたい場合は、まずは推しのSNSのフォローを解除するところから始めてほしい。最後まで観終われば改めてフォローすれば良いので、何も問題はない。
ちなみに、SNSのフォローを解除しても、根本的には解決していない。
なぜなら、新しいドラマが始まる前から「番宣祭り」が開始されるからだ。
番宣祭りとは、新ドラマのメインの俳優等が、同じテレビ局の様々な番組に呼ばれて、その番組内で新ドラマの宣伝をすることで、朝の情報番組からバラエティ番組まで、至る所で同じ俳優を目撃する状態。この状態のことを私が勝手にそう呼んでいるのだ。
もし、
「何か最近、異常に堺雅人テレビ出てるよな〜」
と思ったら、とても大掛かりなドラマが始まると解釈してもらって構わない。
番宣祭りから逃れるためには、気になっているドラマが放送されている間は、同じテレビ局の番組を観なければよい。簡単である。
さすがに私も「テレビを観るな」とは言わない。ただ、気になっているドラマが全テレビ局で放送されている時は、必然的にドラマ放送時以外はテレビを観ない、ということになる。
■アニメネタバレ
やめて!ラーの翼神竜の特殊能力で、ギルフォード・ザ・ライトニングを焼き払われたら、闇のゲームでモンスターと繋がってる城之内の精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで城之内!
あんたが今ここで倒れたら、舞さんや遊戯との約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、マリクに勝てるんだから!
次回「城之内 死す」デュエルスタンバイ!
まずは、世界一有名な『遊☆戯☆王』の次回予告をお届けした。
「いや、お前もネタバレしてるやないかい!」
と思うだろうが、これに関しては、私よりも公式自身が盛大にネタバレしているので、セーフとさせていただきたい。
『遊☆戯☆王』は詳しくなくても、この次回予告を知っている方は多いのではないだろうか。ちなみに私もその一人である。
文字で読んでもこの見事なネタバレっぷり。もし観たことがない方は、ぜひ映像で観てほしい。
このように、いや、こんなに振り切っている事例は他にないかもしれないが、次回予告はネタバレの巣窟なのである。
そもそも、次回予告は物語の重要なシーンを抜粋していることがほとんどなので、ネタバレし放題であることは当然といえば当然。なので、これも視聴2周目に改めて観ることをお勧めしたい。
もう1つ。アニメにおける重要なネタバレポイントがある。それは……
オープニング映像、である。
異論は認める。というか、このエッセイ全体が異論だらけだと思う。それでも一旦耳を傾けてほしい。
まず、オープニングに出てくるキャラクターは、絶っっったい重要な奴ら!モブなんて欠片も出てこない。
一見、普通そうに見えるキャラクターでも、オープニングに登場=何か特別な力を持っていたり、裏切り者だったり。普通のキャラクターなんていないといっても過言ではない。
オープニングの中でも、サビ直前は特にヤバい。
サビ直前って、割とシリアスな描写になっていることが多い。私調べで。
それはつまり、
物語の核心に迫った重要なシーンということ!
なので、ネタバレ度高めのはず。観ない方が良い。
もっと言ったら、オープニングの曲の歌詞自体もちゃんと聴かない方が良い。
「え〜〜?歌詞まで突っかかってくるの〜〜?」
って思ったあなた。ちょっと考えてみてほしい。
歌のプロであるアーティストは、1つのアニメのために、あーでもない、こーでもないと歌詞を練りに練る。原作を読み込み、世界観を存分に表現しようとして推敲を重ねてできた歌詞……
ネタバレしていないわけがない!
解像度高く作っていればいるほど、
ネタバレしていないわけがない!!!
もう、基本的には歌詞なしのインストで、最終回だけ歌詞ありを放送してほしいと思っていた。
しかし、アニメのオープニングに関しては朗報がある。
それは、「オープニングカット機能」である。
これは、主に最近のストリーミングサービスにおける、オープニング映像になった際にスキップボタンを押せば、オープニングはカットして本編に進む機能である。
何となく、タイパの観点からこの機能が追加されたと考えられるが、意図せず私のようなネタバレキャンセル界隈の住人も同時に救ってくれた神機能なのだ。
あと、これはドラマにもアニメにも通じるネタバレがある。
それは……
演者ネタバレ!!!
ミステリードラマで、人の良さそうなキャラクターを小日向文世さんが演じていたら、小日向さんが真犯人であり、
何気ないモブのようなキャラクターの声優が大塚明夫なら、そいつが黒幕である。
くれぐれも注意してほしい。
■SNSネタバレ
最近はこのネタバレに尽きるといっても過言ではない。
小説を例に取ると、読書アカウントの方が、読み終わった本を紹介してくれる読了ポストは、楽しみではあるが戦いでもある。
noteはプラットフォームの性質上、タイトルをクリックしないと記事の中身は分からないし、「ネタバレ」のハッシュタグ(#ネタバレ)を投稿者がつけていれば、「ネタバレがあるかも」と事前にお知らせしてくれる。note運営さん、こういうところ、相変わらず優しい。スキ。
余談だが、このエッセイはネタバレの話を書くという、純粋な「#ネタバレ」のエッセイなので、まさかネタバレ自体の話をする奴がいるとは、note運営さんも予想していなかったと思っている。
注意しないといけないのはX。強敵である。今読んでいる小説や、気になっている小説のタイトル・表紙が見えたらすぐにスクロール。迅速にスクロール。話題作なんかは皆がポストしまくっているので、スクロールの着地点にもネタバレポストが存在するダブルトラップも。
とにかくSNSのアルゴリズムが優秀になりすぎて、自分の好きなものばかりタイムラインに流れてくる。この、ネタバレアルゴリズムに対抗するには苦肉の策だがSNS断ちをするしかない。私のアカウントが消えた際には、遂に作戦を実行したのだと認識してくれて構わない。
■知人ネタバレ
最も王道なものを最後に持ってきてしまった。以前はこのシチュエーションのみに気をつけておけば安心だった。
今でもよく起こることだが、話題のドラマの話なんかは特に注意が必要。リアルタイムで視聴をしていないと、録画勢や配信イッキ見勢は絶望を味わうことになるかもしれない。
最近のドラマだと、『リブート』がヤバかった。もちろんSNS上でも、色んな考察が飛び交ったり、主演の松山ケンイチさんや鈴木亮平さんがXで遊びまくったりしていたが、職場でも話題に上がることが多かった。
私もたまたま予定の関係で、1話をリアタイできない時があった。次の日、職場に行くと、案の定、
「昨日のリブートさぁー」
という声が聞こえてきたので、
「あー!あー!」
と会話をかき消しながら、一目散に逃げたことがあった。恥ずかしさよりもネタバレを避けることに必死だった。
もしそんな人を見かけていたら、おそらくそれは私だと思うので、今後ネタバレには十分気をつけてほしい。
日常にはこんなにネタバレが潜んでいる。ここに書かれていない種類のネタバレもある。多すぎる。
なぜ私がこんなにネタバレを恐れているかというと、冒頭にお話した通り、素敵な作品を誰かに推そうとする時に、なるべく先入観なく楽しんでほしいからである。
ここで問題が起きる。
例えばnoteで記事を書く場合、
普通に作品のリンクだけ貼っても、その魅力は伝わりづらい。
逆に、熱量高くたくさん語ってしまったら、ネタバレになったり、ミスリードしてしまったり……
八方塞がり。
どうしたら上手くいくのかを考えた結果、
じゃあ折衷案で、記事の前半に、約1%だけ内容について紹介して、後半にネタバレありの感想を書く、という結論に辿り着いた。
この構造なら、
その作品を未読の方でも、記事の前半部分で興味を持ってくれる可能性が広がり、
読了済の方でも、記事の後半部分で共感したり、もしかしたら創作者さん本人が読みに来てくれたりするかもしれない。
そうやって、好きな物語を推すことで、幸福の循環を促し、新たな素晴らしい物語が生まれる助力になれればという思いで、活動を続けていきたいと思う。
ちなみに、
このエッセイを作成するにあたって、もともと、
『1%のネタバレ』
というタイトルを考えていたが、ボツにした。
なぜなら、このタイトルだとエッセイの内容の核心になっており、1%どころか100%、つまりネタバレ100%になってしまうからである。
普通に考えたら、『1%のネタバレ』というタイトルが核心をついている、
と分かるのは、このエッセイの著者である私だけで、読者に分かるはずもないのだが、
ネタバレキャンセル界隈の住人である私にはスルーできず、レンタカーの語源のような、不思議なタイトルをつけてしまったことを、どうか許してほしい。
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