著…多田牧子、大谷章夫 撮影…佐治康生『組紐 ジグザグのマジック』
絹、木綿、麻といった素材を用いて、糸と糸を斜めに交差させて作り上げていく「組紐」。
これは、その魅力について解説してくれる本。
※注意
読者が組紐を作れるように手順を細かく教えてくれるタイプの本ではありません。
「作品集とその解説」といった感じの一冊です。
⭐️単行本版
コンパクトな大きさの本ですが、中身は充実しています。
わたしはこの本に載っている組紐の写真を眺め、また、解説文を読むことで、心が潤ってきました。
どの組紐も、実用的でありながら、色づかいや組み方が実に多種多様です。
中には、人の手で作られたものだけでなく、機械を使って作られたものもありますが、どれもそれぞれに微かな意匠が異なります。
まるで、全く同じ顔を持つ人がいないのと同じように、組紐も少しずつ違います。
だから、眺めていると、とてもホッとします。
組紐は、今の日本人の暮らしにはあまり馴染みがないはずなのに、どこか懐かしくてホッとします。
また、組紐は古来から日本人の暮らしに根付いてきたもの。
だから、日本人が持つ「心のDNA」のようなものに反応して、郷愁を掻き立ててくれるのかもしれません。
なお、この本の中には『日本は紐の文化』という題名の解説があり、そこにはこう書かれています。
日本では古来、「結ぶ」ということに精神的、神秘的、呪術的な意味があり、仏事、武具、装束などと深くかかわり発展してきた。
「結ぶ」…。
なんだか、この言葉を久しぶりに聞いたような気がします。
しかし、日本人にとって、「結ぶ」という言葉は、とてもしっくりくる言葉でもありますよね。
糸と糸を結ぶ。
そうやって新しい紐を作る。
出来上がった紐と、別の紐を結びつける。
そうやって、また新たな紐を作る…。
それはまるで、人と人の「ご縁」のようです。
縁と縁を結ぶ。
その縁と、また別の縁を結ぶ。
そうやって人と人が繋がる…。
きっとそうしたものが、日本人が長い間大切にしてきた「和」の精神に繋がるのだと思います。
また、こうやって糸と糸を結ぶのは、どこか「祈り」にも似た行為のようにも思えます。
たとえば、組紐は甲冑にも使われますよね。
それは単に、組紐を使った甲冑を身につけ、洒脱且つ勇ましい姿になることによって、自分だけでなく周りの武士の士気を高めるため…という理由だけではないのかもれません。
もしかしたら、そこには、誰かの祈りも組み込まれているのかもしれません。
たとえば、「戦場から無事に帰って来て欲しい」という祈り…。
…わたしはそんな風に想像しながらこの本を読み、組紐の写真を眺めていたら、大昔の日本を生き抜いた人たちが何かを祈る声が聴こえてくるような気がしました。
なんて美しい、和の世界。
〈こういう方におすすめ〉
日本の伝統工芸に関心がある方。
〈読書所要時間の目安〉
2時間くらい。
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