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洗練さとメディアの矜持を見せる〜Netflix「ザ・ニューヨーカー:創刊100周年を迎えて」

アメリカの雑誌の中でも、私がひときわ憧れたのが、「Spors Illustrated」「The New Yorker」。前者は、私の好きなスポーツの世界を、踏み込んだ記事と、美しい写真で表現した。後者は、まずは特徴的な表紙。洗練された絵、額装したい作品ばかりである。

数年前のソール・スタインバーグの個展では、彼が1976年3月29日号の表紙を飾った名作、「9番街からの世界の景色(View of the World from 9th Avenue)」が展示されていた。

記事については、1965年にトルーマン・カポーティの「冷血」が連載されたことが有名だが、私にとってのリアルタイムは、まだ欧米では無名だった村上春樹の短編が翻訳掲載されたことだった。

こうした雑誌はアメリカでは定期購読することが主流で、そうすることによって相当割安で入手できるとのことだった。私は、これをやってみたかったが、日本までの送料などを考慮すると、結構な値段になってしまう。それでも、2000年頃だったろうか、「The New Yorker」の定期購読を申し込んだことがある。毎週届く本誌掲載の記事をさほど読めたわけではないが、毎号の表紙、洗練された笑いのカートゥーンを楽しんだ。それも、一定期間でやめてしまった。

その「The New Yorker」、ハロルド・ロスにより創刊されたのが1925年、昨年で100周年を迎えた。記念号発売に向けて動くのは、著書「レーニンの墓」でピューリツァー賞も受賞している現編集長デビッド・レミニック(David Remnick)を中心とした編集部。彼らの姿と、過去の映像を絡めて、この偉大な雑誌の過去と今を描いたのが、Netflixのドキュメンタリー「ザ・ニューヨーカー:創刊100周年を迎えて」である。

私の中の「The New Yorker」のイメージは、“都会的“、“洗練“であるが、このドキュメンタリーを見ると、メディアとしての使命感も強く感じられる。

これを見るまで知らなかったのだが、広島・長崎に対する原爆攻撃についてアメリカで最初に報道したのは「The New Yorker」だった。もちろん、爆弾の威力についての報道はあったが、それによって被った被害の甚大さ、一般市民の悲惨な体験について取材・報道したのはこの雑誌だった。1946年8月31日号、表紙はセントラル・パークだろうか、夏の公演で楽しむ人々を描いた、いつもの通りの素敵な絵である。しかし、誌面のほとんどは“HIROSHIMA“と題された記事で埋められた。

私が気楽に楽しんでいたカートゥーンについても、大変な労力で掲載作が決められている。雑誌の顔となる表紙絵となると、推して知るべしだ。使われるフォント、スペリングなどなど、隅々まで「The New Yorker」のスタイルが徹底されている。

全編に流れるのは、「The New Yorker」に対する愛情、プライド、使命感。こうした雑誌だからこそ、ウェス・アンダーソン監督「フレンチ・ディスパッチ」のような映画が生まれるのだ。

デジタル化の流れには、本誌も対応している。購読のシステムをのぞいてみると、デジタルのみは年130ドル(1年目は52ドル)。でも紙版も欲しい。紙+デジタルは年260ドル(約41,000円)、試してみると日本からでも同額。つい、ポチッとしてしまった。

本誌はまだ届いていないが、デジタルが凄い。1925年発売の創刊号からすべて見ることができる。前日の“HIROSHIMA“ももちろん全文読める。

村上春樹が初めて掲載されたのはいつか。調べてみると、1990年9月10日号。「TVピープル」だった


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