小説: ペトリコールの共鳴 ㉞
第三十四話 ペトリコールの共鳴 ③
真っ青のシートに白い袋を敷き、白い袋に茶色の紙袋を切って広げた上へ、ハンバーガーやポテトがのっている。
リュックのポケットには、僕が家で使う給水器が取り付けられて“外食”がセッティングされた。
タツジュンはハンバーガーを包む紙を広げると、僕のおへその高さのハンバーガーを
「キンクマ、これにかぶりつけ。
後から4つに分けるから、まずはそのままの形で食べてみな」
タツジュンはティッシュペーパーでポテトの塩を拭い、3本ほどハンバーガーの隣へ置いてくれた。
「いただきます」
映画で聞いたことがあるセリフだ……。
僕も両手を合わせて
「いただきます」
思いきり口を開けてハンバーガーのパンを噛んだ。床に落ち硬くなった菓子パンと違って、柔らかくて甘さを濃くして深くした匂いが口いっぱいに広がった。
3年前と同じ海の景色。何も変わっちゃいない海。この間の年月は乱高下だった。
特にこの1年は、悲しみと苦痛が俺の幸せを破壊していった。
3年前、遥香の右手と俺の左手をきつく繋ぎ、
遥香がほしいと思った。
遥香と生涯ともに暮らしたい。
俺の指に絡む遥香の指へ力を入れ、
「結婚しよう」
海を眺める遥香の横顔が俺に向いた。
「えっ?ああ……。
タツジュン、末永くよろしくお願いします」
はにかむ遥香から「ありがとう」
こういうのって、照れちゃうね。
そっか私、タツジュンの奥さんになっていいんだ。
照れからか、遥香は多弁になってゆく。初めて出会った18歳のときと変わらない可愛さ。
遥香は繋いだ手を解き、俺の胸に甘えてきた。
「タツジュン、幸せになろうね」
遥香のような可愛い人が他にいるか?
かわいい、そして愛おしい永遠の人。
遥香の肩を抱き寄せ、
「遥香、見て。
あの海は俺ね。海は深いが海底がある。
あの空は遥香ね。空は青さがどこまでも続く。
空が青いと海も碧い。
空が曇ると海も燻む。
夜になると海も暗い。
朝になると海も明るい。
空と海は運命共同体だ。
俺は遥香を人生賭けて幸せにする、幸せにさせてほしい。
愛してる」
「タツジュン、ここは楽園だね」
二足歩行でぴょこぴょこ歩くキンクマが海を体験している。そして四つん這いの体勢に変わると砂浜を駆けり出した。転んでも駆ける。
今はキンクマも愛おしい。
愛や愛おしいってなんだろうな。
ずっと離したくないとも違う。
俺が何かつらいことに直面したとき、俺は最初に遥香へ電話した。それは遥香が俺の痛みや挫けそうなことを聞いてくれる人で、俺を見捨てることはないと信じていた。
俺は本当に遥香を愛しているから、心へ愛を密かに隠しているより、遥香に愛している気持ちや結婚したい意思を伝えるのが良いと思った。
キンクマへは、キンクマへは。
キンクマを大切に守りたい。これからはキンクマが心配せずに安心して暮らせるよう、俺が世話をしていきたい。
俺の愛は、遥香やキンクマを思いやり幸せにしたい。幸せな二人を見て俺が幸せを感じたい。
真心と人生の豊かさかと、今は思う。
キンクマが口にマヨネーズをつけたまま
「みんな、
こんなに美味しいものを食べているんだね」
