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hidemaro2005
ショート: つくしの春唄
春。かつてつくしが主役だった季節。
子供たちの「見て、つくし」という歓声が野原に響き、地面から顔を出す愛らしい姿は、春の象徴だった。
だが今、桜が空を染め、チューリップが風に揺れ、色とりどりの花々が春を奪うように咲き誇る。つくしは華やかな花影に埋もれ、ひっそりと息を潜める。
うさまろはかつての春を思い出し、野原の片隅で小さく芽吹くつくしを見つめる。
「つくしを誰も気づいてくれないね」
声にはどこか切なさが滲む。
桜の花びらが舞い散い、うさまろの心は寂しさで揺れた。そばにいたミイがそっと囁く。
「うさまろ、つくしは春の先駆けなんだよ。
花々が咲く前に静かに春を呼ぶの」
ミイの言葉へうさまろの目が輝きを取り戻す。
つくしは派手さはない。しかし冷たい土を押し上げ、春の第一歩を刻む小さな勇者。
桜の華やかさも、チューリップの鮮やかさも、つくしがいてこそ始まる物語。
「うん。つくしがいるから春が来るね」
うさまろの声が野原に響く。ミイも笑顔で頷く。
「次の春もつくしが待ってるよ」
変わりゆく四季。つくしは静かに存在する。
小さな命は、春の記憶としてうさまろとミイの心に深く刻まれる。
桜が散り、チューリップが萎れても、つくしはまた次の春に芽吹く。
春の始まりを告げる、永遠の使者として。

