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hidemaro2005
ショート: 帰らないと思う
「獣人十色と申しましょうか。わたくしはこの辺りでお暇します」
藤色の和紙には鉛筆書きされたメモが残され、冷蔵庫のマグネットに挟んであった。
母から家族に宛てた走り書きは誤字ではなく、精一杯の皮肉と受け取れ、母を探しに行こうとする妹を制止した。
「今、連れ戻しても帰らないと思う」
妹の薄い右肩を抱き、しっかり目を合わせる。
でも、と抵抗する妹へ
「華はどういう顔してお母さんに会うの?
何を言うの?どうせ『帰って来て』
それからどうしたいの?また同じ日々へ引き摺り込みたいの?私たちはお母さんへ頼りすぎて、お母さんのケアをしてこなかったじゃない」
廊下の奥から呻き声がし、何かを欲するかのように金属をカチカチ鳴らす音まで響いてくる。
放っておくと呻き声は更に大きくなり、絶叫へ変わった。
「おばあちゃんはお母さんの母親じゃないから、
本を正せば、お父さんの母親。お母さん、今まで辛抱したんだよ。分かってあげようよ」
頑として祖母を施設に入れようとしない父を恨めしく思った。
