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hidemaro2005
掌編: 尾道では、すーちゃん
夏休み、尾道のおばあちゃんの家に行く。
おばあちゃんや俊哉伯父さんとは頻繁に連絡を取っている。たぶん、タツジュンより僕の方が家族らしくなった。
そして、「すーちゃん」と呼ばれている。
ここでは、キンクマ以外に辰巳くんと呼ばれて、僕は『辰巳キンクマ』が本名じゃないかと錯覚していたが、
「翠星が本当の名前だった」書類以外で、自分の名前を呼ばれた記憶がほとんどない。
「すーちゃん、気を遣いんさんなよ。
おばあちゃんにお土産は要らんけん。元気な顔を見せてくれたらいいんよ」
時々、野菜や果物を送ってくれるのに手ぶらで尾道には行けない気がする。
タツジュンに相談すると、
「オカンがそう言うなら、いいんじゃない」と素っ気ない。
八月に入り、お盆が迫ってくると、
「おばあちゃんと俊哉伯父さんが喜びそうなものはなんだろう」
少し足を伸ばして池袋を回ったり、
「東京土産なら銀座がいいのかな」Googleマップを頼りに美味しい物探しをした。
AIにも訊いて、あちこち歩き回った。
気づけば、お土産はスーツケースに入りきらない量になっていた。
「狭い家に二人しかいないのに、一体誰がこんなに食べるんだよ。もういいから、宅急便で送っちまえよ」
タツジュンの呆れた顔から笑い声がした。
夜。お土産を詰めた段ボール箱を抱えて近所のコンビニへ行った。
うっかりして、送り状へ
「辰巳すーちゃん」と書いてしまった。

