真夏のひと色展と、指先の
若き日の、母が塗るネイルがとても綺麗で
元々、爪の形が整っている人だから
どんなネイルの色も映えた
小さなわたしは母のネイルに憧れ
油性マジックで、爪を黒く塗ると
母は肩を震わせながら笑いをこらえ
除光液で透明な爪に戻してくれた
母の大らかさは、誰にも敵わないと思っている
幼稚園が夏休みに入った、ある日
庭からわたしを呼ぶ声がする
声がする方へ、掃き出し窓から走って出ると
母はしゃがんで『ホウセンカ』の前にいた
ふんわりカールした長い髪
細い指先にホウセンカの花をのせる仕草が
今でも記憶にある
母はわたしの手を取り
片手でホウセンカの花を摘み、揉む
そして、捏ねた花びらをわたしの爪にのせ
ふぅ ふぅ、と息を吹きかける母
わたしの爪にのせた花びらを除けると
ちっちゃな爪は
ホウセンカのキナクリドンスカーレットが染色され
急にお姉さんになれた気がした
夏の1ページ、現代の方が暑く感じる

